清宮指名の重複数に注目。回避したチームが誰を狙うのかも見逃せない! ※写真はイメージです

今年の主役・清宮幸太郎(早実)のプロ入り表明で俄然ヒートアップしてきた今年のドラフト戦線。

空前の指名重複も予想される中、あえて真っ向勝負で清宮獲得に挑む球団と、勝負を避けて高校ビック3の残るふたり(中村奨成、安田尚憲)に方向転換する球団。そして、その間隙を突いて大学・社会人の即戦力投手の一本釣りを目論む球団もありそうだ。

各球団のスカウトの目利きが問われる中、恒例の関係者座談会で、目前(10月26日)に迫った今年のドラフトを前編記事に続き大予想!

A:アマチュア野球専門誌編集者B:若手現役スカウトC:元在京球団スカウトD:アマチュア野球記者

* * *

 清宮への重複次第ですが、もし安田(尚憲・履正社))や東(和樹・立命大)が入札漏れした場合、昨年の佐々木千隼(ロッテ)のように、外れ1位でかなりの球団の指名が重なることも。そうなると、そこも外した“外れ外れ”1位に各球団のカラーが出てくる気がします。

 「遠州の大魔神」こと、鈴木博志(投手・ヤマハ)は“外れ外れ”までは残らないだろう。むしろ1位入札の可能性もあるぞ。くるとしたら、準地元になる中日あたりかな。馬力のあるピッチャーで、乗ってきたらストレートは150㎞台中盤まで出る。プロではクローザー希望だと聞いているが。

 鈴木の剛速球は短いイニングならプロでも十分通用します。後ろ(リリーフ陣)の層を厚くしたいチームにとってはうってつけの存在です。

 高校生では石川翔(投手・青藍泰斗)の評価が高いですね。“外れ外れ”まで待ったら、もう残っていない可能性もある。

 同じMAX151kmですが、甲子園優勝投手の清水達也(花咲徳栄)より将来性は上でしょう。清水は3位指名くらいかな。ただ、甲子園優勝投手というのは「何かを持ってる」と言われますから侮ることはできませんが。

 石川は怪我が多いから1、2年は身体作りをして、忘れた頃に一軍でローテーションの谷間に先発デビューという感じだろうな。そういう育て方が上手いのはソフトバンクだよ。あの選手層なら今、焦って即戦力を獲りにいく必要もないし。ただ、地元出身選手ということで山口翔(投手・熊本工)のほうが指名の優先順位は上になるのかもしれない。

 “外れ外れ”のそのまた“外れ”みたいな状況になったら、増田珠(外野手・横浜)も1位に浮上しそうですね。騒がれて開幕した甲子園で初戦敗退し、U―18でもさほど目立った活躍もなかったのでビック3の陰に隠れた印象がありますが、総合的な野球の能力は3人と遜色ないですから。

 “外れ外れ”くらいまでいくと、その球団の指名の方向性が出てきますね。山口や増田のようにすぐには使えなくても5年後の中心選手の候補に「1位」で箔(はく)を付けるか、2位でウェーバーならもう獲れなくなる即戦力をガッチリ抑えにいく現実主義か。

 だから“外れ外れ1位”と2位でウェーバー上位の選手に評価の差なんてないんだよ。今年でいえば、清宮のような目玉をクジで獲りあったら、あとは20人くらいの有力選手を各球団で分け合ってるだけなんだから。

地方の大学リーグ出身でも本物がいます

 でも、今年は不作なので20人まで名前が出てきませんよ。どこも欲しいのは即戦力投手ですけど、大学生なら近藤弘樹(岡山商大)、馬場皐輔(仙台大)、草場亮太(九産大)の地方リーグトリオ。社会人は鈴木康平(日立製作所)、西村天裕(NTT東日本)といった速球派右腕はどこの球団もチェックしているはずです。

 今は則本昂大(楽天)みたいに地方の大学リーグ出身でも本物がいますからね。スカウトの皆さんはチェックが大変だ。

 地方リーグのノビノビとした環境でやることで力を伸ばしたわけだが、逆の意味で六大学や東都といった厳しいところで結果を残している選手も評価しなくてはいけないな。

 そこに該当するのが斉藤大将(明大)、鍬原(くわはら)拓也(中大)の両投手でしょうね。まとまりすぎている感がある斉藤と、粗削りな鍬原という対照的な印象ですが。

 話題性ということでは、この秋、ホームラン記録で注目を集めた慶大のスラッガー岩見雅紀(外野手)、東大のエース・宮台康平の評価はどうなんでしょうか?

