ロシアW杯後に引退が噂されていた本田だったが、オーストラリアでの現役続行を決断 ロシアW杯後に引退が噂されていた本田だったが、オーストラリアでの現役続行を決断

ロシアW杯が終わってから、ひと月が過ぎた。Jリーグが再開し、欧州各国では新シーズンが始まったリーグもある。そんな今夏に、日本だけでなく世界中に興奮と感動をもたらしたサムライブルーの中には、新天地を求めた選手が少なくない。

セネガル戦とベルギー戦でゴールを決め、ロシア大会のチーム得点王となった乾貴士は、エイバルから同じくスペインのベティスへとステップアップ。この南部の名門クラブは昨季、宿敵セビージャを上回る6位でリーガを終え、4年ぶりに出場するヨーロッパリーグに備えて、ウィリアム・カルバーリョや乾といった各国代表選手を補強している。

カルバーリョには2000万ユーロ(約25億3500万円)の移籍金がかかったが、契約が満了していた30歳の日本代表はフリー。ベティスはおいしい取引を成立させた。

コロンビア戦で決勝点を奪った大迫勇也は、昨季にブンデスリーガ(ドイツ)から降格したケルンを離れてブレーメンに入団。移籍の決め手は新天地の指揮官の熱意にあり、本人が望む前線中央でのプレーが確約されているといわれている。

日本代表では不動のストライカーも、ブンデスリーガ4シーズンでの最高得点は一昨季の7ゴールで、昨季は不調のチームと足並みをそろえるように4ゴール。28歳FWは新シーズンに初の2桁得点を狙う。

ブレーメンに移籍した大迫はプレシーズンマッチで得点を記録するなど、早くも存在感を示している。「得点力以外は完璧」とも言われる評価を覆し、真のエースストライカーに成長できるか ブレーメンに移籍した大迫はプレシーズンマッチで得点を記録するなど、早くも存在感を示している。「得点力以外は完璧」とも言われる評価を覆し、真のエースストライカーに成長できるか

ベルギー戦で先制点を記録した原口元気もドイツ国内でクラブを替えている。ヘルタから昨季途中にデュッセルドルフにローン移籍し、中心選手として昇格に貢献した27歳の日本代表は、450万ユーロ(約5億7000万円)でハノーファーに買い取られた。同クラブには、アーセナルから期限付きで浅野拓磨も加入しており、日本人アタッカーの共演が見られそうだ。

さらには、武藤嘉紀(よしのり)がマインツ(ドイツ)からニューカッスル(イングランド)へ移籍し、プレミアリーグ開幕戦に途中出場。長友佑都は今年1月に期限付きで加入してリーグ優勝に貢献したガラタサライと正式契約を結び、トルコ・スーパーカップとリーグ開幕戦に先発している。アウクスブルクの宇佐美貴史は、昨季を過ごしたローン先のデュッセルドルフで、もう1年プレーすることになった。

一方、Jリーグに所属していた選手の欧州移籍には共通点がある。遠藤航(わたる)が浦和からシント=トロイデンへ、植田直通(なおみち)が鹿島からセルクル・ブルージュへ移籍したように、"守備者"たちがベルギーに活躍の場を求めた。

この2選手の加入により、同国1部リーグには合計7人の日本人選手が在籍。これは欧州の1部リーグにおいて、ドイツ・ブンデスリーガと並んで最多の人数だ(8月13日時点)。

ロシアW杯で出番なしに終わった植田(写真)や遠藤は、7月末に開幕したベルギーリーグで徐々に出場機会を増やしている。ほかの日本人選手と切磋琢磨し、さらに上のステップへと進みたい ロシアW杯で出番なしに終わった植田(写真)や遠藤は、7月末に開幕したベルギーリーグで徐々に出場機会を増やしている。ほかの日本人選手と切磋琢磨し、さらに上のステップへと進みたい

日本人選手にとって、ベルギーのクラブが魅力的に映る理由はいくつかある。

まず、外国人枠やEU外選手枠など国籍による規制がなく、公式戦にはベルギー国内で育成された(国籍は問わない)選手が6人登録されていればいい。これまでは欧州のクラブへ移籍しても、そうした規制で出場機会を得られなかった日本人選手もいるが、その不安は少なくなる。

また、ベルギーは複数の言語を公用語としていて多くの国民が英語を話し、比較的早くから移民を受け入れてきたように、多様性への理解もある。そして地理的には欧州主要リーグのちょうど中心にあたるため、スカウトが頻繁に訪れ、ビッグクラブの提携先も多い。欧州への最初のステップとして、最も適したリーグのひとつといえる。

シント=トロイデンに限っていえば、日本との結びつきが非常に強い。昨年11月にDMM.comグループが経営権を取得し、CEO(最高経営責任者)には元FC東京のGM(ゼネラルマネージャー)が就任。今年1月に冨安健洋を獲得し、7月には関根貴大をインゴルシュタットからローンで迎えており、遠藤はチームで3人目の日本人選手となる。

同胞の多くが欧州に移籍するなか、本田圭佑は自身の企業と関連のある南半球の国を新天地に選んだ。

日本代表の背番号4は、メキシコのパチューカからオーストラリアのメルボルン・ビクトリーに移籍した。彼の会社「ホンダ・エスティーロ」は昨年、当地のハイデルバーグ・ユナイテッドとパートナーシップ契約を締結。政府や自治体を巻き込んで同クラブを発展させ始めており、自身が近場に移ることでその進展を確認できるようになる。

移籍先のメルボルンで開かれた記者会見では、ビデオの生中継で登場し「新しい挑戦をうれしく思う」と抱負を語った本田圭佑 移籍先のメルボルンで開かれた記者会見では、ビデオの生中継で登場し「新しい挑戦をうれしく思う」と抱負を語った本田圭佑

本田の到来は、オーストラリア国内でも喜ばれているという。同国出身のスコット・マッキンタイア記者は、「連日、メディアは彼について報道し、そのほとんどがポジティブなもの。

Aリーグ史上最高の外国籍選手と評する声もあるほどだ」と話す。ここ4年ほどで観客数が大幅に落ち込んでいるリーグにとって、人気回復の"起爆剤"となりうる大型移籍ととらえられているのだ。

そんななか、本田がカンボジア代表の実質的な監督に就任するという報道が流れた。前例のない"二足のわらじ"を履くことになったが、「人間、男、教育者、社会活動家、起業家、エンジェル投資家、サッカー選手、人類学者」(公式ツイッターの紹介文より)である本田は大きな意義を感じているだろう。

選手としてメルボルン・ビクトリーをリーグ連覇に導き、指導者としてカンボジア代表(現在のFIFAランキングは166位)に初のW杯出場権をもたらすという、困難を極めるミッションへの挑戦が始まる。

そのほか、柴崎岳(しばさき・がく)や香川真司酒井宏樹らの移籍の噂も絶えず、現在無所属の川島永嗣(えいじ)の動向からも目が離せない。夏の移籍市場はもう少し開いている。