ドラゴン先生こと漫画家・岡村茂氏(左)と「技のオモチャ箱」の異名を持つ、日本柔術界の至宝・早川光由氏(右)。紅白のラインが入った黒帯が示す段位は「黒帯四段」だ ドラゴン先生こと漫画家・岡村茂氏(左)と「技のオモチャ箱」の異名を持つ、日本柔術界の至宝・早川光由氏(右)。紅白のラインが入った黒帯が示す段位は「黒帯四段」だ 毎週金曜日に絶賛更新中のWEB連載漫画『50代の☆リアル体験入門 ドラゴン先生格闘ロード』が新展開を迎えた! ブロレス(DDT)、システマ、クラヴマガで驚異的な適応力を発揮し、各道場を震撼させたドラゴン先生こと漫画家・岡村茂氏。4番目のターゲットに選んだのは、『最強の格闘技』として賞賛する声も多いブラジリアン柔術だ。

まもなく55歳を迎える岡村氏の自慢は、直近でベンチプレス135キロ、バーベルスクワット145キロを上げる肉体。漫画家界No.1を自認し、ベンチワーク以外にも自転車や、起伏に富む自然の山を歩くなど、日頃からの鍛錬を欠かさない。さらに本連載のために道場破りを決行する日から逆算し、禁酒もして完璧なコンディションに仕上げてくるのだから、挑戦はガチもガチだ。

誰かの挑戦に同行して漫画化するのではなく、商売道具である肉体、とくに漫画を描く手や腕を負傷するリスクも覚悟の上。それでも「自分の体が格闘技にどこまで通用するのかを試したい」という一念で、その門をくぐった道場はついに4ヵ所めになった!!

迎えた第4闘のターゲット、ブラジリアン柔術とはどんな格闘技なのか。通常、「寝技を主体とする組み手系の格闘技」と定義されるが、道場で学ぶことができるスポーツとしてのそれは、いかに危険から逃げるかという護身術の面が重要視される。スポーツだからこそルールも整備され、打撃攻撃は禁止、関節技や絞め技、投げ技や押さえ込みにより、試合ではタップまたはポイント制で勝敗が決められている(フォールはない)。

受講者が見つめるなか、動きのデモンストレーションを行なう早川光由氏。足の裏全面をマットについたまま上半身がスッと伸びた美しいブリッジだ 受講者が見つめるなか、動きのデモンストレーションを行なう早川光由氏。足の裏全面をマットについたまま上半身がスッと伸びた美しいブリッジだ

今回伺った道場で、あるインストラクターにブラジリアン柔術の魅力をたずねると、「囲碁や将棋のように緻密な攻防ですね。毎年、新しい技が生み出され、またそれを打破するカウンター技が生まれる。頭を使える人が強い」ところだと指摘してくれた。

さて、いつものように、ここで今回の岡村氏の道場破りの様子をダイジェストで紹介しよう。

無謀かつ前代未聞の挑戦を受け入れてくれたのは、東京・池袋を中心に日本各地にネットワークを広げているトライフォース柔術アカデミー(以下、トライフォース)。日本ブラジリアン柔術連盟の加盟団体であり、帯制度を採用している。国内外の大会で優秀な成績を残すアスリートを多数輩出する名門である。

そのカリキュラムは、150の技が5つずつ30のレッスンプログラムとして構成されているベーシックに始まり、さらに難度の高い技で構成される上位のプログラムへと、多数の技が積み上げられる。「技を1個でも多く覚えること」が上達のコツだという。

ベーシッククラスの基本中の基本であるレッスン1のトレーニングに参加した岡村氏。その手ほどきをしてくれたのは、なんとトライフォースの代表にして日本のブラジリアン柔術界の第一人者として燦然(さんぜん)と輝く男・早川光由氏だった!

マウントポジションからエスケープしてガードポジションへと導く動きを練習する。レッスンが始まったばかりで、すでに汗だくになる激しさだ マウントポジションからエスケープしてガードポジションへと導く動きを練習する。レッスンが始まったばかりで、すでに汗だくになる激しさだ

準備運動から始まったトレーニング。とはいえ、この日、岡村氏とペアを組んでくれたキャリア9年で紫帯(※)の会員が「入門したばかりの頃は準備運動で気持ち悪くなっていた」というほど負荷が高いメニューだ。寝技が主体であるこの競技独特の動きには、他の競技でほぼ体験しない体の使い方をするものも多く、岡村氏もとまどう様子をかいま見せた。しかし、3つの道場で数々の技や動きを体験してきた経験値の蓄えと、独特のコピー能力の高さで、ここは意外にすんなりこなしてしまうのだった!

