シーズンの3分の2を過ぎたJリーグは、優勝争いも残留争いも混戦模様。各チームともひとつでも順位を上げるべく、夏の移籍市場が閉まる直前まで動きを見せた。そんな中、僕が注目したのは神戸と浦和の2チーム。
神戸には待望の大物FWポドルスキが合流。デビュー戦でいきなり2得点を挙げて勝利に貢献したものの、その後は結果を出せず、チームも低迷。試合中、味方や審判に向かって文句を言っている場面が目立つし、気持ちよくプレーできていないのは明らかだ。
では、なぜポドルスキは期待通りの活躍を見せられていないのか。
ひとつは、コンディションの問題。彼は欧州の長いシーズンを終え、オフを経てから神戸に合流している。試合勘、体力面、それに加えて日本の蒸し暑さを考えれば、いきなり全開というわけにはいかない。神戸合流後にプロ野球の始球式やスポンサーのイベントなどに駆り出されていたことも、個人的にはマイナスに働いたと思う。
もうひとつの理由は、神戸のチーム状態が良くないこと。ポドルスキはゴール近くでボールを持てば、迫力あるプレーを見せている。角度のないところからでも強烈なシュートを打っている。でも、彼はひとりで何もかもこなすタイプの選手じゃない。もっと周囲のサポートが必要だ。
今はポドルスキが「俺にパスを出せ」と怒り、周りの選手が萎縮し、チームの攻撃のバリエーションがさらに少なくなっている。その悪循環をどう断ち切るかだね。
ちなみに、チームメイトに対して怒りを露(あらわ)にすることは決して悪いことじゃない。ジーコやドゥンガ、ストイコビッチなども来日当初はチームメイトに怒鳴ってばかりいたけど、最終的にはチームを強くして、自らも輝いた。
「パスをよこせ」だけでなく、チーム全体に喝を入れられるか、そこはポドルスキが頑張らなければいけないところだね。いずれにしても、これからコンディションも上がってきて、家族も来日して精神的にも落ち着くだろうし、爆発に期待したい。
優勝を目指すチームの補強じゃなかった浦和
失速して中位に甘んじている浦和はペトロビッチ監督を解任し、ブラジル人DFマウリシオを獲得。その一方で今季最も奮闘していた若手のMF関根がドイツ2部のインゴルシュタットに移籍するなどバタバタしている。
今季の失速の理由はいろいろあるけど、開幕前に的確な補強をしなかったことが大きい。多くの選手を獲得したけど、戦力アップといえるのはFWラファエル・シルバくらい。下部組織出身、埼玉県出身といった理由で獲得した選手は、まるで試合に絡めていない。選手層の薄い最終ラインにも即戦力の補強はナシ。それでいて外国人枠を余らせている。とても優勝を目指すチームの補強じゃなかった。
もちろん、過去5年間で昨年のルヴァン杯しかタイトルを獲得できなかったペトロビッチ監督の責任も大きいよ。硬直した選手起用でマンネリを招いた。サッカーの内容どうこう以前にチーム内の競争が少なかった。
でも、そんなペトロビッチ監督に見切りをつけず、ずるずると6年目まで引っ張ったのはフロントだ。補強も含めて、ここ数年のフロントの怠慢が今の結果につながっているように思う。
今季の優勝はさすがに厳しい。オフに新監督の招聘(しょうへい)、思い切った世代交代に手をつける必要があるね。
(構成/渡辺達也)