観客54万人を動員する盛り上がりをみせた春の甲子園。 観客54万人を動員する盛り上がりをみせた春の甲子園。

「史上最強」との前評判も高かった大本命、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた今年の“センバツ”春の甲子園。

結果的にその評判通り、高校野球史にその名を刻む史上3校目の大会連覇となり、初導入された話題のタイブレークこそ実現せずに終わったものの逆転勝ちや延長戦、サヨナラ本塁打と熱戦、接戦の連続に平成以降、最多となる観客54万人を動員する盛り上がり。

早くも次は、夏にやってくるメモリアルな第100回大会を見据え、大阪桐蔭の強さは本物か、敗れ去ったライバル校の本音は――現場での取材を終えた恒例の座談会メンバーが大会を総括!

A:スポーツ紙アマチュア担当記者 B:高校野球ライター C:高校野球専門誌編集者

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 ちょっとハラハラはしたものの、終わってみれば…という感じの大阪桐蔭の優勝だったな。

 えっ? ハラハラするようなこと何かありました? サヨナラ本塁打とか大逆転とかドラマチックな展開が多かったからそう見えるかもしれませんけど、実は1回戦から決勝戦まで、勝敗の面ではいわゆる〝波乱〟と言えるような試合がひとつもなかった。大阪桐蔭を筆頭に前評判の高かったチームがそのまま勝ち上がり、これだけ“順当”に終わった大会って、僕はちょっと記憶にないですよ。

東邦(愛知)や日大三(東京)のように「優勝候補」に挙げられながら早い段階で敗れ去ったチームもありましたが「この試合は(勝敗が)わからんな」という対戦相手でしたからね。そういう意味では、確かに「終わってみれば」ということになりますけど。

 いや、でも僕は組み合わせ抽選が終わった時点で舌打ちしましたよ。大本命の大阪桐蔭が優勝争いの中心になることは間違いないとして、その“対抗馬”となりうるチームがみんな(トーナメントの)同じ山に集まってしまった。智辯和歌山、東海大相模(神奈川)、創成館(長崎)、日本航空石川、明徳義塾(高知)、静岡…この中で大阪桐蔭と対戦できるのは1チームだけ。なんだか挑戦者決定戦みたいな図式になってしまいました。

 打倒・大阪桐蔭を掲げていた東海大相模や明徳義塾、昨秋の明治神宮大会で倒している創成館あたりとぶつかったら、どんな試合になったか見てみたかったし、そういうチームが柔道や空手の5人掛けみたいに次々に大阪桐蔭に挑んでいくような山になっていたら、結果的に大阪桐蔭が優勝したとしてももっと苦しんでいたでしょうね。甲子園にもシード制導入を提言しましょうか?(笑)

 それは絶対に採用されないな(笑)。まぁ大阪桐蔭の西谷浩一監督も選手たちも「楽だった」という気持ちは全然ないだろうけど、結果的に有利な展開になったことは間違いない。“対抗馬”の潰し合いを高みの見物ができて、同じ山で前評判の高い東邦や日大三は当たる前にコケてくれたんだからな。

春夏連覇を狙った昨夏の甲子園で運に見離されたような負け方(3回戦・仙台育英戦。9回二死から内野ゴロで一塁手がベースを踏み損ねて走者を生かし逆転サヨナラ負け)をしているから、その分、“行って来い”でこの春は神様に運をもらったってことかね。

 この組み合わせは幸運以外の何物でもないですが、やっぱり今年の大阪桐蔭は強いですよ。「スター軍団」というイメージが前面に出ますが、何より負けない野球をやっている。競り合いに強くて、なおかつ相手が崩れたらそこに一気につけ込んで一方的な試合にしてしまうんです。

