ポーランドとの決戦の地、ヴォルゴグラードはこの時期、気温40度近くの猛暑に見舞われる。それを見越したように、これまで比較的涼しかったベースキャンプ地のカザンの気温もセネガル戦を終えて戻った頃には40度近くに上昇していた。
ただし、3戦目のポーランド戦に向けて、これは悪い状況ではない。こうした暑さには日本のほうが慣れているからだ。原口元気が言う。
「日本のほうが暑さには強いと思うし、向こうのほうがしんどいかなと」
ポーランドはすでに2連敗を喫し、グループステージ敗退が決まっている。しかし、だからといって日本のほうが優位とは言えない。すでに敗退が決まったチームが 最終戦でプレッシャーから開放され、開き直ってベストパフォーマンスを見せることは、よくある話だ。2連敗していたモロッコが最終戦でスペインを追い詰め て一時は逆転、最終的にドローに終わったのは最たる例だ。
「どのチームも国を背負ってここに来ているし、ポッド1で入ってきたチーム。このまま負けて帰れないというプレッシャーがあると思う」と吉田麻也は気を引き締めている。
ポーランドはここまで世界屈指のストライカー、ロベルト・レバンドフスキを狙うだけの単調な攻撃が多く、その攻撃もエースに合っていない。だが、予選を通じてセットプレーでの得点が多く、日本はここ数試合、セットプレーからの失点が多い。このセットプレーの攻防がポイントのひとつと言えそうだ。
一方、1勝1分けで勝点4のグループ首位に立つ日本のチーム状態は、かなり良好だ。大きなケガ人もおらず、何よりプレッシャーのかかる戦いを楽しんでいるの がいい。セネガル戦の前半終了間際に見せたオフサイドトラップなどは、楽しんでいる証しだろう。オフサイドを取った直後、TV画面が捉えた吉田の「やって やった」という満足そうな笑みが、何よりそれを物語っている。
「自信を深めているし、勢いも感じる。まだ出ていない選手もそろそろ出たいとウズウズしていて、彼らのモチベーションも感じています」と吉田は明かす。
岡崎慎司は4年前のブラジル大会と比較して、チームの総合力が上がっていると証言する。
「最初は勝点1取れれば御の字くらいの感じで入って、プラスαで勝点3を取りにいく。各ポジションにバランスの良い配置ができている。頑張れるやつ、ゲームを 作れるやつ、前線で身体を張れるやつ、切り札として点を取れるやつとか。どうやったらワールドカップでグループステージを突破できるのかにフォーカスしている。自分たちの戦い方どうこうではなく」
また、本田圭佑はチームと西野監督のスタンスとの相性の良さを力説した。
「西野さんが優れているのは、人の意見を受け入れられること。そこに提言できる選手がこのチームに多いことがマッチしていると思う」
中3日で迎えるポーランド戦は、メンバーのセレクトも焦点のひとつ。2試合続けて同じメンバーが先発し、選手によっては疲労が蓄積されている頃だろう。5月 末にスタートした国内合宿から全選手にチャンスを与え、総力戦でここまで戦ってきただけに、思い切ってメンバーを変更するのも一考だろう。
たとえば、消耗の激しい両サイドハーフ、原口や乾貴士に代えて宇佐美貴史や武藤嘉紀を送り出す。あるいは、ボランチの柴崎岳、長谷部誠に代えて大島僚太、山口蛍をピッチに立たせる。ベスト16、ベスト8でインテンシティの高いサッカーを試みるなら、ここでフレッシュなメンバーを送り出し、レギュラー組をひと りでも多く休ませたい。
ここまで理想的な戦いを繰り広げてきたが、ポーランドに敗れ、3位に転落すれば、これまでの勝点4はすべて無駄になる。今のチームが油断するなどとは思えないが、これまで通り、チャレンジャー精神で熱い戦いを繰り広げたい。