試合展開に応じたサッカーができるようにならないと世界では戦えないと語るセルジオ越後氏 試合展開に応じたサッカーができるようにならないと世界では戦えないと語るセルジオ越後氏

深夜2時半(日本時間)のキックオフで、あんなプレーを見せられたら、眠くなってTVを消した人も多いんじゃないかな。この試合に日本のW杯出場がかかっていたらどうなっていたかと考えるとゾッとしたよ。

ロシアW杯最終予選の最終節でサウジアラビアと対戦した日本は、0-1で敗れた。

すでにW杯出場を決めている日本は失うものが何もない。なのに、なぜ立ち上がりからあそこまで守備的な戦い方をしたのだろう。勝利が必要なサウジに対して「逆にいじめてやろう」くらいの気持ちで攻勢をかけるべきだった。

これまでのサウジの戦いぶりを見れば、前半は0-0でいいという感じでゆっくりとボールを回し、後半の選手交代で攻撃のギアを上げるというのがいつものパターン。相手をしっかり分析していれば、そのくらいのことはわかったはず。にもかかわらず、引き分け狙いのような試合の入り方をして、後半勝負の相手の作戦にまんまとハマった。日本はカウンターを狙うだけだから、先制点を奪われると苦しい。長身の吉田を前線に上げるワンパターンの攻撃しか見せられなかった。

選手起用に関しても疑問が残った。なぜコンディションがいいとはいえない本田を先発で起用したのか。しかもキャプテンマークまで託して。結局、本田は何もできずにハーフタイムで交代。香川に関してもそう。オーストラリア戦に呼んでも出番はなく、サウジ戦前に離脱してドイツに戻った。彼らに責任はない。問題はコンディションが万全でないのに招集、起用した側にある。事前に状態をちゃんとチェックしていなかったのかな。オーストラリア戦でも証明されたように、名前や実績にとらわれずそのとき調子のよい選手を優先して起用すべきだった。

残された期間でもっと攻撃のバリエーションを増やす必要がある

最終予選をふり返ると、原口、久保、大迫、浅野、井手口など日替わりヒーローが出てきてなんとか勝ち上がった。でも、ラストのサウジ戦では、コンスタントに点を取れる、攻撃の軸になる選手がいないという弱点を露呈した。 一方、守備に関してはある程度、計算が立った。特に、全試合にフル出場した吉田は誰と組んでもうまく対応していたし、頼れる存在だった。今予選のMVPだ。

W杯本番まで9ヵ月。オーストラリアに快勝したことで、守りを固めてカウンターを狙うサッカーを推す声が大きくなっているけど、それだけでは勝てないことが今回のサウジ戦でよくわかったと思う。リードされたときにどうするのか、引いて守る相手をどう崩すのか。ブラジルW杯のコートジボワール戦もギリシャ戦も最後は守りを固める相手に攻め手を欠いた。試合展開に応じたサッカーができるようにならないと世界では戦えない。

だからこそ、残された期間でもっと攻撃のバリエーションを増やす必要がある。もちろん、よかったときの本田のような強烈な個を持ち、チームの攻撃を牽引(けんいん)する選手の出現にも期待したい。

年内は10月、11月に強化試合、12月には東アジア杯、さらに年明け以降も強化試合が組まれるようだ。漫然とスケジュールを消化するのではなく、少しでも強い相手と試合を組んで、過信することなく、自分たちの強みと弱みを確認していく作業を積み重ねていくしかないね。

(構成/渡辺達也)