例えば、準々決勝の花巻東(岩手)戦は19-0という一方的なスコアがクローズアップされますが、花巻東にも勝機はあったんです。1回表の立ち上がり、足を絡めた攻撃でチャンスを掴みました。ここで先制点を挙げていたら、初戦で強打の東邦打線を手玉に取った先発左腕・田中大樹に対して大阪桐蔭はイヤなイメージを持っていたでしょうから、ちょっと慌てたはずなんです。

でも、走塁ミスでチャンスを潰すと、逆に大阪桐蔭が序盤の集中打で2回までに9-0と一気に試合を決めてしまった。そこから先はもう打者も投手も選手の展覧会みたいなものでしたね。

西谷監督が一番信頼していたのは“二刀流”の根尾

 大阪桐蔭相手にミスをしたら絶対に勝てませんよ。まして、先に点を取られて追いかける展開になったら、逆転するのは至難の業です。少しずつ点差を広げていくような安定感のある試合をさせたら絶対的な強さがありますから。かといってノーガードの打撃戦を挑んでも、あれだけタレントを揃えた打線ですから力負けします。

倒すとすれば、こちらが先に点を取って終盤まで踏ん張ってリードを守っていければ、さすがにちょっとバタバタし始める。昨秋の創成館戦がそうでした。だから今大会、唯一の負けパターンが延長12回にサヨナラ勝ちした準決勝の三重戦だったんです。

 あの試合も8回までなんとか封じ込めてきた三重の定本拓真投手が9回裏の先頭打者・根尾(昴、あきら)を四球で出塁させてしまいました。あの瞬間、球場全体に「(逆転が)あるぞ」という空気が漂いましたからね。バント失敗で一度は空気が変わりかけましたが、そこから下位打線の連続ヒットで同点に追い付いたのは底力としか言いようがない。

延長に入ってからは、三重にはもう勝つイメージが湧きませんでした。タイブレークまでもつれたらまた展開が変わったかもしれませんが、それでもやっぱり後攻の大阪桐蔭が有利だったでしょう。

 個人的には、せっかく導入されたタイブレークを一度見たかったけどな。でも、そこでもし大阪桐蔭が負けるような波乱があったりしたら、また導入の是非が問われることになったんだろうな(笑)。

 投手陣に関しては、柿木(かきぎ)蓮、横川凱(かい)という左右の二本柱を擁したものの、この春の時点で西谷監督が一番信頼していたのは“二刀流”の根尾でしたね。3回戦で当たった明秀日立(茨城)は、総合力では智辯和歌山や東海大相模に劣りますが不気味な存在だったと思います。そこに初戦で好投したエースの柿木ではなく、根尾を先発に持っていった。

準決勝の三重戦も先制点は取られましたが、そんなに出来が悪かったわけではない柿木を4回で諦め、リリーフで投入している。ズルズルと追加点を取られる展開を嫌ったんだと思います。ただ、この準決勝で100球近く投げた根尾を翌日の決勝戦も頭(先発)で行ったのには驚きました。連日の大逆転で勝ち上がってきた智辯和歌山の勢いをまず食い止めたかったということでしょうか。

公式戦の連投は初だったようだし、当然、継投は考えていたと思いますが、そこで完投してしまうのも根尾のポテンシャルの高さなんでしょうね。

 見方を変えれば、柿木と横川に不安があったんだろう。並の強豪チームなら、あのレベルのピッチャーがひとりでもいたら、その年は勝っても負けてもそいつと心中だよ。でも春夏連覇を義務づけられているようなチームだから、絶対に失敗が許されない。まして昨秋の明治神宮大会で痛い思いをしているから“万全の上に万全”みたいな野球をやろうとしていたように見えた。

大会中、西谷監督が「柿木は丁寧に投げようとしすぎている。もっと荒々しさみたいなものがほしい」と話していたけど、そうさせてしまう空気を自分自身が作っている気もする。そういう高いレベルの物足りなさが根尾の起用に繋がっていたんだろうな。

◆この対談の続き、後編は明日配信予定! 夏の100回大会で大阪桐蔭の連覇を阻むのは…?