浦和は相手の力を認めた上で、非常に賢いサッカーをやったと語るセルジオ越後氏

浦和レッズ、優勝おめでとう。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝は、浦和がアルヒラル(サウジアラビア)を2戦合計2-1で下し、10年ぶり2度目のアジア制覇を決めた。

アウェーの第1戦を1-1で乗り切り、迎えたホームでの第2戦は最後までヒヤヒヤする展開だったけど、終了間際にラファエル・シルバが豪快なシュートを決め、1-0でモノにした。

相手のアルヒラルは予想以上に手ごわいチームだったね。メンバーのほとんどがサウジアラビア代表で、控えにも代表クラスがズラリ。そこに強力な外国人選手がアクセントを加えている。力的には、浦和が準決勝で対戦した上海上港(中国)よりも上なんじゃないかな。

浦和はそんな相手の力を認めた上で、非常に賢いサッカーをやった。具体的に言えば、最終ラインを下げて守備のブロックをつくる。後ろに人数を割いて、粘り強く守る。求めるのは内容より結果。勝つためのサッカーではなく、負けないためのサッカーに徹し、カウンターやセットプレーなど数少ないチャンスを狙っていく。浦和はJリーグでは攻撃的なサッカーをやっているけど、それとは正反対のサッカー。ACLでは準決勝、決勝とそうした割り切ったサッカーがハマった。

試合を見ていた人のなかには、派手に攻め勝つサッカーへの期待もあったかもしれない。選手たちにもそういう気持ちはあっただろう。でも、浦和は今の戦力で優勝するためにどういうサッカーをすればいいのかを考え、それをきっちりと遂行した。結果をとことん求めるのであれば、なりふり構わず守りに徹する。この浦和の戦いぶりは日本代表にも参考になるだろう。

印象に残った選手を挙げるなら、やはり決勝ゴールを決めたラファエル・シルバ。大会を通して、彼の突破力、決定力は光った。何度もチームを救った。でも、僕は守備陣をホメたい。GK西川を中心に全員が体を張ってゴールを守った。決勝の2試合も、あれだけ攻められたら、普通は足が止まってしまうもの。それでも最後まで集中力が切れなかったからね。

クラブW杯では浦和に爪痕を残してほしい

10年前に浦和がACLで優勝したときには、ポンテ、ワシントンなど強力なブラジル人選手がいて、日本人選手も闘莉王、阿部、鈴木、小野、山田、永井、長谷部ら代表クラスがそろっていた。あのときは強いチームが優勝すべくして優勝した印象だったけど、今回のチームにそこまでの力はなかったと思う。よく優勝までたどり着いた。そういう意味で、10年前よりも喜びは大きいんじゃないかな。

次はUAEで開催されるクラブW杯。開催国枠ではなく、アジア王者として出場できるのは誇らしいこと。昨年の大会では、鹿島が決勝まで勝ち進み、レアル・マドリードと好勝負を演じたけど、浦和もなんとか爪痕を残してほしい。順当に初戦を勝てば、準決勝では欧州王者レアルと対戦する。世界のスター軍団相手にどこまで粘って守れるか。簡単なタスクではないけど、試合を見るのが今から楽しみだ。

ACL決勝の第1戦では、ビザ取得が大変なサウジに約240人もの浦和サポーターが渡航して話題になった。クラブW杯もUAE開催とはいえ、大勢のサポーターが冬のボーナスを使って応援に駆けつけるはず。浦和はぜひ決勝まで勝ち進んで、サポーターにうれしい悲鳴を上げさせてほしいね。

(構成/渡辺達也)