A代表の今後に期待を寄せる宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第64回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、初戦を見事に勝利で飾り、好スタートをきった森保一(はじめ)監督のA代表について。コスタリカ戦での彼らのプレーを観て、宮澤ミシェルは日本代表への期待を高めているという。

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日本代表戦で中断していたJリーグが再開したけど、みんないいプレーを見せているよ。やっぱり、森保監督のA代表初戦のコスタリカ戦(3-0)が、Jリーグのすべてのプレイヤーに刺激となったのは間違いないね。

コスタリカ戦はアグレッシブで前向きなプレーを見せてくれて、本当にいい試合だった。選手たちは連動しながら、それぞれの個性を発揮していて、森保監督のもとで、何年も一緒にプレーしているかのような錯覚を覚えるほどだったよ。

森保監督はU-21代表で臨んだ8月のアジア大会を3-4-2-1で戦っていたから、A代表も同じシステムを使うかと思ったけれど、意外にも4-4-2だった。だけど、これは選手それぞれの特性を考えてのことだったんだろうね。

堂安律、中島翔哉、南野拓実を一緒に起用したいとなったときに、「一番ハマるシステムは何だ?」と考えて、森保監督の代名詞的な3-4-2-1ではなく、選手個々が持ち味を出せる4-4-2。この柔軟性こそが、森保監督に日本代表監督を任せたメリットだよね。

右サイドで堂安、左サイドで中島が持ち味のドリブルを見せながら起点となったけれど、このチームの肝は青山敏弘だった。試合開始直後からサンフレッチェ広島で見せるいつも通りの青山のプレーを発揮して、ゲームを動かしていた。青山が攻守でリズムを生み出してくれるから、青山とコンビを組んだ遠藤航も思い切って自分の良さを出せた側面はあるよね。

このふたりを中盤の底に並べるあたりが森保監督らしいよ。堅実で気の利いたプレーでチームを裏から支える姿は、まるで現役時代の森保監督の分身のようだったよ。そう言うと森保監督はきっと、「自分より全然上手い」と言うだろうけど、チームのために惜しまずに働ける選手の重要性をわかっているからこその起用だったね。

日本代表は10月にパナマ代表、ウルグアイ代表と戦い、11月にも2試合が予定されているけれど、僕はコスタリカ戦で招集された選手たちをベースにしながら、彼らがどう成長していくのかを見たいと思っているんだ。

大迫勇也や乾貴士、柴崎岳、香川真司、原口元気、吉田麻也、長友佑都といったW杯ロシア大会を戦った中心選手たちを招集するのは、もっと後でいいよ。彼らには所属クラブでのレギュラー争いに専念してもらい、その間にコスタリカ戦のメンバーがレベルアップをしていく。それができて初めて実績ある彼らが融合する方が、日本代表が大きく前進するからね。

それに、佐々木翔や室屋成、車屋紳太郎、三竿健斗、天野純といったJリーグで結果を残している選手たちが代表に招集されたことで、他のJリーグ組に与えている効果を継続してもらいたいんだ。彼らが代表に呼ばれたことで、他の選手たちも「オレも代表に!」っていう高いモチベーションを手にしている。日本サッカーのレベルを高めるには国内組のレベルアップは欠かせないし、ここがグッと押し上げてこないことには、W杯ベスト8を実現するには不可欠なことだからね。

それにしても新監督の初陣で、これほど先行きに明るさを感じ、大きな期待を寄せたくなったのは久しぶりだったよ。それこそ2010年10月にザッケローニ元監督の初戦でアルゼンチンに1対0で勝利して以来。あの時は相手にはメッシがいて、マスケラーノがいて、テベスもいた。ただ、アルゼンチン戦の時の日本代表はW杯南アフリカのメンバーが主体だったけどね。

今回の日本代表は世代交代を推し進めている中で、10月のウルグアイ戦でどういう試合を見せてくれるのかは楽しみだよ。W杯ロシア大会で日本と同じくベスト16に進んだけど、彼らにはスアレス、カバーニという世界有数の2トップがいる。

ただ、彼らの攻撃の圧力は凄まじいけれど、森保ジャパンの若い選手たちは臆することなく戦う気がしてならないんだ。それができるだけの高い個の力を持っていて、短い期間でも互いの良さを出し合う共鳴力が高いからね。それだけに森保監督がどんなメンバーを招集し、どんな試合を見せてくれるのか、いまから待ち遠しくて仕方がないよ。

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