初代ロードスター発売の1989年に始まったマツダのレースイベント「第29回メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」。この伝統あるレースへ11年ぶりに復帰を果たした週刊プレイボーイ。その参戦までのドキュメントの最終回を2日にわたり配信してきた【その1】【その2】に続きお届けする。果たして週プレチームの運命は?

■レース3日前に全員練習ってどうなのよ?

メンバー全員が国内A級ライセンスを何とか取得。本番2週間前に行なわれた初練習走行に小沢はケガもあって参加できなかったが、担当K、A部長、2年目Nが乗り込み、辻さんの特訓を受けた模様。

そして、いよいよ本番3日前。8月29日に行なった本庄サーキットでの2回目の練習だ。ここでようやく左足肉離れで戦列離脱していたキャプテンの俺が復帰! つうかさ、レース3日前に初の全員練習ってナニよ?って感じだけど、そんなこと言っててもしょうがない。現状のレベルチェックからやるとしよう。

こちらは、第一回目のサーキット練習。前を走る担当Kをあおり倒す二年目N。まさにオヤジ狩り!

まずは担当K。助手席に座ってコースイン。「26年間MT車に乗っていない」が口癖のKだが、ギアチェンジはコソ練の成果なのか、予想していたよりかはマシだった。しかも、Kは強気な性格だ。アクセルもそこそこ踏むのでは?と思っていたら、これが全然踏めない根性ナシ。叱責すると、「コーナーでどのギアに入れたらいいかわかんねぇんっスよぉ」と声も弱気に。ダイエットもしてねぇし、ダメだ、コイツ......。

気を取り直して今度はA部長の実力を見るべく、キャプテン小沢が助手席に座ってコースイン! わかっていたこととはいえ、やはりまだまだである。A部長、確かに持ち前の丁寧な性格が出ていて、加速はもちろんコーナーも進入前にキッチリスピードを落として曲がり始めるんだけど、すべてが過剰に超ゆっくりなのよねぇ。

直線加速はきっちり6000回転まで回しているから問題ないけど、特にコーナー進入時、小沢的にはすんげぇ手前からブレーキングしているように見え、大げさに言うと「クルマが止まっちゃうよ!」って言いたいぐらいの感じなのだ。ホント、サーキット走行は一朝一夕にはいかない。実に歯がゆい。

まずは立ち上がりスピードを稼ぐべく、コーナリングのクリッピングポイント(一番内側に寄るポイント)から出口に向け、自然にアクセルを踏み込むようにアドバイス。徐々にできるようになったけど、進入の遅さだけは、やっぱしすぐには解決できなかった。

担当KとA部長に共通するのはコーナー進入時に適切にブレーキングをしつつ、シフトダウンする技術、いわゆる「ヒール&トゥ」の壁である。つま先でブレーキを踏みつつ、カカトでアクセルを煽ってクラッチを合わせるという高等技術だけど、そんなのサーキット走行2回で出来るわけない。2人を見てるとブレーキに集中するとシフトチェンジが疎かになり、シフトチェンジに集中すると正確なライン取りが出来なくなるっつう悪循環。要は全域余裕がない。

仕方ないのでそこはサーキットの鬼である辻さんのアイデアで、コーナー進入時はブレーキングとステアリング操作に専念。クラッチ操作をゆっくり行ない、シフトショックをなんとかごまかしてもらう作戦を採用。すると気のせいかカタツムリ並みのペースとはいえ、徐々に速くなってきた。

立ち上がりは明らかに速くなり、なによりハイスピードコーナー最大のキモとも言える進入も鋭くなり、最後は2人とも突っ込みすぎでハーフスピンするほどに! それよそれ! タイヤ滑らせてこそサーキットよ! とはいえ本番まで練習はマジでこれで最後。本当にこの状態でレースに出ていいのか? キャプテン小沢、少々不安になってきました。名門チーム週プレの顔に泥を塗りたくないんだが......。

左足を負傷しながらも1分13秒を叩き出したキャプテン小沢の話を聞くチーム週プレ

■レースは惨敗そこから得たものとは?

さて、9月1日の決勝当日! 結果はぶっちぎりの最下位であったが、とにかくホッとしたのはマシン、そしてドライバー5人が全員無傷だったこと。"無事これ名馬なり!"とはよく言われることだが、レースは自ら目標を設定し、それを遂行し、達成することがなによりも大切だ。

モータースポーツ、中でも耐久レースはチームプレイであると同時に、個人プレイの積み重なりでもある。確かにぶっちゃけチーム週プレのレベルは低いし、他チームからみると鼻くそレベルだ!

でもサッカーや野球などと比べ、自分の頑張りが如実にタイムに現れる。自分の成功、失敗、実力はすべて自分で受け止められる。そこが自分のエラーも仲間のホームランで、帳消しになる他のスポーツとひと味違うところだ。

チーム週プレは惨敗。ダントツの最下位となった

特に予想外のレスポンスであり、成長を見せたのが担当Kだ。決勝当日は大雨と夜間の暗さもあってタイム的には伸び悩み。ってか初めてのレースで夜の雨ってとんでもなく怖いよ。キャプテン小沢は、終了後に「もうヤメます。俺、レースはいいです......」と言われることを覚悟していた。ところが結果は真逆!

「バンバン抜かれまくって悔しい! 来年、絶対リベンジっス!」と超燃えまくりで、翌日にはコソ練用のMT車購入の相談をしてきやがった!

「小沢さん、エイト、RX‐8を買おうかと思ってるんですが......どうっスかね?」

えっ(笑)。去年、ATのクルマ買ったばっかじゃん! Kよ、貴様、マジで買うつもりなのか! 

「このまま終われるわけないじゃないですか! つうか、RX‐8のMTどうです?」

担当Kが本気でMT車を買うつもりならば買うべきクルマは中古のロードスターしかなかろう! 経験がそのまま本番に役に立つし、パーツも豊富。タイヤサイズも小さいからタイヤ代も安い!

「さすがに新型は買えませんが、初代、2代目、3代目のロードスターのどれが小沢推しですか? キャプテンの言うクルマ買いますよ!」

そりゃアンタ、価格は高めだけど、頑丈な3代目で決まり! まぁ、小沢は中古車屋じゃないから知らんけどね。

Kが何を買うんかはまだわからない。だが、ひさびさにレースの魔力であり、底ヂカラを知った思いだ。それは人を走りにハマらせる魔力。今回の担当Kのそれは小沢が20年以上前にMR2を買った感覚に近いかもしれん(笑)。時間はかかるけど毎日走れば絶対速く上手くなる。それがモータースポーツってヤツの魅力なのだ!