ロシアW杯出場を決めたオーストラリア戦でのミドルシュートは鮮烈だった。ハリルジャパンを象徴する存在だったはずの井手口陽介が、新天地で思わぬ苦戦を強いられている。
3月の欧州遠征メンバーからも外れ、井手口を抜擢したハリルホジッチも解任の憂き目に遭った。一時はW杯行きが約束されたかに見えた“日本のダイナモ”は今、何を思っているのか――。
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W杯イヤーの今年1月にイングランド2部のリーズ・ユナイテッドに完全移籍。ビザ発給の問題や出場機会確保を理由に、すぐにスペイン2部リーグのクルトゥラル・レオネサに期限つき移籍した。
1月21日(現地時間、以下同)のオサスナ戦で途中出場し、レオネサでのデビューを飾った井手口は2月18日にはラージョ・バジェカーノ戦で初先発。だが、この試合の前半で退くと、以降は8試合も出番を失っている。レオネサ移籍後は出場5試合、わずか109分しかピッチに立っていない(第35節終了時点)。W杯に向け、その状態は気になる。
―22チーム中18位とレオネサが低迷するなか、なかなか出場機会を得られていないようですね。
井手口 先発で使ってもらったラージョ戦が、単純に全然あかんかったんでしょうね。だから使われていないだけ。スペイン語しか話せない選手も多く、言葉の壁を感じる部分もありますし、確かにストレスはたまりますよ。
ただ、練習で自分のプレーを見せることが大事だし、同じポジションの選手に負けている気はしないので、今は次に使ってもらったときに100%の力を出せるように準備するだけ。めげずにアピールしているつもりなんですけどね。
―W杯イヤーに思い切った移籍。なぜ、この時期に?
井手口 そのことは何度も聞かれましたが、昨年ブラジルやベルギーなど世界トップの国と試合をして、大人と子供くらいの差を感じさせられたんです。このままJリーグでやっていてもこれ以上は成長できないんじゃないかって思ったのが大きかったですね。代表からJリーグに戻ると、正直、プレーがおっそいなと感じましたし、あのレベルを経験したら日本で頑張れる気にはなれなかった。
ブラジル戦でマッチアップしたのはレアル・マドリーのカゼミーロとかマンチェスター・シティのフェルナンジーニョだし、ネイマールもいた。ベルギーだったらデ・ブライネとか。もうついていくだけでも今までにないくらいキツかったし、危機感も味わいました。でも、めちゃくちゃ面白かった。
正直、プロになった当初はJリーグでプレーしていても、周りの選手にうまいなとか、すごいなと感じる部分もありましたけど、そういう刺激も感じなくなってしまった。そしたら、もう早く海外に行くしかないじゃないですか。
―「W杯を考えるとリスクがあるのでは?」という意見もありました。
井手口 そう言われても自分の目標はW杯だけじゃないし、一番は引退するまでずっと海外でプレーすることなんで…。
(取材・文・撮影/栗原正夫)
●井手口陽介(いでぐち・ようすけ) 1996年8月23 日生まれ、福岡県出身。スペイン2部のクルトゥラル・レオネサ所属。ガンバ大阪の下部組織出身。2016年のリオ五輪に最年少メンバーとして出場。さらに翌年にA代表デビュー。18 年1月、イングランド2部のリーズ・ユナイテッドへ完全移籍すると同時にスペイン2部のレオネサへレンタル加入した