豪快なスイングで力強い打球を飛ばしている岡本。巨人の4番を任される日も、そう遠くはないかもしれない。

オープン戦で4本塁打、両リーグトップとなる15打点を挙げ、開幕スタメンの座をつかみ取った巨人の岡本和真(21歳)。開幕2戦目に試合を決める3ラン、翌日の3戦目でも逆転3ランを放つなど、4年目の飛躍を予感させる活躍を見せた。

奈良の智弁学園高校時代に通算73本塁打を記録した岡本だが、当時から好球を一発で仕留める集中力を備え、高校生にありがちな“力自慢タイプ”ではなかった。また、変化球のさばきにも光るものがあり、各大会で常に4割以上の高打率をマークするなど、勝負強さも抜群だった。

ただ、「ホームラン“を”打ちたい」ではなく、「ホームラン“も”打ちたい」と語っていたことには、物足りなさが感じられた。その名がまだ全国に広まっていない頃に、「3割、20本」「2割8分、30本」「2割5分、40本」のうち、どの数字に最も惹(ひ)かれるかと聞いたことがある。すると岡本は、「3割、20本です。打率を残せるようになったら、ホームランを毎年20本以上打てる選手になりたい」と、プロ入り後の理想像について話していた。

しかし、全国デビューとなった3年春のセンバツ大会前、岡本は珍しく「バックスクリーンにホームランを打ちたい」と言い放った。「監督から『たまには大きなことを言ってみろ!』と言われて…」と理由を語っていたが、宣言どおりに初戦でバックスクリーンに叩き込んでみせた。監督の何げないひと言が岡本の責任感に火をつけ、ホームランへの思いを強くするきっかけになったのだ。

プロ入り後の3年間をふり返ると、1年目はシーズン終盤に1軍で初安打、初本塁打を記録し、2年目にはイースタン・リーグで打点王を獲得。3年目は開幕スタメンを果たすも、程なくして2軍落ち。結局、浮上のきっかけをつかめないまま悔しい1年を過ごした。

その間、自分の持ち味は何か、1軍で輝くために必要なものは何かを考えた。さらに、戦力外となった村田修一の背番号25を背負う責任も重なり、覚悟を決めたのだろう。特に昨年あたりから、岡本が本塁打や長打へのこだわりを口にする機会が増えた。

オフには、憧れだった西武の中村剛也(34歳)と自主トレを実施。間近で見た中村のスイングについて、「本当に柔らかくて、パワーだけじゃなく技術で飛ばしているのが、さすがプロって感じるんです」と話していた。その中村も、大阪桐蔭高校時代は通算83本塁打を放ち、“浪速のカブレラ”と呼ばれていたが、同校の西谷浩一監督からこんな話を聞いたことがある。

「剛也はホームランだけじゃなく、どの大会でも常に打率4、5割は打っていたし、空振りを見た記憶がない。プロの世界では求められるものを本人が感じ取って、(よりホームランを狙う)スタイルに変わっていったのでしょう」

三振を恐れず、自身の最大の持ち味であるホームランを第一に求めた結果、中村は通算6度の本塁打王に輝いた。

その中村も、ホームランアーティストの片鱗(へんりん)を見せ始めたのは4年目だった。「ホームランも」から「ホームランを」へ。そんな決意をした、岡本和真の4年目の活躍に期待したい。

(取材・文/谷上史朗)