今や“絶滅危惧種”と呼ばれるサブマリン。地面すれすれの位置から繰り出される変幻自在の投球は、MLB公式サイトで「ゾンビが地から這い上がってくるようなボール」と早くも注目の的だ。
国際大会でも抜群の安定感を見せた「ジャパンのジョーカー」は今、確かな手応えを持って海を渡る!
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―パドレス入団、おめでとうございます。牧田さんは以前からメジャー志向だったんですか?
牧田 プロに入った当初はまったくありませんでした。メジャーどころか、プロで通用する自信もなかったので。でもその後、日米野球やプレミア12などの国際大会を経験することによって、メジャーへの気持ちがどんどん芽生えてきました。
―特に昨年3月のWBCでの経験が決定的だったとか。
牧田 はい、特に(2次ラウンドの)オランダ戦ですね。バリバリのメジャーリーガーであるボガーツやシモンズらと対戦して、自分のボールが通用する手応えを感じたのが大きかったです。
―その手応えとは具体的にはどんなことでしょう。
牧田 日頃、160キロを超えるボールをバンバン打ち返しているメジャーの打者たちが、僕の130キロそこそこの遅い球に詰まったり、打ちあぐんだりしていて。あ、これはできるんじゃないかな、と感じました。
―WBCでは牧田投手の下手投げの前に、まったくタイミングが合わない打者が多かったように感じました。
牧田 これはあくまで僕の考えなんですけど、打者ってものすごく速い球を空振りするよりも、130キロくらいのボール、それこそスタンドで見ているファンの方たちが「なんであんなに遅い球が打てないんだ!」と首をかしげるようなボールを打ち損じるのが一番悔しいと思うんです。日本の選手ですらそうなんですから、メジャーの打者はなおさらじゃないかと。
いつも必死なんですよ(笑)
―打者も頭に血が上ると、よけい牧田投手の術中にはまっていくという。
牧田 日本の野球だとバッターって追い込まれるとカットなどで粘るじゃないですか。それでピッチャーの集中力を切らせて、甘いボールを狙ったりするんですが、メジャーでは追い込まれても、お構いなしにフルスイングしてくる。
そういう意味では、打たせて取る僕のピッチングスタイルは、ひょっとしたら日本よりむしろ向こうのほうがマッチしているかもしれないのかなと。
―マウンド上では常に表情を変えず、変幻自在の投球でいとも簡単に打者を抑えているように見えます。
牧田 後輩とかにもよく言われますが、投げてる僕からしたらいつも必死なんですよ(笑)。ただやっぱり、普通のピッチャーが140キロ、150キロ投げるなかで、なんで130キロが打てないんだよ、というのがあるんだと思います。でも、それが僕の持ち味ですから。
―プロで生き残ってきた証あかしでもある。
牧田 そうですね。
◆『週刊プレイボーイ』7号(1月28日発売)「牧田和久(サンディエゴ・パドレス)インタビュー」ではアンダースローの魅力なども告白。そちらもお読みください!
(取材・文/木村公一 撮影/小池義弘)
●牧田和久(まきた・かずひさ) 1984年生まれ、静岡県出身。静岡・静清工業高校、平成国際大学、社会人の日本通運を経て、2011年にドラフト2位で西武入団。西武では7シーズンで通算53勝49敗25セーブ、防御率2.83。