イニエスタを獲得しても、宝の持ち腐れとならないか心配だと語るセルジオ越後氏。

イニエスタの今夏の神戸入り発表が間近のようだ。

名門バルセロナではクラブ生え抜きとして16シーズンにわたって活躍し、数々のタイトルを獲得。また、スペイン代表でも2008年と12年のユーロ(欧州選手権)、10年の南アフリカW杯を制覇。今回のロシアW杯出場も確実で、実績、実力ともに疑問の余地はない。

今のJリーグは昔と比べて外国人選手が小粒で華がない。本気でチームを強くし、ファンを増やしたいなら大物外国人選手を獲得すべき。僕は常々、そう指摘してきた。だから、今回の移籍が実現すれば、それは素晴らしいこと。多くのメディアが取り上げていることですでに宣伝効果を生んでいるし、実際に神戸に加入すれば、神戸だけでなくJリーグ全体にとってさまざまな好影響を見込める。間違いなくポジティブなニュースだ。

ただし、報道を見る限り不安もある。それは神戸が提示したとされる3年総額約100億円という年俸だ。いくら誰もが認める大物とはいえ、あのクリスティアーノ・ロナウド(約28億円)を超える年俸は、あまりに高すぎないだろうか。昨夏に神戸に加入したポドルスキ(約6億円)、現在、鳥栖に獲得の噂が出ているフェルナンド・トーレス(約5億円)が安く感じるほどだ。

Jリーグで一度も優勝争いに絡んだことのないチームが、それだけ多額の予算を使えるなら、先に手をつけるべきことがあると思う。具体的に言えば、チーム全体の底上げ。日本人の有力選手を複数獲得して、アジア枠を含めた外国人選手の見直しなどを優先させるべきではないだろうか。

確かにイニエスタは素晴らしい選手。でも、彼はバルサでもスペイン代表でもひとりで勝ってきたわけではない。彼のスキルを生かせる、レベルの高いチームメイトがいたからこそ輝けた部分もある。

例えばJリーグならパスワークを武器にする昨季王者の川崎に入ったら、めちゃくちゃ面白いし、彼の持ち味は存分に発揮されるはずだ。

でも、失礼は承知で言うけど、今の神戸はどうだろうか。ポドルスキはいるけど、ふたりの力だけでは厳しい。対戦相手からすれば、そのふたりを徹底マークすればいいわけで、それほど怖くないんじゃないかな。

持ち味を発揮できる体制を整えてほしい

せっかくイニエスタを獲得しても、一番盛り上がるのは入団会見で、現場の人間は扱いに困って結局、宝の持ち腐れとならないかが心配だ。

神戸のオーナーの三木谷さんにとっては、イニエスタが果たしてくれるであろう“楽天の広告塔”としての効果を考えれば、決して高くない買い物なのかもしれない。また、サッカーにそこまで入れ込んでくれることは、本当にありがたいこと。

ただ、なんとしてでもチームをJリーグで優勝させたいというよりも、自分のビジネス優先という印象を受けるのも事実。純粋なチーム強化という観点からすれば、今回のイニエスタ獲得は継続性があるようには思えない。

イニエスタが本当に神戸に加入したとして、もしパッとしたプレーができずに終わったら、Jリーグのほかのクラブが今後の大物獲得にますます二の足を踏むことになりかねない。

それだけに、神戸にはさらなる補強を含めてイニエスタが持ち味を発揮できる体制を整えてほしいし、ぜひ三木谷さんにはそこまでお願いしたい。

(構成/渡辺達也)