1月8日に2018年初勝利を挙げるなど、好スタートを切った藤田。このまま勝利を重ね、GⅠレースでも騎乗を依頼されるほどの騎手になれるか。 ※写真はイメージです。 1月8日に2018年初勝利を挙げるなど、好スタートを切った藤田。このまま勝利を重ね、GⅠレースでも騎乗を依頼されるほどの騎手になれるか。 ※写真はイメージです。

中央競馬(JRA)の新年3日目のレース開催日となった1月8日、中山競馬第7レースは「1着同着」という“おめでたい”決着となった。その2頭の勝ち馬のうち、ビックリシタナモーに騎乗していたのが、JRA唯一の女性騎手である藤田菜七子(20歳)だ。

成人の日に、自らの成人祝いとなる勝利を挙げた藤田。18歳でデビューを果たした際は、その容姿も相まって注目を集めた。それだけで旬が続くほど甘くはないのがプロの世界だが、2年目となる昨年はデビュー年の倍以上となる14勝を挙げ、JRA女性騎手の年間最多勝記録を更新。今年もすでに2勝(1月22日時点)して通算勝利数を24勝(地方含む)まで伸ばし、ただの“アイドル騎手”ではないことを結果で示している。

「特に記録的なものは考えず、ひとつひとつ目の前の勝利を追った結果ですが、これも女性騎手として道をつくった先輩方がいたからこそです。注目されているからこそ、まだまだステップアップが必要だと思っています」

そのために、アイドルとして騒がれていたなかでもトレーニングを欠かさず、しっかりと成績に反映させてきた。

「レースのリプレイは何度も見ますし、師匠の根本先生(調教師の根本康広氏)からもいろいろご指導いただいています。それに加えて、去年からはパーソナルトレーナーに見てもらって、フィジカルの改造にも取り組んでいます。私は右利きなので、傾いたり、右回りと左回りで追う力が違っていたりすることもあったんですが、最近はバランスがよくなってきました」

フィジカルが向上することで馬上での引き出しが増え、それが自信につながる。その好循環が、ここまではしっかり結果に表れている。

「デビュー当初は、馬に負担をかけないよう、『いかにリラックスさせるか』を考えていました。基本的には、今もその点は変わらないのですが、自分が判断して動くことや、ひと呼吸置くことも勝つためには必要なので、それも常に心がけています」

「乗れる減量騎手」と期待

その姿勢は、厩舎関係者や馬主の信頼を得ることにもつながり、より力のある馬への騎乗依頼が増えてきている。藤田が今年2勝目を挙げたときに乗っていたクルークハイトは、大手クラブ法人馬主のキャロットファームが所有しており、ダービー馬のロジユニヴァースなど、多くの“重賞勝ち馬”を近親に持つ良血馬だ。

経験の浅い騎手や女性騎手には、(レースによっては)乗る馬の負担重量が減量される制度もあるが、そのなかでも藤田は「乗れる減量騎手」と期待を寄せられている。

「女性騎手ということで恵まれている点があることも理解しています。それだけに、ひとりの騎手として期待していただけるのはうれしいですし、やりがいがあります」

最近のレース終了後には、騎乗フォームについて「あれ、菜七子ちゃんだったの!?」と関係者から言われることも多くなり、それが何よりうれしいという。

「ほかの騎手と見分けがつかない、ということですから、それだけ『いっぱし』に近づけたんだと受け止めています」

もちろん、現状に満足はしていない。GⅠに騎乗できる「31勝以上」も視界に入っているが、今年はそれすらも通過点になるかもしれない。

(取材・文/土屋真光)