2015年の野球賭博問題がトラウマに(写真は翌年の開幕戦で謝罪する巨人オーナーと高橋監督)。

NPBと12球団が「プロ野球くじ」の導入を検討。早ければ2019年から実施へーー。2月下旬、一斉にそんな報道が流れた。

「最初は一般紙のスクープ。現場は“追っかけ記事”の取材でてんてこ舞いでした。もし決まれば1千億円以上の収益金が見込まれる巨大事業です」(スポーツ紙デスク)

ただ、取材を進めたNPB担当記者に言わせると、実情はそれほど盛り上がっていないのだという。

「まず開始時期。現実的には来年はとても間に合わず、やるとしても東京五輪後が有力です。そして、くじのルールも微妙。サッカーくじでいえば『toto』のように購入者が勝敗を予想するのではなく、『BIG』のような非予想式、つまりコンピューターがランダムに決めたものを買う方式が濃厚なんです」

要するに、野球をネタにした単なる宝くじだ。しかも、BIGはJリーグの試合を見ながら当たり外れに一喜一憂する楽しみがあるが「プロ野球くじ」はそれすらなさそうだという。

「某球団幹部の話によると、結果が出るまで自分の買ったくじがどの勝敗にベットされているかわからない方式が検討されているようです。その日の全試合が終了した後に『当たりはこの番号でした』ということが発表されるという…」(NPB担当記者)

プロ野球ファンにとってはあまりにもドッチラケなルール。なぜ、そこまで球界側は腰が引けているのか? スポーツ紙デスクが言う。

「プロ野球側としても、もちろんくじの収益は欲しい。でも、それ以上にトラブルの種をつくりたくないんです。勝敗の予想が絡めば、そこには八百長防止という重い課題がのしかかる。わずか2年半前に野球賭博問題で球界に激震が走ったこともあり、本音ではくじの実現にすら消極的、ましてや野球の勝敗で射幸心をあおる形は絶対に反対というのが基本的な立場ですよ」

実際、2015年に超党派のスポーツ議員連盟から野球くじの創設を提案された際にプロ野球側は反対している。

「今回は議連からあらためて要請があったため、NPB側がしぶしぶ議題にのせたというのが実情。具体的な時期や方式の決定、そして収益がスポーツ振興のどこにどう割り振られるのかなど、まだまだ難題山積です」(デスク)

残念ながら、どう転んでもファンにとって面白いものにはなりそうもない。

(写真/共同通信社)