マリナーズに復帰することが決まったイチロー(44歳)。年俸はメジャー最低保証額の54万5000ドル(約5780万円)+出来高になるとみられる。背番号は「51」が濃厚

2度目は、今までにない難しいオフとなった。

今年のプレーができるかどうかさえわからないなかでの自主トレーニング。ほっともっとフィールド神戸で、ビックリするほど遠くまでボールを投げ、とんでもない飛距離の打球を飛ばすイチローの姿には、どこか悲壮感が漂って……いや、そんな悲壮感など微塵(みじん)も感じさせなかったから、この男はすごいと改めて痛感させられる。

過去に例のない、動きの遅かったFA戦線にあって、イチローは44歳という年齢がネックになると言われ続けた。それでも己のパフォーマンスを信じ、一切ブレることなく、メジャーからのオファーを待ち続けた。

そんなイチローのプライドを感じたのは3月になって神戸での練習の中身が変わったときのことだ。2月までは引っ張り一本だったバッティングに流し打ちのメニューを加えた。ひとりで練習しながらも3月という時期に思いをはせ、実戦のイメージを作っていたのである。

イチローの準備とは、つまりはそういうことなのだ。

(取材・文/石田雄太  写真/共同通信社)