宮澤ミシェル氏がW杯行きを決めた日本代表のオーストラリア戦を分析 宮澤ミシェル氏がW杯行きを決めた日本代表のオーストラリア戦を分析

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第11回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、W杯最終予選オーストラリア戦に見事勝利して、本大会出場の切符を獲得した日本代表について…。

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お見事でした! 日本代表がこれまでのW杯予選で0勝2敗5分と勝てなかったオーストラリアを2-0で下して、6大会連続6回目の出場を決めてくれた。

前線からのプレスで早めに仕掛けたのがハマった。オーストラリアにいいところをほとんど出させなかったね。

オーストラリアは6月のコンフェデ杯の時のように足が動かなかったし、日本のウィークポイントである空中戦やパワープレーを仕掛けてこなかったことも日本代表を助けた部分が多少はある。

だけど、この試合はハリルホジッチ監督やスタッフの勇気ある決断が勝利を引き寄せたといっても過言ではない。

スタメンで左FWの乾貴士はある程度予期していたが、右FWに浅野拓磨を起用するのは勇気が必要な決断だったはずだ。個人的には、ハリルホジッチ監督は浅野ではなく、久保裕也を先発起用するかなと予想していたんだ。

それが蓋を開けてみたら前線のサイドに浅野と乾。帰国してからスケジュール的に時間のない中で選手たちのコンディションを見極め、W杯予選の経験の少ない浅野と乾をピッチに送り出した。これは評価できるポイントだろう。

スピードがある浅野や、ドリブラーの乾のようなタイプを使えたのはキャプテンの長谷部誠が故障から復帰したことが大きかった。中盤で井手口陽介と山口蛍が高いボール奪取能力を発揮できたのも、その後ろで長谷部がしっかりとバランスを取っていたからだ。

長谷部が試合序盤に相手に狙われて1、2度ボールを奪われるシーンもあったけれど、その後はしっかり高い対応力を発揮してチームをコントロールした。さすがベテラン。33歳、O型!

ワントップの大迫勇也も非常によかった。ゴールこそなかったが、彼が故障から復帰していなかったら、この勝利があったかどうかわからない。それくらいいい仕事をしてくれたよ。プロになってからは強烈なインパクトをなかなか残せずにいたけれど、W杯最終予選終盤になって高校時代のような存在感を日本代表でも発揮してくれたね。最終予選の大詰めで彼がいてくれて、本当にありがたかった。

身長182cmと格別大きいわけではないけれど、ボールキープができて、ポストプレーでもしっかり味方にボールを供給できていた。大一番の1トップでのスタメンを失った岡﨑慎司はガッカリしただろうけど、今回の大迫の働きを見たら納得の起用だった。

最終予選は常に新しい選手が躍動

この試合では22歳の浅野が先制点を奪って、21歳の井手口が貴重な2点目を決めたが、今回の最終予選では常に新しい選手が躍動。原口元気、清武弘嗣、久保裕也、今野泰幸、川島永嗣…とW杯最終予選を通して苦境に立たされるたびに、起用した選手がベテランも若手も次から次へと見事にチームを救ってくれた。

こうした選手起用は外国人監督だからこそと思う。オーストラリア戦で期待通りの活躍をした浅野、井手口、乾をはじめ、この最終予選を通じて多くの選手が自信をつかみ、大きな経験を積んだといえる。

だからといって、W杯本大会で、オーストラリア戦のメンバーが中心になるかといえば、そうじゃない。長谷部が試合後のあいさつでも言っていたように、本大会のメンバーになるための「新たな競争」がここから始まる。

本田圭佑が右サイドのポジションを掴もうと思ったら、スピードでは浅野や久保にかなわない。その代わり、フリーキックやボールキープなどの別の仕事ができることをアピールしていかなきゃいけない。これは香川真司や清武にも同じことがいえるし、1トップのポジションを狙う岡﨑や杉本健勇もそう。

また、乾や井手口、山口が定位置を自分のモノにするには、特長を伸ばしながらステップアップしていくことが不可欠だ。今回、出場機会のなかった海外組やJリーグ組にもチャンスはあるし、彼らが今の代表メンバーをガンガン突き上げることが来年のロシアでの本大会でベスト8に進むためには絶対欠かせない。

そうした第一歩になるのが、9月5日(日本時間9月6日)にあるサウジアラビア戦だ。W杯ロシア大会の出場権を獲得できたことで、選手たちにはそれまでの張り詰めた緊張感から解き放たれた反動が出ると思う。

だからこそ、サウジアラビア戦は若手や出場機会の少なかった選手を起用するんじゃないかな。そうした中で巡ってきた出場機会をチャンスだと思って、どんな選手がアピールしてくれるのか。それを楽しみにしたい。

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)