清宮を引き当てた日本ハムはドラフトの主役に… ※写真はイメージです

注目のプロ野球ドラフト会議。今年の目玉、清宮幸太郎(早実)を引き当てたのは近年、ドラフトの主役となりつつある日本ハムだった。

直前で清宮指名から降りた球団、外した球団それぞれの内幕はいかに。そして上位指名選手たちの実力のほどは? あっと驚く隠し球も飛び出したが…。

そして、勝ち組、負け組はどこなのか? ドラフト直後の各報道も一段落したところで、直前予想の反省会も兼ねた冷静かつ本音のドラフト総括座談会、決定版をお届けする。

A:アマチュア野球専門誌編集者B:若手現役スカウC:元在京球団スカウトD:アマチュア野球記者

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 清宮は結局、史上最多の8球団(89年ドラフトの野茂英雄、90年の小池秀郎)には届きませんでしたが、高校生史上最多タイ、野手史上最多タイ(いずれも95年ドラフトの福留孝介)となる7球団の1位重複指名を受けました。

 当初から回避を表明していたのが広島とオリックスの2球団。指名の動きを見せた10球団のうち、直前まで濃厚と思われていた西武が斉藤大将(ひろまさ・明大)、DeNAが東(あずま)克樹(立命大)と即戦力投手に方向転換。どちらに転ぶかわからなかった中日と楽天は、楽天が清宮争奪戦への参戦を選択し、一方の中日は広島との競合覚悟で中村奨成(広陵)に鞍替えしましたね。

 直前回避の3球団は非常に現実的な選択をしたということだな。中日はもちろん谷繁の引退以降、レギュラー捕手が固定できないチーム事情もあるが、清宮人気に魅力を感じる親会社の意向も忖度(そんたく)し、甲子園の活躍で知名度の高い中村なら、という判断があったはず。外しはしたけど、1位入札も考えていた鈴木博志(ヤマハ)が獲れたのだから御の字だろう。

DeNAは投手の補強を優先したいという現場の希望をのんで、重複が予想される左腕No.1の田嶋大樹(JR東日本)よりも、同じ左腕で一本釣りで確実に獲れる東を選択した。その田嶋を獲りにいった西武も今オフ、牧田、野上といった主力投手がFAで出ていく可能性があるだけに投手補強の優先順位が高くなった。それに清宮を獲っちゃうと、選手寮を建て直さなきゃならなくなるからね(笑)。

 またパ・リーグにスター候補を持っていかれたというのがセ・リーグ各球団の本音じゃないですか。「人気のセ、実力のパ」なんて言葉は本当に死語になっちゃいましたね。今や人気も実力も完全にパの後塵を拝してる。

それにしても、日ハムの強運には驚きます。中田翔、斎藤佑樹、今回の清宮と大物を引き当てるクジの強さもそうですが、ダルビッシュ有がメジャー移籍したら大谷翔平、その大谷が出ていく年に清宮と、見事なまでにチームの血を循環させています。今回はクジを引き当てた木田優夫GM補佐にもスポットが当たって、球団は強運グッズの製作も検討しているみたいですね。

 木田といえば、40代50代のファンには懐かしい名前だからな。昨今のドラフトがTV主導でショーアップされていることの副産物なんだろうけど、商売上手な球団だよ。おまけに東大法学部の宮台康平投手を最終の7位で指名してる。これだって、キャンプでは十分話題になるぞ。ますますハンカチ王子の居場所がなくなる(笑)。

 メジャー指向が強いと言われる清宮からしても、日本ハムは好都合な球団でしたね。入団の際、移籍の時期に関して何かしらの約束事は交わされると思います。ただ現実的な話として、ピッチャーならばともかく野手で、しかも一塁か外野しかできない選手がメジャーというのはちょっと無理がありますよ。DeNAの筒香だって厳しいって言われてるんですから。FA移籍の可能性がある中田翔の後釜としたら、お釣りがくるほどの逸材ですけどね。

 勝ち組の筆頭が日ハムだとして、今回は現在のチームの勢いがそのまま反映しているような結果になった気も。ペナントで迷走したチームはドラフトでも迷走してしまった。

広島みたいに高卒の選手が中心になっているチームのほうが足腰が強い印象がある

 1位で中村を獲得した広島は2位で将来性への評価の高かった山口翔(熊本工)、下位でも俊足の永井敦士(二松学舎大付)、体格のある遠藤淳志(霞ヶ浦)と素材型の高校生を指名。育成という球団の方針が一貫している気がします。

 逆にDeNAは一貫して即戦力にこだわった印象がありますね。1位の東だけでなく、2位で社会人の神里和毅(日本生命)、4位で斎藤俊介(JX―ENEOS)、下位でも独立リーグからもふたりと、すぐに一軍で使えそうな選手を指名しています。その中で、3位の阪口皓亮(北海)、5位の桜井周斗(日大三)と左右の将来性の高い高校生投手もしっかり押さえていますからね。指名数(9人)が12球団最多になりましたが、効率の良い指名だったと思います。

 阪神は1位で清宮を外した後に安田も外し、最後はソフトバンクとの競合で馬場皐輔(仙台大)を引き当てた。でも馬場が〝外れ外れ〟まで残っていたことが幸運だよ。とにかく速いボールを投げるし、馬力があって、金本監督は鍛え甲斐があるだろう。2位の左腕、高橋遙人(亜大)も大学時代に目立った実績は残せていないけど、外れ1位で狙っていた球団があるほどの逸材。

1位から4位まで大学生と偏ったイメージがあるけど、どの選手も投手ならボールの力、野手なら足の速さといった潜在能力を持った選手たちで、監督の意向が反映された指名なんじゃないかな。

 その安田尚憲(履正社)を外れ1位で3球団と競合しクジで引き当てた千葉ロッテも幸運ということになりますね。安田が外れ1位に残っていたこと自体が幸運ですから。2位の藤岡裕大内野手(トヨタ自動車)以下は5人の社会人選手を指名。これは最下位に沈んだチームの立て直しを託された井口新監督の意向でしょうか。確かにスター選手が引退して即監督就任ですからファンの期待も大きいだろうけど、「何年かかけて強いチームを」なんて悠長なことは言ってられない世界ですからね。来季の戦いを見越して、即戦力の選手を集めたんでしょう。

 下位チームというのは、どうしてもそういう指名になってしまうもの。オリックスにしても、1位で田嶋のクジを引き当てた後、やはり即戦力と評価されていた鈴木康平(日立製作所)を2位、福田周平(NTT東日本)を3位で指名。単純に見たら大きな戦力アップだけど、毎年こんな感じの指名をしているから戦力的には結構厚みのあるチームなんだけど、なかなか安定した成績を残せない。

やっぱり広島みたいに高卒の選手が中心になっているチームのほうが足腰が強い印象がある。また、そういうチームに社会人の即戦力の選手が入った時に、意外と機能するんだよ。西武の源田がそうだったじゃない。

◆後編⇒スカウト&記者たちが本音でドラフト反省会「ソフトバンクの余裕、巨人は今を象徴している」