7月3日の記者会見後、早くもチーム練習に合流した五郎丸。新ルーティンでのキックの感触もよく、トップリーグでの活躍が大いに期待される

ラグビー選手として成長させてもらったので、ヤマハでラグビー人生を終える覚悟でいますーー。

7月3日、ラグビーブームを巻き起こした立役者である五郎丸歩(あゆむ)が会見を行ない、1年半ぶりに古巣のヤマハ発動機ジュビロに復帰した。

2015年のラグビーワールドカップに日本代表のキッカーとして出場し、南アフリカ戦を含む3勝に貢献した五郎丸。大会後は「五郎丸ポーズ」と呼ばれたキック前の動作が話題になり、一躍“時の人”になった。その翌年の2月から「挑戦することが楽しみ」と、オーストラリアのレッズで半年間プレー。8月からの1年間はフランスの強豪で世界の名選手を集めるラグビー界の“銀河系軍団”トゥーロンに在籍した。

しかし世界の壁は厚く、フランスでは36試合中5試合の出場に終わった。五郎丸は日本復帰の理由を「これ以上海外にいると、どうしてもパフォーマンス的にもメンタル的にも難しい。試合のパフォーマンスは試合に出ないと上がらない。(出たくて)ウズウズしている」と説明した。

五郎丸の早稲田大学時代からの恩師でヤマハ発動機の清宮克幸監督は「昨季、あと1勝すれば優勝というところで勝てなかった。チームの雰囲気を変えてほしい。五郎(丸)が帰ってきて優勝したシナリオが描ければ美しい」と期待をかける。

だが、五郎丸が昨季の準優勝チームのスタメンを奪えるかは未知数だ。昨季、チームのFBは南アフリカ出身のゲラード・ファンデンヒーファーが務め、ベストキッカー賞も受賞。ニュージーランド出身の新外国人SO、マット・マッガーンもキッカーに意欲を見せ、五郎丸が復帰したことで両選手は「目がギラギラしている」という。「ヤマハでパフォーマンスを出すことが最優先」と五郎丸本人も自覚するように、まずはチーム内競争に勝つ必要がある。

道は険しいが、「ヤマハでしっかりとしたパフォーマンスを出して、日本代表にふさわしい選手になれるように頑張りたい」と意気込みは十分。その通りにチームを優勝に導くことができれば、「日本一のチームからふさわしい選手が日本代表になる」と清宮監督が話すように、五郎丸が再び日本代表に選ばれる道が開けるだろう。

日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が掲げる、キックとスピードを重視したラグビーにおいても、五郎丸はキックが正確なのはもちろん、ハイパントのキャッチやパスのスキルも高いため、フィットできる可能性は十分にある。今季のヤマハ発動機はパスとランでボールを動かすラグビーを標榜(ひょうぼう)しており、チームで定位置を確保すれば、自然とフィットネスやスピードも上がっていくはずだ。

また、国際試合の出場は「57」と、現在の日本代表BK陣の中で2番目に多い。新しいルーティンで蹴るキックの当たりもよく、フランスでもフィジカルトレーニングを「ガンガンやっていた」おかげで、体重100kg前後をキープ。いつでも世界と戦う準備はできている。

再び五郎丸が桜ジャージーの15番を背負い、世界で輝く日が来るのか。8月18日に開幕するトップリーグは五郎丸の活躍から目が離せない。

(取材・文・撮影/斉藤健仁)