若手のレベルアップが日本サッカーの最重要課題となると語るセルジオ越後氏 若手のレベルアップが日本サッカーの最重要課題となると語るセルジオ越後氏

東京五輪世代のU-21代表(五輪代表)監督で、西野ジャパンのコーチを務めた森保 一氏が日本代表の新監督に決まった。

今後の日本代表の最初のターゲットは2年後の東京五輪。そして、ベテランだらけになったA代表はこれから世代交代を進めていかなければならない。つまり若手のレベルアップが日本サッカーの最重要課題となる。それを実現するためにも、これまで分断していたA代表と五輪代表を連動させての強化は必須。監督の兼任は手っ取り早く、合理的な判断だ。

森保監督は昨年10月から五輪代表を率い、Jリーグの視察や海外遠征などの活動を通じて、すでに多くの若手の情報を持っている。また、短期間だったとはいえ西野ジャパンでコーチを務め、A代表の状況と課題も把握している。A代表と五輪代表の監督を兼任させるなら、現状、彼以上の適任はいないと思う。

日本人の指導者の中では実績も申し分ない。広島時代のリーグ優勝3回(2012年、13年、15年)は、毎年のように主力選手を引き抜かれながらのもの。もっと高く評価されていい。

森保監督のほかにも、実績のあるFC東京の長谷川健太監督、カリスマ性のある磐田の名波浩監督ら、力のある日本人指導者はいる。でも、それぞれの今の状況やこれまでの経緯を考えると、森保監督が一番スムーズで妥当な選択だ。

A代表は、年内に6試合が予定されている。いずれも国内での親善試合だ。はっきり言って強化よりも興行の意味合いが強いので、勝ち負けにこだわりすぎず、当面の目標となる来年1月開幕のアジア杯(UAE)に向け、じっくりと選手の見極め、チームづくりを進めればよいだろう。

一方の五輪代表は本番までもう2年を切っている。時間をかけてチームをつくっている余裕はない。まもなく開幕するアジア大会(インドネシア)から内容も結果も求めたいし、それ以降の試合も同様だ。

いずれにしても、スケジュール的に過密だし、かかるプレッシャーも大きいし、兼任は決して簡単なことじゃない。だからこそ、日本サッカー協会には森保監督が手腕を発揮できるようにしっかりサポートしてほしい。

例えば直近のアジア大会も、オーバーエイジ含めてどんな選手を招集できるかによってチームの質は大きく変わる。でも、Jリーグのシーズン中だけに選手派遣に難色を示すクラブもあると思う。また、そうした状況は今後も強化試合のたびに予想される。そこで協会がどれだけ頑張れるか。

今までの代表監督、特に外国人監督の場合、いつも協会と対立しているように見えた。技術委員会が外国人監督の要求に十分応えられず、時間がたつごとに心理的な距離が広がってしまう。ハリルホジッチの解任理由に挙げられた「コミュニケーション不足」なんて、まさにそれだよね。

また、ある過去の五輪代表監督は以前、僕に「(クラブとの折衝など)協会はあまり動いてくれない」「スタッフも遠征予算も足りない」と協会への不満をコボしていた。

でも、今回は、協会の田嶋幸三会長が「オールジャパンで」と強調しているのだから、監督に丸投げということにはならないはず。森保監督もその言葉を信じて、どんどんリクエストを出してほしいね。