関西のスポーツマスコミが今、固唾(かたず)をのんで金本阪神の動向を注視している。もちろん普段から「阪神」は常に紙面の主役なのだが、それだけではない。スポーツ紙デスクがこう耳打ちする。
「9月に入りやや持ち直しましたが、8月下旬の負け越しで"非常事態警報"が鳴る直前まで追い詰められていました。あの2試合――澤村拓一(ひろかず)の自爆に助けられた26日の巨人戦、リードされながら幸運にも雨でノーゲームとなった31日のDeNA戦を落としていたら、最下位の可能性もあった。関西のスポーツマスコミには"金本降ろし"の嵐が吹き荒れていたはずです」
金本知憲(ともあき)監督は昨季で2年契約を満了し、今季は新たな3年契約の1年目。だが、「阪神に限っては、任期などあってないようなもの」と苦笑するのは在阪テレビ局関係者だ。
「例えば、真弓明信元監督も2年契約を結び直した1年目の2011年に辞任を余儀なくされています。金本監督はもし今年、CS(クライマックスシリーズ)進出を逃せば3年で2度目のBクラス。もし5位、6位となれば、進退問題に火がつくのは確実でしょう。関西のスポーツ紙はそれを焚(た)きつけるのが"お家芸"ですから(苦笑)。
ちなみに、阪神報道に関してはスポーツ紙が"与党"と"野党"に分かれます。現監督がかつて評論家をしていた新聞は、基本的に擁護派の与党。一方、次期監督候補の評論家を抱える新聞などは、野党のように批判が強くなる傾向があります。過去に何度も繰り返されてきた阪神の"監督降ろし"は、往々にして野党紙が火をつけてきたんです」
それでなくとも今季は、金本監督に対するファンの目が厳しい。CS出場争いをしている今ですら、SNSなどでは「金本じゃ勝てない」「強くできない」などの声が目立つ。
「それも無理はありません。"打撃の人"が監督になったのに、若い打者を育てきれず、3年たっても主軸は外様(とざま)のベテラン頼り。投手陣でも藤浪晋太郎が絶不調から抜け出せず、ほかの若手も思ったように伸びていない。チーム再建を掲げて就任したはずなのに、いまだに将来的なビジョンがまったく見えないんです」(スポーツ紙デスク)
その将来に対する不安が、「このまま金本監督でいいのか?」というムードに直結しているというわけだ。
「球団は3年前、就任に難色を示していた金本さんを口説き、三顧の礼で迎え入れたわけですから、現時点では解任なんて考えていないでしょう。ただ、阪神ほどファンの"風圧"に弱い球団はない。それもまた事実です。
現実的なことを考えても、3位との差はわずかですが、最下位とのゲーム差もそれほどない。もし5位、6位となったとき、球団が金本監督を守り切れるかどうか。事態は予断を許しません」(前出・テレビ局関係者)
阪神の試合を中心にウオッチしている、あるベテラン評論家はこう言った。
「最近の金本監督の表情を見ていると、どこか腹をくくったような感じがするな......」
それは迷いを払拭(ふっしょく)して戦う姿なのか、それとも何かを覚悟してのことなのか?
雨天中止の影響もあり、今季終盤には13連戦が組まれている金本阪神。綱渡りの戦いは10月までもつれそうだ。