(※帯色は練習日数や終了期間、技術要件の修得などにより、下から、白帯・青帯・紫帯・茶帯・黒帯と上がっていく。さらに段位があり、最高段位は九段の赤帯となる。ジュニアには別に規定がある)

ベーシックのレッスン1<マウントポジションエスケープ>を構成するのは5つの技だ。

1)ロールエスケープ
2)エルボーエスケープ
3)ヒールドラッグエスケープ
4)ロールエスケープ フロム マウント ウィズ ヘッドロック
5)エルボーエスケープ ウィズ フックリリース

マウントポジションとは、多くの格闘技に見られる、仰向けに寝た選手の上に対戦相手が馬乗りになり、体をまたいだ状態。そして、5つの技のそれぞれがどんな技なのかは、漫画作品で確認してほしい。

会員多数が参加した道場でのトレーニングで、岡村氏は未知の感覚を知ることとなる。その感覚がなにかという答えは漫画作品のPART2をご覧いただくとして、1時間にわたって道場のマットの上で組み技にチャレンジしたあとは、当然のように汗びっしょりに。しかし! この日のクラスに参加していた会員たちは汗ひとつかくことなく、余裕の表情......。そのギャップに、「こんなに汗をかく自分はなんなんだろう......」と深く悩む岡村氏だった。

あごをさすり「うーん、マンダム!」などと50代ギャグを飛ばしているのではない。左右の奥襟をつかまれて締められた岡村氏の反応だ あごをさすり「うーん、マンダム!」などと50代ギャグを飛ばしているのではない。左右の奥襟をつかまれて締められた岡村氏の反応だ

この日、最後には、インストラクターとの組み技にのぞんだ。彼の体重は58キロ。85キロの岡村氏とは30キロ近い差があり、体重別に階級のある格闘技では数段階違いが出そうであるが......。インストラクターの動きにうまく対応できているような、軽くあしらわれているような......。

早川氏によると「インストラクターは1%くらいの力しか使わずに、相手を自在にコントロールしています。体重差のある相手とイーブンに闘うことができる」のがブラジリアン柔術なのだ。

そして、今回の挑戦も、通常クラスで特徴的な動きを体験し、理解したのちに、あらためて早川氏とマンツーマンで行なう機会をいただきたいという申し出に、快諾の回答を得ることができた。

1週間後、再び道着に袖を通した岡村氏が挑戦するのは、ブラジリアン柔術の華といえる関節技や絞め技。体験する以上、技を出す側と受ける側の両方を体験しなければ、それは半端というもの。技を出し、相手を極めに行くのは体験しがいがあるだろうが、逆に受ける段になると一気に恐怖心が襲ってくるわけで......。

これぞ大技、腕ひしぎ十字固め! 格闘技ファンならずともおなじみの必殺技だが、単に手足で締めるのではない。全身を効果的に使うコツを学ぶ これぞ大技、腕ひしぎ十字固め! 格闘技ファンならずともおなじみの必殺技だが、単に手足で締めるのではない。全身を効果的に使うコツを学ぶ

関節技といえば、プロレスでも柔道でも見られる、誰もが見たことがあるはずの、あのおなじみの技を修得することができ(もちろん、自らもかけられてあわててタップしたのだが......)、まずは手応えをつかんだ岡村氏だった。

そして、絞め技でも、やはりおなじみのあの技を体験することに。この日、練習相手となってくれたインストラクターにその技をかけ、「きつかった」といわしめたあとには、当然、受ける側にまわるのがお約束で......。

この様子は連載作品のPART3以降を楽しみにしてほしい。

この道の目指す先に待つものは何か。漫画を楽しみながら、その進化の過程を追っていくと、読者自らも励みになり、元気が湧いてくるはず? そして自分も強くなりたい!と実践したくなるかも......。

各団体で絶賛を受けた激闘の記録は、週プレNEWSのアーカイブでもご覧いただくことができるので、是非チェックしていただきたい!

★連載漫画『50代の☆ リアル体験入門 ドラゴン先生格闘ロード』第4闘:トライフォース柔術アカデミー編PART1は「週プレNEWS」で無料配信公開中

(取材協力/トライフォース柔術アカデミー https://www.triforce-bjj.com)