2017年にブレイクし、最も日本ラグビー界を盛り上げた選手といえば、FL/LO姫野和樹(23歳)だ。19年に日本で開催されるワールドカップでも活躍が期待される若手の有望株で、明るい性格とルックスのよさも相まって人気上昇中だ。
小学校まではサッカーなどをやっていた姫野は、春日丘(現・中部大学春日丘)高校で楕円(だえん)球と出会い、1年時から花園に出場。その突破力で注目を集めると、3年時にはひとつ上のカテゴリーであるU-20日本代表候補にも選出された。帝京大学に進学後は、2年生でLOとして定位置を確保し、大学選手権の8連覇に貢献。しかし、ケガなどの影響もあり、SO/CTB松田力也、LO飯野晃司といった同期の陰に隠れていた選手だった。
その後、愛知県出身の姫野は17年にトヨタ自動車のラグビー部に入部。するとそこで、運命の出会いが待っていた。ワールドカップを控えてラグビー部の強化に本気になったトヨタ自動車が、07年に南アフリカ代表をワールドカップ優勝に導いた、ジェイク・ホワイト氏を監督に招聘(しょうへい)したのだ。
エディー・ジョーンズ元日本代表HCと親友で、「いろいろと相談した」というホワイト監督は、昨年5月に1週間ほどチームを視察。その際、ルーキーで1試合も公式戦に出ていなかった姫野を、いきなりキャプテンに指名する。
「姫野は(帝京大学で)優勝を経験している。日本代表になれるし、ワールドカップで必ずプレーすると思っている。私の仕事のひとつは、姫野に責任感とキャプテンシーを与え、インターナショナルな選手に育てることだ」(ホワイト監督)
世界的名将が背中を押したこともあり、「キャプテンとしてプレーで引っ張らないといけない。トップリーグで新人賞を獲りたい!」と意気込んでいた姫野は、開幕戦からFLとしてスターターに名を連ねた。開幕から12節まですべてに出場(11試合に先発)し、6トライを挙げる大車輪の活躍を見せ、昨年10月に「夢だった」という日本代表に初選出された。
ジョセフHCが姫野を選んだ理由
日本代表のジェイミー・ジョセフHCは、姫野を選んだ理由について「経験はまだまだだが、可能性、伸びしろがある。フィジカルも強く、80分間を通して元気にプレーしているのを見ていたので、一緒にやっていきたいと思った」と説明した。
姫野は、代表初キャップとなった11月のオーストラリア代表戦で、強烈なタックルを受けながらも体をうまく回転させてトライを挙げた。続くトンガ代表戦、フランス代表戦にも先発し、持ち前の強気のステップとラン、運動量で抜群の存在感を見せ、見事に指揮官の期待に応えた。
そして姫野は今年、スーパーラグビー参入3年目で“トップ5入り”を目指す、日本のサンウルブズでもプレーする。「まだまだですが、自分の立場が変わったことが成長にはつながっていると思います。(大学と違い、試合で)すごく疲労は感じるけど、このままワールドカップに向けて全力でチャレンジしたいです」と、先を見据えた。
若さとポテンシャルを武器に、姫野はこのまま19年まで走り続ける。
(取材・文・撮影/斉藤健仁)