サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第20回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど、日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、10日にブラジル、14日にベルギーと親善試合を行なう日本代表に推薦したい国内組の選手について。今回招集されなかったが、この先、代表の戦力になる可能性を秘めた選手はまだまだいる。
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日本代表の指揮官に就任して以来、ハリルホジッチ監督は海外組を重用する傾向にある。しかし、今の日本代表の主力である海外組のほとんどは、キャリアのスタートはJリーグだった。Jリーグで何かひとつ輝きを放って海外のクラブに渡るチャンスを手にして、才能に磨きをかけていったわけだ。つまり、今回の欧州遠征メンバーに招集されていない選手でも、Jリーグには脚光を浴びていない才能ある選手はまだまだたくさんいる。
W杯ロシア大会や、その先の日本代表の未来を考えると、やっぱりJリーグの選手たちが大きく飛躍することは欠かせないし、彼らが成長することで日本代表はもっと活性化していく。そういう存在になれる選手がいないなら諦めるしかないけど、私の目には可能性を秘めた選手が多く映っている。
将来性を感じている一番手はコンサドーレ札幌の菅大輝(すが・だいき、19歳)。札幌ユース育ちの高卒1年目で、登録はFWだけど左MFや左サイドバックでもプレーしている。何がいいかと言えば、太腿。1対1で相手を剥がせるスピードがあるし、あの足に秘めたパワーは魅力が詰まっている。
今、日本代表のサイドバックは長友佑都、酒井宏樹、酒井高徳の3人で回している。だけど、彼らもJリーグにいた頃は今ほど図抜けた存在ではなかった。それを思えば、突拍子もないことをするタイプのAB型の菅が、これから大化けする可能性は十分あると考えている。
左サイドバックにはガンバ大阪の藤春廣輝(28歳)、大宮アルディージャの和田拓也(27歳)、セレッソ大阪の丸橋祐介(27歳)と、日本代表に呼ばれても不思議ではないレベルの選手はいる。だけど、彼らが本気で代表入りを目指すなら好不調の波が大きいのが課題だろう。どの選手も好調時はスーパーな存在感を見せてくれるのに、調子に乗れない時に凡人になってしまう。
右サイドバックでは横浜F・マリノスの松原健(24歳)が、身長180cmあってスケールの大きさを感じる。戦術面であまりサイドバックの攻撃参加を使わないチームにいるから目立たないけれど、違うチームならもっと脚光を浴びていても不思議じゃない。
センターバックでは今回招集されなかった植田直通(鹿島・22歳)はもちろん素晴らしいし、柏の中山雄太(20歳)、中谷進之介(21歳)のコンビも順調に成長していってもらいたい。そして今、注目しているのは札幌のCB・福森晃斗。代表クラスの左足からのフリーキックの精度があって、フィードの時もワンステップで伸びるボールが蹴れるし、いろんな種類のキックができる。日本には利き足が左のCBが少ないから、24歳の福森にはもっと成長してもらいたい。
中盤の選手はテクニック的には高いレベルにある選手が多い
また、中盤の選手はテクニック的には高いレベルにある選手が多く、横浜F・マリノスの天野純(26歳)はその代表格。だけど、日本代表を狙うには、やや淡白さがあるキャラクター。ハマらない時といい時の波が激しい印象だ。
これは足元のテクニックが高いレベルの選手に共通している部分だけど、天野と同じように淡白さが課題だったセレッソ大阪のFW・杉本健勇はそこを改善して、ガツガツしたところが出てきたことでグッと伸びてきた。天野にもそうなってもらいたい。
ボランチで期待しているのがジュビロ磐田の川辺駿(22歳)だ。視野が広くてパスセンスもあるし、運動量も豊富。中村俊輔と一緒にプレーしながら、俊輔のいいところをどんどん吸収している。どこまで伸びていくのか楽しみだ。
他にも名前を出したい選手はまだまだいる。選手たちには自分の持ち味を伸ばし、どんどん代表メンバーを突き上げてもらい、日本サッカーのレベルをもっともっと高める存在になることを期待している。
(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)
■宮澤ミシェル 1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。