シーズン前半の成績不振による解任論が、ひとまず落ち着いたジダン監督。しかし、チームに残されたCLのタイトル獲得までは気の抜けない戦いが続く。

やはり、サッカーは結果がすべてなのか? 2月半ばまで「解任目前」といわれていたレアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督への批判が、わずか1勝で収束したのを目の当たりにすると、そのことをあらためて痛感させられる。

そもそも、2016年1月にレアル・マドリードの監督に就任したジダンの歩みは順風満帆だった。

ラファエル・ベニテス前監督が崩壊させたチームをあっという間に立て直し、いきなりチャンピオンズリーグ(CL)優勝を達成。その後も、鹿島アントラーズを破ってクラブワールドカップを制し、さらに前人未踏のCL連覇とクラブワールドカップ連覇を成し遂げるなど、2シーズンで計8つのメジャータイトルを手にしたのである。

これほどの好成績を残すことは、トップチームを率いた経験がない新人監督としては“極めて異例”だ。普段はビッグクラブに厳しい地元スペインのメディアも、もろ手を挙げてジダンの監督としての才能を絶賛。特に、クリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルらが名を連ねる“スター軍団”をまとめ、エゴによる内紛が日常茶飯事だったチームを団結させたことは「元名選手ならではの手腕だ」と高い評価を受けた。

ところが、就任3年目の今季はその評価が一変する。エースのロナウドの不調に主力選手のケガが重なり、リーグ序盤から格下のチームに敗れるなど不振を極めた。名誉挽回を期して臨んだ、昨年12月のバルセロナとの直接対決“エル・クラシコ”でも完敗し、それを機に戦術の甘さが指摘されるなど、一気に逆風が吹き始めたのだ。

今季のリーグ優勝の可能性はほぼ消滅し、国内カップ戦も敗退したことで「ジダンが生き残るためにはCL3連覇達成しかない」という状況に追い込まれた。そんな“崖っぷち”で迎えた、2月14日のCLの決勝トーナメント1回戦。フランスの強豪であるパリ・サンジェルマンとの第1戦は、ジダンの命運を分ける大一番だった。

しかし、負ければジダンの即解任もありえたホームでの試合で、チームは今季最高のパフォーマンスを見せる。先制を許しながら見事な逆転勝利を収め、批判を封じ込めることに成功。その後も国内リーグで連勝し、現在は危機的状況から脱している。

采配がハマり始めたことと、ロナウドの復調が流れを変えた。シーズン前半のエースはリーグ戦で4得点と“大スランプ”に陥っていたが、1月21日の試合で2得点を挙げたのを皮切りに、2月24日のアラベス戦までに出場したリーグ6試合で10ゴールを量産。24日の試合では、不振が続くカリム・ベンゼマにPKを譲る粋な計らいで、チームの雰囲気も一変させた。

ただし、ひとつの勝敗で評価が激変するサッカー界の厳しさは、ジダン本人が最も理解している。運命のパリ戦に勝利した直後も「まだ第2戦が残っている。私は働き続け、今日のような試合を続けるしかない」と、兜(かぶと)の緒を締めることを忘れなかった。

再び逆風が吹くことはあるのか。3月6日に予定されているパリとのCL第2戦も、予断を許さない状況に変わりはなさそうだ。

(取材・文/中山 淳 写真/ゲッティ イメージズ)