 2位と3位のボーダーラインという感じかな。岩見は“外れ外れ外れ”くらいまでいったら思い切って1位でくる球団があるかも。今は大卒だから必ずしも即戦力という考え方をしないほうがいい。

昨年、阪神が無名(地方リーグの白鴎大出身)ながら長距離打者としての潜在能力を評価されていた大山悠輔を1位で指名して、ファームで鍛えながら一軍で使っていくうちに、そこそこ格好がついてきたからな。岩見は大学でも我慢して使ってもらってあそこまで育ったバッターだから、試合に出してくれるチームに行けば開花する可能性はある。

 宮台も3位まで待ってしまうと残っていない可能性があります。140km台後半の球速を出す左腕はそうそういないし、何しろ法学部ですからね。今までの東大出身プロ選手の中では、頭脳も野球のポテンシャルもNo.1でしょう。

 高校生では清宮から5打席連続三振を獲った桜井周斗(日大三)、U-18で好投し注目を集めた田浦文丸(秀岳館)の両左腕。全国的には無名ですが本田仁海(星槎国際湘南)、牧丈一郎(啓新)の両右腕。野手ではポテンシャルは中村と双璧と言われている村上宗隆(捕手・九州学院)なんかが3位まで待つのは危ない選手たちでしょうね。

 今年は源田壮亮(西武)、京田陽太(中日)という、ドラフト時には決して目玉というほどの存在ではなかった両選手が1年目からレギュラーとして大活躍しました。隠れた実力派が今年も大学・社会人にいそうですね。

 特に今年は内野手に面白いのが多いな。まぁ、源田、京田の活躍の裏で、鳴り物入りで巨人に1位入団した吉川尚輝はファーム暮らしで終わったわけだから、スカウトの目利きが問われる部門だね。

2、3位を巡る各球団の駆け引きと隠し球も楽しみ!

 広島・田中広輔の弟、田中俊太(内野手・日立製作所)は、打撃も守備もプロで通用するレベルにあると思います。2年前(東海大4年時)に指名されていても不思議ではなかった。ただ、セカンドのポジションが空いているチームに行かないと。田中みたいな選手は試合に出てナンボ。ベンチに置いたままでは活きませんからね。

 顔もプレーも兄にそっくりですよね(笑)。広島が獲れば兄弟二遊間で売り出せるんだろうけど、セカンドには菊池涼介がいるから、まず指名はない。

 東都リーグで通算100安打を達成した山崎剛(内野手・国学大)もそうです。いい選手なんだけど、今いるセカンドとの力関係を考えてしまう。

 そういう意味では、源田が抜けた後、トヨタ自動車のショートを守った藤岡裕大は、サードも外野もできる分、ツブしが利く。あの強肩はどこを守っても武器になるよ。やはり2年前(亜細亜大4年時)にドラフト指名漏れで悔しい思いをしているからな。

 彼らのような大卒社会人選手はプライドもあるから、ある程度、上位じゃないと指名しにくくなってしまう。だから候補リストに入っていても、結局、指名されずに終わってしまうという状況も考えられる。

 ショートでは他に熊谷敬宥(立大)、宮本丈(奈良産業大)という大学生ふたりの評価も高いですが…。

 バッティングで「これは!」という選手は大体、内野手ならファーストかサードを守ってる。高校までは大型ショートと言われても、上のレベルに来たら守備が不安で、試合に出やすいポジションにコンバートされていくパターンも多いからな。ショートはとりあえず守備で「うまい」と言われるレベルなら、ベンチに置いておけば守備固めで使えるし、レギュラーになったら試合で使っているうちにバッティングはなんとかなってくる。宮本慎也(元ヤクルト)がそうだったし、今年の京田と源田が証明したよな。

 また近年の傾向として、藪田和樹(広島)や畠世周(巨人)のように、怪我で実績は残せていなくても潜在能力を高く評価して上位指名し成功したケースが見られます。これも“隠し球”ということになりますね。

 それでいうなら高橋礼(投手・専大)が面白い。大学JAPANにも入ったことがあるから、隠し球というには名前を知られているが。あのアンダースローからの伸びるストレートは魅力だよ。

 ひと頃は野球界全体に左打者が増えたことでアンダースローはもう通用しないと言われた時期もありましたが、渡辺俊介(元ロッテ)の活躍や、今も牧田和久(西武)がバリバリ投げています。本当に力のあるボールを投げられたら通用するし、変則的なフォームが武器にもなる。

 まとめると、まず清宮指名の重複数に注目。その清宮を回避したチームが誰を狙うのかも見逃せない。次に2、3位を巡る各球団の駆け引きを楽しみに、ということですね。

★『週刊プレイボーイ』45号(10月23日発売)「ドラフト超予想2017」では、清宮の評価を球団スカウトに直撃! また、第2の源田&京田となる逸材は? 東大・宮台はプロで輝けるか?など未来のスター候補を総ざらいで検証!