100回記念大会の甲子園が開幕した同日、侍ジャパンU-18の代表メンバーが発表された

この中の誰がショートを守るのか――。

第100回全国高校野球選手権大会が閉幕した8月21日、侍ジャパンU-18代表のメンバーが発表された。事実上の「高校日本代表」に選ばれたのは、18名の精鋭たち。史上初となる2度目の甲子園春夏連覇を達成した大阪桐蔭からは根尾 昂(ねお・あきら)、藤原恭大(きょうた)、中川卓也、柿木 蓮(かきぎ・れん)、小泉航平の5名が選出。今夏「金農フィーバー」を巻き起こす立役者になった吉田輝星(金足農)も、順当に選出された。

選手の顔ぶれを見て、印象的だったのが「ショートが多い」ということだ。前出の根尾をはじめ、小園海斗(こぞの・かいと/報徳学園)、奈良間大己(ならま・たいき/常葉大菊川)、日置 航(ひおき・わたる/日大三)。さらに大阪桐蔭の中川も、根尾が登板時にショートを守っていた。今夏の甲子園で輝いたショートが一堂に会したのだ。

一般的にショートを守れる選手は「つぶしが利く」といわれる。難易度の高いショートをこなせるなら、ほかのポジションに移っても順応できる傾向があるからだ。代表監督の永田裕治監督がこれだけショートを集めたのも、その公算が大きいからだろう。

となると気になるのが、「誰が日本代表の正ショートになるのか?」である。

8月25日に始まった練習初日のシートノックでは、ショートのポジションには根尾と小園のふたりが入った。野球ファンの認知度が高いのは投打ともにドラフト上位候補に挙がる根尾だろうが、レギュラー大本命は小園とみる。

小園はあるベテランスカウトに「すぐ1軍キャンプに連れていきたいくらい。ドラフト1位候補でしょう」と言わしめるほどの高い能力を持つ。特に本人が自信を持っているのが守備である。

「守備範囲、捕ってから送球までの速さ、肩の強さは自分が日本一だと思っているので、そこで目立ちたいですね」

小園は甲子園球場の土と芝の切れ目、「グラスライン」と呼ばれる深いエリアを守ることが多かった。前方の弱い打球は機敏にチャージして処理し、左右の打球はギリギリの球際を押さえる。つまり、守備範囲の広さに絶対の自信があるからこそ、小園は高校生離れした深いポジショニングが取れるのだ。

「一歩目が遅くなるとヒットになってしまうので、一歩目のスタートを大事にしています。ヒットになりそうな打球をアウトにできるのが自分の持ち味だと思います」

そう語る小園に、「根尾が注目を集めているけど、どう思っている?」と聞いたことがある。小園は苦笑いを浮かべながら、こんな強い言葉を返してきた。

「ショートにはこだわりを持っているので、誰にも絶対に負けたくありません」

小園は走ってもスピード感あふれるベースランニングを披露し、打っても年々力強さを増している。さらに、昨夏も高校2年生ながらU-18代表に選出された経験がある。よほどのことがない限り、小園がレギュラーショートとして日の丸を背負うだろう。

対抗馬はやはり根尾だ。高い身体能力とボディバランスのよさは、間違いなく高校トップクラス。中学時代にアルペンスキーの全国大会で優勝したという逸話が残るように、自分の体を自在に扱えるからプレーに華がある。

今夏の甲子園初戦、作新学院戦では、センターへと抜けそうなゴロを拾い、クルッと体を反転させて一塁に送球する美技を見せた。並のショートであれば、打球を押さえるだけで精いっぱいのところを根尾はアウトにしてしまう。

今大会では3本塁打を放つなど打撃面も進境(しんきょう)著しく、緊迫した場面でも平常心でプレーできる精神力と明晰(めいせき)な頭脳も持ち合わせている。

だが、問題は投手を兼任する可能性があること。永田監督に「守備の要をいたずらに動かしたくない」という心理が働いてもおかしくない。下級生時にはライトとして甲子園に出場していたように、根尾にはほかのポジションもこなせる融通性がある。

奈良間、日置はセカンド、サードなど他ポジションの適性を探っていくことになりそうだ。共に右打ちの強打の内野手。奈良間は静岡大会6試合で22打数18安打2本塁打、打率.818という信じられない成績をマークした。物おじしない性格も魅力で、代表練習では大声を張り上げてチームをもり立て、存在をアピールした。

日置は堅実な守備と左右に強烈な打球を飛ばせる打撃が光る。チーム全体を見渡して自分の役割を理解するクレバーさも、欠かせない戦力になるだろう。また、整った顔立ちも人気を呼びそうだ。

中川はもともと打力を高く評価された選手だったが、守備面も名門野球部での3年間で鍛えられ、別人のように上達してきた。ただ、代表では持ち前の打力を生かすため、ファースト、サードとしての起用が予想される。

侍ジャパンU-18代表は、現在、宮崎市で開催中(9月9日まで)の「第12回BFA U18アジア選手権」に出場している。今夏の甲子園で通算881球を投げ、「投げすぎ」と物議を醸した吉田をはじめ、投手陣には疲労が心配される選手も少なくない。

一方、野手はショート争いを繰り広げる有望株だけでなく、外野手にもドラフト1位候補の藤原や強肩強打の蛭間拓哉(ひるま・たくや/浦和学院)ら将来楽しみな逸材がひしめいている。

アジア制覇のカギを握るのは攻撃陣。なかでも正ショートになる選手が、守備でも重責を担う予感がする。

誰がU-18代表のショートを守るのか。それは、10月25日に開かれるプロ野球ドラフト会議の結果を占う意味でも、見逃せないポイントになりそうだ。