ロシアに行くんだとアピールできた選手がひとりも見当たらないと語るセルジオ越後氏。

欧州遠征の収穫はゼロだ。

若手中心のマリにやっと引き分け、ウクライナには力負け。この2試合でよかった選手はと聞かれても、誰も名前が浮かんでこない。ロシアW杯メンバー23人が見えてくるどころか、ハリルホジッチ監督も誰を選べばいいのかわからなくなってしまったんじゃないかな。

俺はロシアに行くんだとアピールできた選手がひとりも見当たらない。逆に相手からハングリーさが伝わってきた。特にウクライナはハリルホジッチ監督が言う“デュエル”で上回るのはもちろん、展開力、試合運びもよかった。それでもW杯に出場できない国だから日本も意地を見せたかったけど、どうにもできなかったね。

日本はワントップに大迫、杉本、小林を起用したけど、ボールを追いかけるだけで、ポストプレーをしても、サイドから上がってくる選手がいないから前線で孤立した。また、ボランチにゲームをつくれる、もしくはドリブルでボールを運べる選手がいないのも厳しかった。今回は長谷部のミスが目立ったね。代表復帰を果たして期待された本田も守備に追われることが多かったとはいえ、ボールを下げてばかりで、前に行こうとした場面では簡単に相手に潰された。所属クラブで調子を上げていた原口、宇佐美もパッとせず、ドイツ2部はこんなものなのかという印象を残してしまった。

初招集ながらマリ戦で途中出場して同点ゴールを決めたのは中島。唯一結果を出した選手だ。でも、続くウクライナ戦でも出場時間はわずか。これでは評価が難しい。ハリルホジッチ監督はなぜ彼を先発で使わなかったのか。

W杯本番まであと2ヵ月強。最終ラインは吉田、酒井宏が戻れば改善は見込める。ただ、攻撃陣はそうはいかない。香川、清武、乾、岡崎らが戻っても劇的によくなることはないだろう。今回選ばれたメンバーとの力の差がそれほどあるとは思えないからだ。激戦といえば激戦だけど、チームの攻撃の核となる選手が見当たらない。それが今の日本の現状だ。

そして、それ以上に気になるのが、どういうサッカーでW杯本番に臨んで、どう勝ち点を奪うのか、いまだにはっきり見えてこないこと。それが原因かどうかわからないけど、選手と監督の間に溝ができているように感じる。選手からは監督批判ともとれるコメントが聞かれるようになった。

昨年8月にW杯出場を決めて以降、日本は低調な試合を続けている。選手たちは明らかに自信をなくしている。ウクライナ戦後の選手たちは下を向いて、不安で仕方がないといった表情をしていた。欧州や南米なら監督が更迭されてもおかしくない状況。でも、日本サッカー協会にそんな決断はできないし、このままハリルホジッチ監督でW杯本番に臨むだろう。

今からできることはチームの雰囲気を変えること。これからW杯本番までにある強化試合はW杯メンバー発表前の5月30日のガーナ戦、そして開幕直前に行なうスイス戦、パラグアイ戦の計3試合。いずれも相手は格上で、3連敗で本番を迎える可能性も十分ある。ならば、むちゃを承知でガーナ戦前にもう1試合組めないだろうか。それも強豪国じゃなく勝ちを計算できる相手でいい。今の日本は1試合でも多く試合をして、チームをひとつにまとめることが必要。それほど深刻な事態に陥っていると僕は思う。

(構成/渡辺達也)