『週刊プレイボーイ』本誌で連載中の「ライクの森」――。
報道情報番組『ユアタイム』(フジテレビ系)ではメインMCを務める人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
今回のテーマは「大相撲」。“スー女”である彼女が、注目しているポイントとは――?
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大相撲五月場所では、幕内は先の三月場所を制した稀勢(きせ)の里が途中休場するなか、休場明けの白鵬が見事に全勝優勝を飾りました。
白鵬にとっては、昨年の五月場所以来、1年ぶりの優勝です。よっぽどうれしかったのか、優勝インタビューでは「ただいま帰ってきました!」と、ニッコニコの笑顔で手を振っていましたね。
それだけではなく、「(病院に)検査に行ったら、血管年齢が25歳って言われて」と、まさかの健康自慢(笑)。その上機嫌ぶりからは、むしろこの1年の苦渋や忍耐の大きさがうかがわれました。
一方、十両戦線は大混戦でした。なんと、13日目にして7人が勝ち星トップで並ぶという状況。そんななかでも、私が最も注目していたのが安美錦(あみにしき)です。去年の五月場所で、アキレス腱(けん)断裂という大ケガを負い、後に十両へ陥落した安美錦。ここ数場所は、なんとか勝ち越してはいましたが、あまりいい相撲を取れていませんでした。
そんな安美錦が、復調の兆しが見える取組を見せてくれたんです。特に、13日目の貴源治(たか・げんじ)との一戦。貴源治は、今場所直前に20歳を迎えたばかりの若手で、「未来の横綱」ともいわれています。双子の兄と一緒に貴乃花部屋に入門し、貴乃花親方の教えを受けているという、話題性たっぷりの逸材ですね。
対する安美錦は、実は貴乃花の現役時代最後の対戦相手なんです。当時、かなり状態の悪かった膝のケガに加え、場所中に肩も負傷してしまった貴乃花。この満身創痍(そうい)の横綱に、若手で伸び盛りの安美錦が挑み、初金星を挙げました。その翌日、貴乃花は引退を表明します。
ベテラン勢が世代交代に待ったをかけた
時代は変わり、今度は38歳にして十両に落ちてきた安美錦と、貴乃花の弟子が対戦する…。なんてストーリーのある取組でしょうか。ここで貴源治が勝てば、いやが上にも“世代交代”の印象が強くなります。
果たして、戦略家の安美錦がどんな作戦を立ててくるのか…。私も固唾(かたず)をのんで見守っていたんですが、なんと、安美錦は真っ向からぶつかっていったんです!
そして、押しつ押されつの末に、最後は土俵際で逆転の下手投げ。安美錦としてはとても珍しい取り口でした。ただ、実は春の巡業でも貴源治を指名して稽古していたので、これも安美錦らしい研究の成果だったんじゃないかな、と私は推測しています。
これで勢いをつけた安美錦は、千秋楽で錦木(にしきぎ)と優勝を争います。この取組に勝てば、史上最年長の十両優勝。しかし、取組では一度は安美錦に軍配が上がったものの、物言いがついて取り直しとなり、健闘むなしく錦木に敗れてしまいました。五月場所の十両戦線は、最後まで混戦に次ぐ混戦でした。
ちなみに、幕下は36歳のベテラン、大岩戸が戦後最年長で優勝。幕内は白鵬が優勝を飾ったので、全体的にベテランの活躍が目立ちましたね。今、相撲界は世代交代の時期といわれていて、若手の台頭が著しいです。
しかし、五月場所はベテラン勢が世代交代に待ったをかけた形。名古屋場所はどうなるのか? 世代と世代がぶつかり合う今の大相撲、とっても面白いです!
●市川紗椰(いちかわ・さや) 1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、報道情報番組『ユアタイム』(フジテレビ)でメインMCを務める。今場所の市川的珍プレー好プレー大賞は、千代丸vs大砂嵐の「鼻血待った」