品定めを目論(もくろ)んでいた向きからすれば、一本目の刀は「思ったほどでは」というのが正直なところだろう。
2月24日、大谷翔平はブルワーズとのオープン戦でまずピッチャーとしてデビューした。ふたつの三振を奪ったものの、ホームランを打たれるなど2失点。最速156キロのストレートは指にかかりすぎたり抜けたりと、メジャー球を操ることはできなかった。
しかし、大谷にとってこれは想定内だ。これまでも彼はオフの間に鍛えた体と磨いた技術を、開幕までに「音合わせ」(大谷)してきた。まして今年はボールやマウンドなど、これまで定数だった値が変動している。それだけ音合わせの作業は煩雑になり、時間がかかるのも当然だ。
ピッチャーとしては伸びしろだらけの大谷だが、それでもメジャーリーガーを驚かせるだけのスペックは持ち合わせている。大谷は言った。
「1回目の登板からビシビシ決まることはないので、例年通りかなという感じです」
誰よりも冷静で客観的なのは、大谷自身だったようだ。
(取材・文/石田雄太 写真/共同通信社)