ベルギーとの激闘から一夜明け、ベースキャンプ地のカザンに戻ってきた日本代表が最後の取材対応を行なった。
「ひと晩中、もっとやれたんじゃないかな、という想いがずっと頭の中を駆け巡っていた」と明かしたのは、4試合フル出場を果たしたDFの吉田麻也だ。
「1失点目はたしかに相手のラッキーな形からの得点だったかもしれないけれど、まだ勝ち慣れていない、勝ち切る強さがないという思いが強いです。この経験から学んでいかないといけない」
吉田が悔やむのは、2‐0になってからの試合運びだ。前半からハードワークして相手にプレッシャーを与え、後半の頭に立て続けに2ゴールを奪いながら、その後のゲーム運びが無意識のうちに受け身になっていた、と吉田は指摘する。
「もちろん肉体的、フィジカル的、能力的な差はあったと思いますけど、精神的な弱さ、脆さが出てしまったんじゃないかというのは感じています。そこでチームを引っ張っていけなかったのは、非常に心残りです」
チームとしても、個人としても、すべてを出し尽くしたと語るDF長友佑都も、一方で今大会の成績は1勝1分2敗で、1勝しかしていない事実と向き合っていた。
「しかも、11人対11人で勝ってない。結局ベスト16に進んで、ベルギーとはいい試合をしたかもしれないけれど、自分たちの実力はまだベスト16にも及ばないと思います。日本サッカー界すべての人が、そこから目を背けてはダメだと思います」
日本代表は今大会で何ができて、何ができなかったのか――それをしっかりと分析するところから、4年後のカタール大会への第一歩が始まるといえるだろう。
この日は、日本代表のキャプテンを8年間務めたMF長谷部 誠が、日本代表からの引退を表明した。
「大会前には自分の心の中で決めていました。覚悟を持って決断したことなので、今は本当に終わった。やり切ったっていう感覚があります。もちろん、昨日のゲームに関しては悔しい気持ちはあるけれど、今回のこのベスト16の戦い方は、さまざまなことに勇気を持ってチャレンジして、次につながる戦いができたと思います」
前日のベルギー戦後のミックスゾーンではMF本田圭佑も「これが最後のワールドカップになる」と明言している。この8年間、日本代表の顔を務めてきたふたりが代表チームから去ることで、ひとつの時代に幕が下り、新しい時代の幕が開けるのは間違いない。
引き続きチームの中心となることが予想されるMF香川真司は、その責任感からか、代表チームの今後のあり方について提言した。
「今後、海外組が増えていくなかで、4年間常に日本に帰ってきて試合をするのは、精神的にもモチベーション的にもコンディション的にも難しい。それに関しては、自分の経験を話していきたいし、ワールドカップまで4年あるなかでのプランニング、強化の仕方をもっと明確に持たないといけないと思います」
一方、今大会を経験してひと回りもふた回りも大きくなったMF柴崎岳は、より明確に次の目標を捉えていた。
「今考えているのは、チャンピオンズリーグに出ることですね。レベル的にはワールドカップと同等か、それ以上の大会だと思っています。そういうところに身を投じることが自分には必要なのではないかと思います」
日本代表の新監督は、7月中にも発表される予定で、9月には新体制の初陣が組まれている。4年後のカタール大会でベスト8進出を果たすには、代表チームを計画的に強化すると同時に、選手一人ひとりがいかに所属クラブで成長できるかに懸かっている。
チャンピオンズリーグへの出場を目論む柴崎だけでなく、より多くの選手たちがヨーロッパの舞台に飛び込み、ベルギー代表のようなレベルの選手たちと日々しのぎを削りあう必要があるだろう。