土壇場で優勝を逃した鹿島は、もったいないのひと言に尽きると語るセルジオ越後氏

今季のJリーグは最終節にドラマが待っていた。首位鹿島と2位川崎の勝ち点差は2。勝てば主要タイトル20冠目となる鹿島はアウェーで磐田と対戦し、痛恨のスコアレスドロー。一方、川崎はホームで大宮に5-0で大勝し、得失点差で鹿島を上回り、大逆転で悲願のJリーグ初優勝を遂げた。

僕は以前このコラムで「川崎のサポーターは優しすぎる。負けたときは浦和や鹿島のサポーターのようにブーイングしないとチームが必死にならないし、優勝は無理」と言った。でも今は、こういうカラーのチームがあってもいいのかなと。そう思わせてくれるような見事な逆転劇だった。選手もサポーターの皆さんも本当におめでとう。

実際、川崎の選手たちはシーズン終盤、鹿島に勝ち点で差をつけられても、諦めずによく戦った。今季はルヴァン杯の決勝で敗れ、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも準々決勝で浦和に大逆転負けを喫したこともあり、また無冠に終わるのかと頭をよぎった瞬間もあるだろう。

それでも、風間前監督時代からの攻撃的なサッカーを継続し、得点はリーグ最多。開幕前に大久保(FC東京)が抜けたものの、家長、阿部を補強。このふたりはボールをつなぐのもうまいし、決定力があった。さらに右サイドバックのエウシーニョ。彼が大事な試合で仕事をしてくれた。得失点差での優勝とはいえ、積極果敢な攻撃サッカーをするチームが優勝するのはリー盤戦こそうまくいかないときもあったけど、終盤は安定していた。

来季に向けては、まだまだ横綱の貫禄はないし、連覇を目指すのであれば、手をつけるべきことはある。ACLを戦うことを考えても、選手層の充実、特に、強力な外国人選手の補強は必要だと思う。Jリーグ優勝によって手にする22億円ものDAZNマネー、これをどう活用するか。新王者のお手並み拝見といきたい。

大岩監督より小笠原のほうがピッチ上で戦っている選手に与える影響力が大きい

一方、土壇場で優勝を逃した鹿島については、もったいないのひと言に尽きる。特に、最終節でベテランの小笠原を使わなかったことには疑問が残る。結果論になってしまうけど、先発じゃなくても、せめて後半からでも起用すべきだった。磐田戦の後半に入ると、経験豊富なはずの鹿島の選手たちの顔から冷静さが消えていた。バタバタして何度もチャンスを潰した。

小笠原は味方だけじゃなく、相手にも影響を与える選手。そういう選手をベンチに置いておく采配はどうだったのか。今季途中に大岩監督が就任してから、小笠原の出番は減った。でも、失礼な言い方だけど、大岩監督より小笠原のほうがピッチ上で戦っている選手に与える影響力が大きい。鹿島の主将は昌子だけど、あくまでボスは小笠原なんだ。

ちなみに、それは川崎にもいえることで、ACLの浦和との第2戦、前半に退場者を出した際、鬼木監督は(中村)憲剛を下げて、逆転負けを喫した。鬼木監督はあの試合で、憲剛の重要性を再認識したんじゃないかな。川崎の主将は小林。彼も今は風格が出てきた。でも、まだまだチームは憲剛でまとまる。それが鹿島では小笠原だったということ。大岩監督にとっては高い授業料になってしまったね。

(構成/渡辺達也)