格下のニュージーランド相手に四苦八苦。かろうじて2-1で勝利を収めたものの、10月6日親善試合は日本代表にとって乏しい内容のゲームとなってしまった。
ひと言でいえば、「格上感ゼロ」。スコアは別として、本来なら余力を持ちながら相手をいなし、常にゲームをコントロールして戦わなければいけない相手に対して、日本の選手は全員が試合開始から必死に挑んでいた印象だった。
もちろん、本大会のメンバーに入るために選手がアピールしたいという気持ちもよくわかる。「ロシアを目指したサバイバルがスタート」というマスコミの無理やり感たっぷりな煽(あお)り方にも問題はあるが、それにしても必死に戦ってこの内容では先が思いやられてしまう。悲しいかな、これが現在の日本代表の実力だと言わざるを得ない。
果たして、ハリルホジッチ監督にとってこの試合はメンバー選考の参考になったのだろうか? 「今年はたくさんの選手を見て、それぞれに何ができるのかを見極めることにしたい」とは試合後の指揮官のコメントだが、客観的に見てこの試合が参考になったのかは、はなはだ疑問だ。一生懸命プレーして結果を残した選手に罪はないが、少なくともこのゲームを振り返る時、そういう視点を欠いてしまっては本質が見えなくなってしまう。
以下、それを踏まえた上でニュージーランド戦に出場した選手の採点と寸評をしてみたい。(採点は10点満点で、平均点は6.0点)
【GK】川島永嗣=5.0点
失点場面は仕方ないとしても、数少ないピンチでファンブルを犯すなどミスが目立った。経験値と監督とのコミュニケーション力(フランス語が話せる)によって東口順昭と中村航輔より一歩リードしているが、現状では消去法的な正GKと言わざるを得ない。
【右センターバック(CB)】吉田麻也=5.5点
前線へのロングフィードなど他のDF陣との格の違いを見せるプレーもあったが、一方で失点シーンのように大事な場面での頼りなさも露呈。本大会では最終ラインの要となることは間違いないが、以前から散見される致命的なミスを犯してしまう悪癖は改善すべき。
【左CB】槙野智章=5.5点
本人にとっては及第点の出来だったに違いない。しかし、CBとしての資質という点でいえば、ポジショニングや競り合いでの身体の使い方など問題点は多い。ハリルホジッチは本当にこの選手をCBとして考えているのか? 彼の特徴からすると大いに疑問だ。
【右サイドバック(SB)】酒井宏樹=6.5点
倉田の決勝ゴールをアシスト。攻撃では相変わらずの活躍ぶりだったが、守備ではまだ甘さが垣間見える。ピンチの場面でもっと積極的にプレーに関与し、自分が責任をかぶるくらいのプレーをすべき。そのメンタルが改善されれば、もっと安定感が生まれるはず。
【左SB】長友佑都=5.5点
失点シーンでの守備対応は見過ごせないマイナスポイント。攻撃では自重しながら全体のバランスを考えた攻撃参加を見せ、実際にそれは効果を示していただけにベテランらしからぬミスだったと言える。右の酒井(宏)と同様、現時点ではレギュラー有力。
【右ボランチ】山口蛍(90+3分交代)=5.5点
無難にプレーしていたが、このポジションでそれは不合格。ボールを奪い、攻撃の起点となってゲーム展開を掌握できるかが問われるポジションだけに無難なプレーだけでは物足りない。ゴール前でボールを持った時の選択肢も消極的だった。
【左ボランチ】井手口陽介(82分交代)=5.0点
必死にプレーするあまりミスが目立ち、ピンチも招いた。山口同様、全体を見回しながら冷静にプレーできるレベルに到達すれば、もっとチーム全体を落ち着かせることができるはず。11月の欧州遠征の親善試合でどのようなパフォーマンスを見せられるか真価が問われる。
久々の出場となった香川は
【右ウイング】久保裕也(78分交代)=5.0点
ここ数試合のパフォーマンスを見ていると、今年3月の予選2試合(UAE戦、タイ戦)の活躍はまぐれだったのかと疑いたくなってしまう。調子の波に大きく左右されてしまう選手で終わってしまうのか。プレーの精度を含めて課題は多く、現状は当落線上か。
【左ウイング】武藤嘉紀(70分交代)=5.5点
中央寄りのプレーでは、大迫との連係でチャンスに絡んだ。ただ、決定機を逃すなど違いを見せられたわけでもなく印象は薄い。クラブでのポジションはセンターフォワード。チャンス時にゴール前でもっとシュートを打たせるために1トップ起用も試したい。
【トップ下】香川真司(60分交代)=5.0点
指揮官の温情采配なのか、せっかくシステムを4-2-3-1にしてくれたにも関わらず、最も得意なポジションで結果を残せず。このレベルの相手との試合で四苦八苦しているようでは、いよいよメンバー落ちが現実味を帯びてきてしまう。これからコンディションが上がってくることに期待したいが指揮官の悩みは尽きない。
【1トップ】大迫勇也(60分交代)=6.5点
相手CBのレベルもあるが、くさびのボールをしっかり収めて次の展開に繋げるプレーは相変わらず質が高い。一方、PKで1得点は記録したが、枠外シュートが目立つなど決定力は改善の余地あり。このポジションは、やはりゴールを奪うことが最大の任務だ。
【MF】小林祐希(60分途中出場)=6.0点
周りを活かしてテンポを変えるなど持てる力は出していたが、いかんせんこの試合のプレーだけではW杯基準の評価はできない。また、途中出場で起用する時の使い方と効果については中途半端感も否めない。メンバー入りのためにはもうひと皮むける必要がある。
【FW】杉本健勇(60分途中出場)=5.0点
自らの持ち味を出して放ったシュートは1本のみ。それ以外に目立ったプレーはなく周囲との連係も改善の余地あり。また、出場した時間帯だけではカウンター時に他のFWとの違いを見せられるかもわからずじまい。年内の試合で結果を残せるか、そこに尽きる。
【FW】乾貴士(70分途中出場)=6.0点
途中出場で試合の流れを変えられることを証明。相手DFのレベルの問題もあったが、彼のドリブルが突破口となって何度もチャンスを作り、コーナーキックも増えた。問題はスタメン出場で同じような活躍ができるかどうか。11月の親善試合ではそこに注目したい。
【FW】浅野拓磨(78分途中出場)=5.0点
確かにスピードはある。それは間違いないのだが、それプラスの何かがなければW杯に出場するレベルのチームが相手だと、ワンプレーだけで見破られてしまい通用しない。所属クラブでプレーの幅を増やせるかどうか。そうでなければ、メンバー入りも難しくなる。
【MF】倉田秋(82分途中出場)=6.0点
自身初の代表ゴールが決勝点になった点は大きい。ただ、これでメンバー入りが近づいたかとなると話は別。ゲームの流れを変えるという点では小林に軍配が上がるだけに、よりゴールに直結するプレーを増やすことが生き残るためのひとつの道となりそう。
【MF】遠藤航(90+3分途中出場)=採点なし
出場時間が短く採点なし。ハリルホジッチはこの選手の適性ポジションを守備的MFとして考えているようだが、それには賛同するものの、所属クラブでは異なるポジションでプレーしている現実をどう解決するのか。短い出場時間がその問題点を浮き彫りにしている。
(取材・文/中山淳 撮影/松岡健三郎)