イラクと引き分け、グループ首位をキープしたものの厳しい戦いが待つ日本代表 イラクと引き分け、グループ首位をキープしたものの厳しい戦いが待つ日本代表

6月13日にイランの首都テヘランで行なわれたワールドカップ・アジア最終予選、イラク対日本。気温が37度を記録する酷暑の中、1試合消化の多いサウジアラビア、オーストラリアと勝ち点で並び、得失点差でグループB首位に立つ日本は1-1のドローで終えた。

前半8分に本田圭佑が蹴ったコーナーキックを大迫勇也がバックヘッドで流し込んで先制、理想的な展開で試合を進める環境を整えることができた。にもかかわらず、その後はイラクにボールを支配され、シュートも打てない苦しい戦況が続いた。

そんな流れからも、後半27分の失点は決して偶然とは言えないものだった。後半もどちらかといえばイラクのペースで、同点後は勢いを失ったが、グループ5位で突破の可能性を失っていた相手に対して文字通り、日本は最後まで青色吐息だった。

脳しんとうで交代した井手口陽介、足を痛めてベンチに下がった酒井宏樹、そして後半途中から足のけいれんが続いた久保裕也…。井手口に代わって登場した今野泰幸にしても、長期に渡る故障欠場明けのためにトップフォームでないことは6月8日のシリアとの親善試合からはっきりしていた。

そのシリア戦の負傷で戦線離脱した香川真司も含め、これだけ故障者が続出したのだから、勝ち点1という結果も悪くはない。しかし、あらためて浮き彫りになった選手層の薄さと指揮官の不安定な采配は、勝ち点1を拾ったという事実を忘れさせてしまうほど深刻だ。

選手層の薄さ――これはもちろん日本サッカー界全体の問題でもあるので、ハリルホジッチ監督だけに責任を押し付けることはできない。しかし、来年の本大会、あるいは最終予選を確実に突破するというターゲットから逆算した場合、日本代表を任された指揮官のチーム作りとしては及第点を与えられるレベルにない。

イラク戦でスタメン出場したボランチふたりが、何よりその象徴だ。シリア戦で代表デビューしたばかりの井手口は、ポテンシャルこそ秘めているもののA代表の国際試合、とりわけアウェーで戦えるほどの水準にあるかといえば、イエスと答える材料は見当たらないのが実情。

遠藤航にしても、2015年11月のアウェーでのカンボジア戦(アジア二次予選)で先発するも前半だけでベンチに下げられて以来、A代表からは遠ざかっていた。また、遠藤はシリア戦でも出場機会はなく、所属の浦和レッズでは3バックのセンターを務める選手だ。

ボランチを長谷部誠と山口蛍で固定し続けた弊害がここにきて一気に噴出し、カンボジア、アフガニスタン、シンガポールなど格下相手のアジア二次予選の戦い方と選手起用があらためて悔やまれる。ここからも指揮官には本大会や最終予選から逆算ができるほどの余裕がなかったという結論が導き出される。

不安定な采配も相変わらず。不確定要素を残したシリア戦でのベンチワーク同様、結局、このイラク戦でそれが露呈した。基本布陣に4-2-3-1を採用したものの、ならばなぜシリア戦後半の開始数分で4-3-3に基本のフォーメーションを戻したのか。負傷交代などのトラブル要素を加味しても、シリア戦とイラク戦の関連性において、その采配には疑問が残る。

とはいえ、泣いても笑っても最終予選は残り2試合。8月31日にはホームで3位オーストラリアと戦い、中4日で2位サウジアラビアとアウェーで対戦する。

精神的に追い詰められた日本が勝てる確率は決して高くない

あらためて整理すると、現時点で首位日本の勝ち点は17ポイント。続いて16ポイントで2位サウジアラビア、同じく16ポイントで3位オーストラリアと続く。わずか1ポイントの中に3チームがひしめき、得失点差は日本が+9点、サウジアラビアが+7点、オーストラリアが+6点となっている。

ちなみに、勝ち点で並んだ場合は、(1)総得失点差、(2)総得点、(3)当該チーム間の対戦成績(勝ち点)、(4)当該チーム間の得失点差、(5)当該チーム間の総得点、(6)2チームが並んだ場合のみ当該チーム間のアウェーゴール数、(7)中立地での再試合、で決定する。

本大会にストレートインできる2位以上を確保できるかどうかだが、そこでポイントになってくるのが今後の対戦相手である。

上位を争うオーストラリア、サウジアラビアとの直接対決が続く日本は、残り2試合のうち1勝すれば予選突破が決まる状況にある。しかしながら、「予選突破に王手!」とポジティブに考えられるほど状況はよろしくない。むしろ、プレーオフ行きとなる3位の可能性も十分にある。

ホームで戦う次戦に勝って予選突破を決めたいところだが、オーストラリアはこのグループで唯一ここまで無敗をキープしている上に、過去のワールドカップ予選での対戦成績は3分け1敗と、かなり分が悪い。しかも、オーストラリアは最終戦が最下位タイとのホームゲームゆえ、仮に日本と引き分けてもそこで勝ち点3を積み上げる可能性は高い。

逆に日本はここで引き分け以下だと大変だ。最終戦はアウェーである上に、9月という時期を考えると酷暑での戦いを強いられる。仮に、対オーストラリアがドローで終わり、サウジアラビアが次のアウェーでのUAE戦を順当に勝ったとすると、勝ち点で上回った状況で日本戦を迎えることになる。精神的に追い詰められた日本が勝てる確率は決して高くないと見るのが妥当だろう。

現時点で日本の3位以上は確定しているため最終予選で落選することはないが、残り2試合の対戦相手、チーム状況を考えれば、「王手をかけた!」と喜んでいる人は少ないはずだ。もちろん、3位になった場合でもプレーオフが残っているので絶望することはないが、そこから本大会に出場するにはアジア最終予選グループAの3位とホーム&アウェーで戦い、勝利した上で、さらに北中米カリブ地区4位とホーム&アウェーで行なわれる「大陸間プレーオフ」に勝つ必要がある。

もしグループ3位になった場合は、ウズベキスタンあるいは韓国。その後にはパナマやホンジュラスといった未知なる相手との対戦が待ち構えているわけだ。

つまり、残り2試合+4試合――8月31日のオーストラリア戦で決着をつけられなければ、長く険しい旅が続くことになりかねない。

(文/中山 淳 写真/Abaca/アフロ)