今季25周年を迎えたJリーグで今、16歳、17歳の「高校生Jリーガー」たちが目覚ましい活躍を続けている。
ロシアW杯の予備登録メンバー発表まで残り僅か。日本サッカーの将来を担う、「東京五輪世代」のサプライズ選出はあるのか!?
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3月14日、日本サッカーの歴史が大きく動いた。
ルヴァン杯のグループステージ第2節で、FC東京の久保建英(たけふさ)が16歳9ヵ月10日でJ1初得点を挙げたのだ。そのゴールで、東京ヴェルディの森本貴幸(現・アビスパ福岡)が保持していたJリーグのカップ戦での史上最年少得点記録(16歳10ヵ月12日)を更新した。
後半25分に途中出場した久保はそのわずか6分後、ピッチ中央から相手ゴールに向かって急加速。そこでパスを受けると周囲にいた4人のDFの間をするすると抜け出して左足を鋭く振り抜いた。
映像を見れば「なんとなくすごい」ことはわかるが、具体的に何がすごいのか。サッカー専門紙『エル・ゴラッソ』元編集長で、ユース世代の取材を重ねるライターの川端暁彦氏が久保の魅力を語る。
「久保は、相手選手とボールの位置を見て最適なポジションを取るのが抜群にうまいんです。動く距離はわずか50cmくらいかもしれませんが、その少しの差がプロの世界では結果を左右します」
また、サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』元編集長で国内外のサッカーを取材するライターの中山 淳氏も「彼は“サッカー偏差値”が高い」と絶賛する。
「例えば、誰かにボールが渡ったときに、周囲の選手の動きから、次の展開を先読みしてプレーできる。16歳にしてここまでサッカーを理解している選手はいませんよ。ボールを保持し、そこからパス、ドリブルといったテクニックや判断力も含め、ポテンシャルはピカイチです」
すでに広く認知されているだろうが、久保はリオネル・メッシらが育ったバルセロナの下部組織の入団テストに10歳で合格。その後、契約上の問題で2015年に帰国してからはFC東京の下部組織に所属し、昨年11月にプロ契約を締結。と、ここまで順風満帆に見えるが、課題も浮かび上がっているという。
「フィジカル、守備はまだまだ。FC東京の長谷川健太監督も『そこは大人がカバーする』と発言しています。長谷川監督は守備からチームをつくる人なので、全体のバランス、ケガのリスクなどを考えて、途中交代という形で起用しているのでは」(中山氏)
逆に言えば、不得意な守備に目をつぶってまで、試合終盤の得点が欲しい場面で“攻撃の切り札”として重用されている、と言えるかもしれない。一瞬のひらめきがワールドクラスだということは、J1初ゴールで証明済み。経験を積めば積むほど伸びていくだろう。
■久保よりすごい!? 即戦力の17歳コンビ
どうしても久保にばかり目が行ってしまうが、この世代にはほかにも逸材がそろっている。「即戦力という意味では、久保よりも上」と、前出の中山氏が名前を挙げたのは、ガンバ大阪の17歳FW・中村敬斗(けいと)だ。
この中村、くしくも久保と同じ14日のルヴァン杯でJリーグ初ゴールを挙げている。なんたる偶然。しかも、久保に勝るとも劣らないスーパーゴールを決めているのだ。
浦和レッズ相手に2点リードした後半42分、自陣でパスを受けた中村は、鋭いターンでDF槙野智章をかわしてドリブルを開始。そのまま約70mを突き進み、MF阿部勇樹に寄せられると少しだけ右に進路を変え、GK西川周作が守るゴールマウスのニアサイドをぶち抜いてみせた。
日本代表クラスの3人を手玉に取った中村について、中山氏は「身長が180cmあって体格もよく、かつスピードと突破力がある。若手を積極的に起用するクルピ監督の下でこれからもっと成長するでしょうね」と評価。さらに、ユース時代から中村のプレーを見続けている前出の川端氏は、彼の高い向上心がわかるエピソードを話してくれた。
「元々、利き足である右足のシュートの威力はすごかったんですよ。それでも中村は満足せず、左足でのシュートを繰り返し練習して、両足で精度の高いキックができるようになった。より高いレベルで必要となるものは何かを理解し、目標に向かって突き進むことができる選手です」
久保、中村とともに、昨年インドで行なわれたU-17W杯を戦った名古屋グランパスの菅原由勢(ゆきなり)も、高校生らしからぬ存在感を放っている逸材だ。今年2月にトップチームに登録されると、開幕戦でいきなりセンターバックのスタメンに大抜擢。風間八宏監督の期待に応えている。
川端氏によれば、「菅原は『キャプテン翼』の三杉くんと石崎くんが一緒になったような選手」だという。三杉くんはサッカー選手と医者の両立を目指す“頭脳明晰”な選手。一方で、“顔面ブロック”が代名詞で泥くさいプレーが印象的な石崎くんとは、だいぶイメージが違うが…。
「まず、菅原は頭がいい。相手の戦術やゲームの流れを冷静に見極めながらプレーすることができます。そういった選手は、どうしてもクリーンなプレーに終始しがちですが、菅原は違う。ここぞ、というときに気持ちを前面に出して相手に向かっていくことができるし、泥くささとガッツもある。
U-17W杯でも、海外の選手に気後れせずにガツガツいっていました。20年の東京五輪、22年のカタールW杯ではチームを引っ張る選手になってほしい逸材です」(川端氏)
◆この続き、後編は明日配信予定!
(取材・文/和田哲也 写真/アフロ)