首をひねりたくなる補強が目立つと語るセルジオ越後氏。

昨季アジア王者の浦和が苦しんでいる。リーグ第5節終了時点で勝ち星がなく、早くも堀監督を解任した。

不振の理由はひとつではないけど、今年1月の始動直後にラファエル・シルバを中国のチームに引き抜かれたのが大きい。昨季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)優勝の立役者であり、個の力で局面を打開でき、得点もアシストもできる彼が抜けたことで、もうひとりの得点源である興梠(こうろき)が前線で孤立。チームとしてどうやって点を取るのか、今は攻撃の形が見えない。

堀監督は昨季途中にコーチから監督に昇格。低迷していたチームを立て直し、10年ぶりのACL優勝を達成した功労者だ。でも、元々"つなぎ"役だったわけで、昨季もACLこそ制したものの、リーグ戦、天皇杯での戦いぶりはパッとしなかった。優勝候補の一角が開幕から5試合未勝利では解任もやむをえない。浦和の判断はプロのクラブとして当然だ。

ただし、ほとんどの浦和サポーターは、不振の責任が堀監督だけにあるわけではないことに気づいているし、誰も納得していないだろうね。浦和の問題はやはりフロントにある。

ここ数年、毎年のように他チームの主力、特に若手選手を複数獲得しているけど、結局、交代も含めて試合に出ているのは同じメンバーばかり。縄張りができているというか、チームがマンネリ化している。どういう意図があって獲得したのか、本気で戦力になると思って獲得したのかと首をひねりたくなる補強が目立つ。

今季もリオ五輪代表のDF岩波を獲ったけど、ほとんど出番がない。監督が代わっても同じことを繰り返しているのだから、これはフロントの中途半端な仕事の結果だと思うし、責任もそこにある。

堀監督の後任人事にしても、たとえ暫定とはいえ、トップチームでの監督経験のないユースの監督(大槻毅氏)に任せるなんて、優勝を狙うクラブとしてはありえないこと。果たして、選手たちをコントロールできるのか。行き当たりばったり、その場しのぎにもほどがある。

フロントは「なるべく早く、経験のある人にやってもらいたい」と言うけど、現在、フリーの指導者はたくさんいるし、今までにも動く時間はあったはず。そもそも緊急事態に備えて候補者のリストくらいは用意しておくべきだ。

シーズンはまだ始まったばかり。選手の顔ぶれを見れば、J2降格の心配をする必要はない。ただ、浦和のような人気クラブが目指すところはそこじゃない。優勝は無理でも、少なくともACL出場権獲得(4位以内)は目指さないといけない。Jリーグ全体の盛り上がりという面で考えても、浦和には巻き返してもらわないと困る。

そのために、納得感のある新監督を連れてくるのはもちろん大事なこと。でも、僕はさらなる外国人選手の補強も必要だと思う。外国人はあくまで"助っ人"。他チームに差をつけるための大事な切り札なのに、ズラタンやマルティノスなどスタメンで使えない選手を抱える意味がわからない。

オーストラリア代表のナバウトを獲得したとはいえ実力は未知数。まずはラファエル・シルバ級のFWを獲得するのが、一番手っ取り早い。浦和のフロントが本気で巻き返すのか、それとも今まで通りの中途半端な仕事を続けるのか、今後の動きに注目したい。

(構成/渡辺達也)