W杯出場国のなかでも選手の平均年齢が高かった日本代表 W杯出場国のなかでも選手の平均年齢が高かった日本代表
W杯の現場で眺める日本代表の躍動は、格別なものがあった。コロンビア戦、セネガル戦、ベルギー戦といずれも勝ち負けは違ったわけだが、誇らしい気持ちにさせられた。

「日本人が自分たちに誇りを持ってくれるような戦いをしたかった」

主将である長谷部誠は、すべての戦いを終えた後に語っている。

では、新生日本代表に求められる指標とは?

それは、選手の顔ぶれやプレースタイルは多少違ったとしても、人の心を動かせるか、にあるべきなのだろう。

今大会の日本代表チームは、平均年齢が明らかに高かっただけに、世代交代は急務だろう。

もっとも、単純に若返ればいいわけではない。また、ロシアW杯を戦った選手たちが伝えるべきものも多分にある。さらに、若い選手が自らポジションを奪い取るような野心がなければ、本当の世代交代は起こらない。「ベテランを切り、若い選手を登用するだけ」という世代交代では、むしろ競争力が落ちてしまうはずだ。

代表として力をつけるには、やはりひとり一人の選手のレベル向上が欠かせない。その点、海外で揉まれ、ポジションをつかんだ選手はすぐにでも抜擢すべきだろう。

オランダリーグで二桁得点した堂安律、ポルトガルリーグで二桁得点した中島翔哉、スペイン2部で3シーズンを過ごしている鈴木大輔、オーストリアでたくましさを増した南野拓実。4人の欧州組は、新生代表に選ばれるべきだ。

そのうえで、さらに多くのJリーガーの渡欧が求められる。たとえば、大島僚太はJリーグ屈指のセンスの持ち主だが、厳しい国際舞台では通用しなかった。しかし、ヨーロッパの強度の高い試合の中で、自分の持ち味を生かす術を身につけられたら、日本を代表するプレーメーカーになれるはずだ。

結局、明暗は勝負のディテールにある。

たとえばベルギー戦は、後半アディショナルタイムに敵陣でCKをとりながら、GKティボ・クルトワにキャッチされ、スローをカウンターに持ち込まれている。もしキッカーである本田圭佑がショートコーナーを選択し、クロスを上げて終わるようなタイミングで蹴っていたら......。左利きの本田が左CKを蹴る場合、ボールはゴールから逃げていく軌道を描くために、GKとしては前に出る計算が立ちやすかった。しかも、クルトワはそういうプレーを得意としているのだ。

その点、日本は試合巧者だったとはいえない。

実は、カウンターをストップする機会は他にもあった。ボールをキャッチしたGKクルトワの前を即座に遮って、スローを妨害できていたら。あるいは、前がかりになりすぎず、スローを受けたケビン・デ・ブルイネの前に誰かが立てていたら。駆け引きの部分で、イノセントだった。

そのしたたかさは、ヨーロッパでしか獲得できない。

数的優位で戦ったコロンビア戦以外は勝ち切った試合がないように、90分間のマネジメントには波があった。2-2のセネガル戦は立ち上がりにスイッチを入れられず、相手ペースのまま失点。2-3のベルギー戦も2点をとった後、ピッチに立つ選手たちは浮き足立つところがあった。

また、選手層の薄さも露呈した。ベルギーは3枚の交代カードを切って、状況を好転させている。一方の日本は2枚しかカードを切れず、しかもこの日は空回りだった。

ロシアW杯で結果を残した大迫勇也、乾貴士、原口元気、香川真司、柴崎岳、酒井宏樹、昌子源、吉田麻也という主力は、今後もベースになるだろう。各ポジションにバックアッパーは出てきているが、どこまで迫れるか。若手の台頭がなければ、戦力的に足りない。来年1月のアジアカップまでに、今回のメンバーの半分近くは入れ替わっていることが理想だ。

懸案は長谷部誠の後継者だろう。

周りを補完して、生かすクレバーさは、長谷部の専売特許といえる。ポーランド戦、終盤にピッチに入っただけで、猛火のようだった相手の攻撃を鎮火した。正しいポジションを取るだけで、周りが無理なくプレーできる。最高のバランサーだ。

現時点では、三竿健斗、橋本拳人が後継者として有力に映るが、欧州移籍して主力になることが条件になるか。大島や井手口陽介を推す声もあるが、長谷部に近いのは三竿、橋本の方だろう。大島は柴崎とキャラクターが近く、井手口は山口蛍に近い。

西野朗監督が退任し、これから誰が日本代表の監督になるかで、スタイルや戦い方は明確になってくる。しかし、誰になったとしても、選手個人の戦う力が下がってしまったら、今回以上の成績は望めない。

「日本らしさ」

それを今回のロシアW杯で示したことは、この先の大きな糧になるはずだ。