しびれる試合になるのは間違いない。重要になるのは技術よりも精神的なタフさ。相手のほうが力が上だと思って、自分たちの力を120%出すつもりで戦えれば勝機は十分ある。
W杯最終予選の大一番、オーストラリア戦(8月31日・埼玉)が迫ってきた。残り2試合で首位に立っている日本は、勝てばW杯出場が決定。でも、引き分け以下だと一気に苦しい立場に立たされる。最終節の相手は現在2位の強敵サウジアラビア。しかもアウェー。そこまでもつれ込む展開は避けたいところだ。
オーストラリアは過去、W杯予選で日本に一度も負けたことがない。また、今回の最終予選もこれまで8試合で4勝4分けと負けなし。以前ほどのビッグネームはいないものの、特定の選手に頼るサッカーではなくなり、むしろ選手層は厚くなった印象だ。6月のコンフェデ杯でも、試合ごとにメンバーを入れ替えていたけど、サッカーの質が落ちることはなく、チリ、カメルーンといった強豪国相手に引き分けに持ち込んだ。
スタイルとしては、昔のように体格を生かしてロングボールを放り込むのではなく、中盤でしっかりつないでくる。昨年10月のアウェー戦では、オーストラリアがボールを保持して試合の主導権を握り、日本が守りを固めてカウンターを狙う展開になった。今回も日本のホームとはいえ、ある程度は同じ展開になるんじゃないかな。
迎え撃つ日本は、前線に誰を起用するか。そこがカギを握る。以前から何度も言っているけど、コンディションのいい選手を選ぶのが大前提。勝ち点3を奪えなかった6月のイラク戦(1-1)での失敗を繰り返してはいけない。
ボランチから後ろのポジションに関していえば、海外組も国内組も所属クラブでしっかりプレーしているから計算が立つ。特に主将の長谷部の復帰は頼もしい。
問題は攻撃陣だ。海外組で好調といえるのは岡崎くらい。故障明けの選手、所属クラブで昨季より出場時間を減らしている選手、昨季ほど活躍できていない選手が多く、不安が尽きない。
90分間しっかりと戦える選手を選ぶべき
思い出すのは2006年ドイツW杯でのオーストラリア戦だ。日本は前半を1-0とリードして折り返したけど、後半に足が止まって、逆転負け(1-3)を食らったよね。結局、最後まで走れるかどうかの差が勝負を分ける。
もちろん、実績や経験も大事だけど、“決勝戦”ともいえる大一番なのだから、まずは90分間しっかりと戦える選手を選ぶべき。
今回の最終予選をふり返っても、原口、久保、大迫など所属クラブで好調だった選手は、その勢いを代表に持ち込んでくれたよね。また、国内組でも、G大阪でいいプレーを見せていた今野が3月のUAE戦で約2年ぶりに代表復帰して大活躍した。今回、海外組の状態がいまいちならば、好調な国内組の選手を抜擢(ばってき)するのもアリ。僕は十分に通用すると思う。
オーストラリアは手ごわい。先制点を与えたら厳しくなる。でも、弱点がないわけじゃない。最終ラインはスピード不足だ。ボールを“回されている”ではなく、“回させている”という冷静な意識を持ち、機を見てプレスをかけ、ボールを奪ってカウンターを仕掛ける。それを愚直に繰り返すことで勝機は生まれるはず。ぜひここでW杯出場を決めてほしいね。
(構成/渡辺達也)