若い世代が刺激を受けて、どんどんアピールしてほしいと語るセルジオ越後氏 若い世代が刺激を受けて、どんどんアピールしてほしいと語るセルジオ越後氏

W杯中断期間明けのJリーグで、注目の大物ふたりがデビューを果たした。

鳥栖に加入したフェルナンド・トーレスは、7月22日の仙台戦の後半早々に途中出場すると、ゴールこそ奪えなかったものの、さすがのプレーで何度もスタジアムを沸かせた。

特に71分のプレーは圧巻だったね。味方とのパス交換からペナルティエリア内に入ると、巧みな動きでマークを外し、右足でシュートを放った。あの一瞬の動き、脚の振りの速さには相手DFも驚いただろう。GKのファインセーブに阻まれたけど、このワンプレーだけでも彼の実力がわかる。

また、自らシュートを狙うだけでなく、76分には浮き球の絶妙なスルーパスを出した。受け手が(前所属アトレチコ・マドリードのFW)グリーズマンだったら得点になっていたかもしれないね。

身長185cmと大きくて、スピードも足元の技術もある。味方からパスが出てこなければ、ポジショニングを工夫して、パスを引き出す賢さも見せた。何よりゴールに向かう姿勢が素晴らしい。今後の活躍を十二分に予感させるデビューだった。現在下位に低迷し、J1残留を目指す鳥栖のヒーローになる可能性は十分あると思う。

神戸のイニエスタも22日の湘南戦で後半途中出場。彼もスルーパスなど技術の高さをのぞかせたものの、期待していたほどのインパクトは残せなかった。

トーレスと違って点取り屋ではないし、彼のパスセンスを生かすには、いい受け手がいないと厳しい。この日の神戸の選手の動きは不十分だった。イニエスタも覚悟していたと思うけど、「(前所属の)バルセロナとはずいぶん違うな」と感じただろう。そのギャップをどう埋めていくのかが今後の彼と神戸の課題になる。

おとなしそうな性格面も気になる。かつてのジーコ(鹿島)やドゥンガ(磐田)のように、ガンガン怒るなどしてチームを仕切れるか。そこは少し心配。そういう意味でも故障で離脱中のポドルスキがいれば心強い。今は彼の復帰が待ち遠しいね。

トーレスもイニエスタもまだチームに合流したばかり。今はウオーミングアップの段階。これからコンディションを上げ、チームメイトとの連携が深まれば、もっともっといいプレーを見せてくれるはず。ふたりが活躍して結果を出せば、Jリーグ全体が盛り上がるのはもちろん、ほかのチームも「ウチも大物選手を獲得しよう」となる。

かつて2014年にフォルランがC大阪に加入したときもそうした期待があったけど、うまくいかなかった。今度こそいい流れを生み出してほしい。

ちなみに、彼らがデビューを果たしたこの第17節は、ほかにも見応えのある試合が多かった。例えば鹿島の鈴木は、柏相手に2得点を決めるなど素晴らしいプレーを見せた。この節でのアピール度でいえば、トーレスやイニエスタよりも上だ。そうやって世界レベルの選手たちと比べて評価される環境は日本人選手にとって好ましいこと。これもトーレスやイニエスタがもたらす効果のひとつだと思う。

代表チームの強化のためには、その国のリーグのレベルアップが欠かせない。日本代表は世代交代が急務だし、再来年には東京五輪もある。若い世代が刺激を受けて、どんどんアピールしてほしいね。