「Jリーグでうまいと思う選手が減ったのには一長一短ある」と語るキム・ボギョン選手

誕生25周年のJリーグ、今季も多くの韓国人選手が“助っ人”としてプレーしているが、彼らの目に日本サッカーはどう映っているのか?

ロシアW杯開幕まで4ヵ月を切った今、『週刊プレイボーイ』12号(3月5日発売)では他国リーグ、そして韓国代表でも実績を残している大物3人にJリーグの魅力と弱点を聞いた。

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まず最初に話を聞いたのは、柏レイソルに所属するキム・ボギョンだ。

2010年に大分トリニータでプロキャリアをスタートし、12年途中から3年半は英プレミアリーグのカーディフなどで活躍。切れないスタミナ、中盤で動き回ってチャンスをつくり出すスタイルから“第2のパク・チソン”と称され、韓国代表でも中核を担った。

16年、17年には母国Kリーグの強豪、全北現代でもプレー。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制してクラブW杯にも出場した歴戦のツワモノである。

―昨季途中にJリーグに復帰しましたが、その理由は?

キム・ボギョン(以下、キム) Jリーグでプロ生活を始めたこともあり、チャンスがあればまた日本でプレーしたいと考えていました。実際に柏からオファーが来て、思ったよりも時期が早まりました。

過去、いくつかのJリーグのクラブでプレーしましたが、整った環境、熱いサポーターも好き。戻ってくるにあたっては、プレッシャーよりも期待のほうが大きかったですね。

―具体的にJリーグの良さはどこにありますか?

キム アジアのリーグの中では、欧州のリーグに近いと思います。サッカーに関するインフラは、Jリーグが誇れるブランドになっていると思います。

また、Jリーグでプレーする選手たちは、技術面を最も重要視していますよね。基本的にすべてのチームのレベルが高く、技術を前面に押し出したサッカーをするので、ファンもそうした部分に関心が高いと感じます。

―以前と今で何か違いは?

キム 日本の選手もどんどん海外でプレーするようになったせいか、現在のJリーグには「うまい」と感じる選手が少なくなった印象がありますね。私が日本に来たばかりの頃は、能力の高い選手がもっと多かった。

ただ、日本の選手が海外に出るということは、その分、ほかの選手に出場チャンスが増え、実戦で経験を積むことができるので、Jリーグ全体のレベルは上がると思います。そこに関しては一長一短なのかなと。

―プレミアリーグを経験した上で、Jリーグに足りないものはなんでしょうか?

キム 正直、技術ではプレミアリーグにも劣るとは感じませんよ。Jリーグの選手の技術は十分に通用します。

しかしながら、やはり身体的な部分で差がある。欧州の選手たちはフィジカルが強い。それにメンタルもタフ。Jリーグに求められているのは、フィジカルやメンタル面の強化ではないでしょうか。

韓国でのJリーグに対する評価は?

―Kリーグもかなりタフだと聞きます。

キム JリーグとKリーグのいい部分が合わされば、相当レベルの高いリーグができるといつも思っているんですよ。

Kリーグは闘志や精神力が強い選手が多いので、そこに技術が加われば強くなる。Jリーグはその逆で、技術が優れているので、フィジカルとメンタル面が強化されれば、より良くなる。日韓がお互いにいい部分を吸収し、発展していければいいですよね。

―韓国ではJリーグはどんな評価を?

キム 細かくて正確なパス回しからのビルドアップが優れているチームが多い、ボールの扱いがとてもうまいといわれています。私も全北現代在籍時、ACLでJリーグのクラブと対戦すると、とてもやりにくくてイヤでした。

―では、今のJリーグで「うまいな」と思う選手はいますか?

キム 川崎フロンターレのMF中村憲剛選手は本当に技術が高い。あとは同じ川崎のMF大島僚太選手もうまいと思いました。自分もMFなので、同じポジションの選手に目がいきます。やはり、Jリーグはしっかりと攻撃を組み立てられる選手が多いですよ。

―今年も多くの韓国人選手がJリーグでプレーしていますが、その理由は?

キム 理由は大きくふたつあると私は考えます。ひとつ目は、サッカー選手なら海外でプレーしたいという欲求。ふたつ目はKリーグとは違う環境でサッカーをしたいということです。先ほども言いましたが、Jリーグはサッカーに専念するための環境が整っていて、お客さんもたくさん入る。やりがいを感じられるわけです。

―でも、中国や中東のほうが待遇面はよいですよね?

キム 中東でプレーしている韓国の選手にお金の話を聞くと、「待遇はかなりいい」と言いますね。

でも、ACLを勝ち抜けるようなレベルが高いチームはいくつかだけで、全体的に見ればレベルは高くないそうです。確かにお金も重要ですが、サッカー選手としての未来を考えたとき、中東や中国よりも、自分はJリーグでプレーするほうが成長できると感じますね。

★『週刊プレイボーイ』12号(3月5日発売)「韓国代表Jリーガーがホンネで語る日本サッカーの○と×」では、チャン・ヒョンス選手(FC東京)、チョン・ウヨン選手(ヴィッセル神戸)にも直撃!

(取材・文・撮影/金明昱 写真/藤田真郷)

●キム・ボギョン1989年生まれ。2010年、大学を中退して大分(J2)に加入したMF。C大阪を経て12年から15年半ばまでカーディフ(英1部)、ウィガン(英2部)で活躍。15年に松本(当時J1)、16年、17年に全北現代(韓国)でプレーし、昨季途中より柏に入団。身長178cm、体重73kg、韓国代表36試合4得点