セリーグ、パリーグで「新人王」を受賞する選手は? ※写真はイメージです セリーグ、パリーグで「新人王」を受賞する選手は? ※写真はイメージです

シーズン後半へと突入したプロ野球。そろそろタイトル争いが気になってくる季節だ。そして、どんな優れた選手でも、生涯一度しか受賞のチャンスがないタイトルが、「新人王」である。

セ・リーグで新人王争いをリードしているのは、東 克樹(あずま・かつき/DeNA)。昨秋ドラフト1位指名を受けて立命館大から入団したサウスポーだ。各球団が清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)や中村奨成(なかむら・しょうせい/広陵→広島)、田嶋大樹(JR東日本→オリックス)といった目玉選手の獲得を目指して競合するなか、DeNAだけが東の単独指名に踏み切った。当時はDeNAのドラフト戦略を「消極策」と批判する声もあったが、今のところその見方をねじ伏せるような成績を収めている。

7月23日現在(以下同)、14試合に登板して、7勝4敗。見事に先発ローテーションを守って、防御率2.72はリーグ4位の安定感だ。オールスター戦では、新人選手として唯一選出された。イニング間にベンチでバナナを頬張る「もぐもぐタイム」はもはや代名詞になりつつある。

身長170cmと投手としてはかなり小柄な部類で、特別な変化球を持っているわけでもない。だが、どの球種もムラなくコンスタントに投げ分けられる強みがあり、高い確率でゲームメイクができる。

立命館大4年時には大学日本代表に選ばれ、国際試合でもエース格として活躍した。強敵を相手にしてもコントロールを乱すことなく、本来の力を発揮できる。そんなメンタリティを持っている。

近年、DeNAは新人左腕が活躍している。昨年、新人ながら10勝をマークした濵口遥大(はるひろ)はシーズン開幕前にこんなことを口にしていた。

「僕が入団する前から、石田(健大)さんや今永(昇太)さんといった、年の近い左投手の先輩が活躍していました。精神的に安心感がありますし、技術を教え合うこともあるので、やりやすいです」

その好循環のなか、入団したのが東だった。濵口によると、「東は関西人なので自分から輪の中に入るのがうまい。キャンプの早い時点から溶け込んでいました」という。今季は石田、今永、濵口と先輩左腕は軒並み不振や故障に苦しんでいるが、"四男坊"の東が救世主になっている。

その東を追うのは、中日の豪腕クローザー・鈴木博志や、東の同僚でドラフト2位入団の外野手・神里和毅だろう。

鈴木 博はすでに41試合に登板し、150キロを軽く超える剛速球を見せつけている。好不調の波はあるものの、インパクトの強い活躍ぶりだ。一方、神里は14盗塁をマークするなど活躍していたものの、7月に入って失速。これからの巻き返しに注目したい。

パ・リーグの新人王争いはさらに熾烈(しれつ)を極めている。シーズン前から新人王候補筆頭に挙がっていたのが、田嶋大樹(オリックス)だ。社会人・JR東日本では、高卒1年目から3年間、強豪のエースとして投げ続けた。

「自分の投げられる球速に合った体づくりをするので、必要以上に体を大きくしない」

そんな独特な感性を持った投手で、キャラクター的にはかつての20勝投手で背番号29の先輩である井川慶に近い。登場曲を、ファンだと公言しているアイドルグループ・欅坂46の『エキセントリック』をチョイスしているように、変わり者と思われることをいとわない節がある。

佐野日大高時代から甲子園で活躍し、常にプロ注目の存在だったが、本人は「甲子園もプロもまったく興味がなかった」と打ち明ける。当然のようにライバルや理想とする選手もいない。

メディア受けするコメントを発することはないため、無愛想な選手だと思われがち。だが、その独自の世界観がファンの間で周知されれば人気選手になるに違いない。

技術的には、社会人で揉(も)まれた投手らしく、力強さと駆け引きを兼ね備えているのが特徴だ。腕が遅れて出てくるようなしなやかなフォームから、緩急自在の投球を見せる。それ以上に、たとえ調子が悪くても要所を抑えて試合をつくるのが田嶋の魅力だった。

だが、プロ入り後は5月20日までに5勝を挙げたものの、一方で大量失点するゲームもあり本来の姿とはいえない。6月27日には左肘に強い張りを覚えて登録抹消。ここまで12試合に登板して、6勝3敗、防御率4.06という数字が残っている。

故障が癒えて、シーズン終了までにどこまで状態を高められるか。本来の投球を取り戻せば2桁勝利は堅く、クライマックスシリーズ進出を争うチームにとって、間違いなく必要不可欠な戦力になるだろう。

田嶋と新人王を争うのは、ここまで遊撃手のレギュラーとして全試合に出場している藤岡裕大(ロッテ)や、オリックスの同僚であり高卒2年目ながら新人王資格を残す山本由伸になりそうだ。

藤岡は2割4分3厘の打率が上向けば、新人王はぐっと近づく。もし受賞すれば、昨年の源田壮亮(西武)に続いて2年連続で社会人・トヨタ自動車出身の遊撃手による戴冠となる。

対する山本は今季、リリーフとして大ブレイク。150キロを超える快速球に自在に動くカットボールを操り、一部では「今パ・リーグで最もすごい球を投げる男」との評価もある。

パ・リーグの"大穴"は、大卒2年目ながら1番打者としてブレイクした田中和基(楽天)。出場数は47試合だが、走攻守に爆発力のある選手だけに、後半戦にインパクトを残せれば可能性は十分だ。

セ・パともに実戦に強いサウスポーが新人王に輝くのか、それともシーズン後半にかけて強烈なアピールに成功する新鋭が現れるのか。その答え合わせをする日は、11月にやって来る。