外国人枠撤廃は日本人選手のレベルアップにつながると語るセルジオ越後氏

早速のイニエスタ効果といった感じかな。Jリーグが来季からの外国籍選手枠撤廃の検討に入ったそうだ。本当に実現するなら大歓迎だね。

現在のJリーグは外国籍枠3人、アジア枠1人、そしてアジア中心の提携国枠1人で、1試合最大5人の外国籍選手がプレーできる。これを撤廃もしくは緩和しようというもの。これまでにも議論はあったけど、「日本人選手の出場機会が減る」という反対意見が根強く、なかなか先に進まなかった。

ところが、イニエスタの神戸加入で風向きが変わったようだ。欧州各国のシーズンが終了するのはだいたい5月。一方でJリーグはシーズン真っただ中。そのタイミングでどこかのクラブが大物選手を獲得する気になったとしても、すでに外国籍選手枠が埋まっていれば誰かを放出せざるをえず、違約金が発生するなどの不利益を受ける可能性がある。そこを考慮しての判断というわけだ。

せっかく大金を投資してリーグのレベルアップ、盛り上げに貢献するのだから、そのくらいの優遇措置はあってもいいだろう。また、自チームの外国籍選手枠の空き状況を気にせずに済むので、“お買い得”の大物選手がいたときに動きやすくなるはずだ。

ただ、それ以上に僕が大賛成なのは、Jリーグ、そして日本人選手のレベルアップにつながると思うからだ。

確かに、外国籍選手が増えれば、日本人選手の出場機会は減るかもしれない。でも、プロは厳しい競争があって当然。それを勝ち抜くために必死で努力をして、たくましさを身につけていくものだ。昔と違って、今はJ1だけでなくJ2、J3と選手の受け皿も増えた。そこから這(は)い上がればいい。

例えば、日本のサッカー関係者の中には「バルセロナのサッカーが理想」という人が多い。でも、あの強くて魅力的なサッカーはスペイン人だけでは無理。世界のスター選手を集めているからこそできるもの。それはレアル・マドリードも同じ。そして、そんな厳しい環境で生き残ったスペイン人選手たちがスペイン代表を支え、W杯やEURO(欧州選手権)で活躍している。

今では信じられないことかもしれないけど、かつてJリーグにはイニエスタ級の大物が各チームにいた時期もあった。当時はJリーグの人気ももっと高かったし、後にヒデ(中田英寿)や“黄金世代”など日本人スター選手も次々と生み出す土壌を育んだ。

治安の良さ、堅実な組織運営などの環境面は、海外の選手に向けて大きなアピールになる

また、アジアチャンピオンズリーグを制した2006年の浦和にはポンテ、ワシントン、ネネという3人のブラジル人以外にも帰化選手の闘莉王がいて、周囲の日本人選手と切磋琢磨(せっさたくま)しながら魅力的なサッカーでJリーグを盛り上げてくれた。

確かに、今のJリーグには中国や中東ほどの資金力はない。イニエスタのような大物はそうそう獲得できるわけではない。それでも治安の良さ、堅実な組織運営などの環境面は海外の選手に向けて大きなアピールになる。そこは日本がもっと自信を持つべき部分だし、今回の外国籍選手枠撤廃はそれを生かす最善の策だと思う。

狙うのは何も大物選手だけじゃなくていいんだ。潜在能力の高い若手を獲得し、Jリーグで育て、欧州や中国、中東に高く売ることを目指すクラブが出てきても面白い。

いずれにしても、外国籍選手枠撤廃はJリーグの起爆剤になることは間違いないし、必ず実現してほしいね。

(構成/渡辺達也)