最多優勝回数39回。最多勝利数1050勝。すでに前人未到の領域に達し、たったひとりでその道を突き進む大横綱・白鵬。
前編記事に続き、旧知のスポーツカメラマン・ヤナガワゴーッ!氏に語った、“歴代最強横綱”の境地とは―。
■親方株のこと、帰化のこと、最近の取組のこと
すでに前人未到の領域に達し、たったひとりでその道を突き進む大横綱・白鵬。記録との向き合い方にも、その矜持(きょうじ)を感じる。
「わたしが記録を抜かしたからといって、大鵬さんの偉大さはなんにも変わりません。それでも記録はいつかは破られるものなのです。もし、何十年後かわからないけど、わたしの記録を破る力士が出てきたら、またそのお相撲さんにはずーっと勝ち続けてほしいです。そして、わたしのことをいつまでも尊敬してもらえたら嬉しいです。そうしてもらえるよう今は頑張っています」
世間の注目を集める“あの話題”にも、イヤな顔ひとつせず答えてくれた。
「親方株のこと、まして帰化のことはわたしひとりの問題じゃないし、軽はずみに言えることではないですよ。想像で書いたような記事も出てますけど、みんな仕事で書いてることだし、わたしからは何も言うことないですよ。ただただ、力の限り勝ち続けるしかないのです。わたし人に何言われようが自分自身の信じるカタチで相撲人生をまっとうしたいのです。相撲もモンゴルも妻も子供も両親も愛しています。相撲の神様だけが(将来のことを)知ってるんじゃないですか」
いかにマスコミが騒ごうとも、グッと堪(こら)えて「ただ、勝ち続けるしかない」と言い切ってしまう。これが“歴代最強横綱”がたどり着いた境地なのだ。最後に、最近の取組について聞いてみた。
―最近はずいぶんと対戦相手に対して厳しくないですか? 顔を張ったり、カチ上げたり。
「……」
白鵬は答えない。
―「勝てるもんなら勝ってみろ!」って、自分を追い込んでるみたいです。
「……」
白鵬は無言のまま、ただニンマリと笑った。
“まだまだ負けたくないから”
その表情から、誰よりも大相撲を愛する孤高の男の、声にならない叫びを聞いた気がした。
(撮影・取材/ヤナガワゴーッ!)