メジャーでは3番が最強打者? 走攻守三拍子そろったトリプルスリーが最強? いやいや、日本野球はやっぱり「4番」でしょ!
2018年のパ・リーグで火を噴いた、どこからどう見ても"ザ・4番"な右投げ右打ちの長距離砲を直撃!
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秋の埼玉・所沢にこだまする山賊の咆哮(ほうこう)。今日もまた「や~まか~わほ~たか」の歌声に乗り、えげつない打球がスタンドへと突き刺さる。
山川穂高(やまかわ・ほたか)。10年ぶりのパ・リーグ制覇を目前にした埼玉西武ライオンズの4番、つまり"山賊打線"と呼ばれし最強打線の頭目だ。
「正直な話、ホームラン以外、まったく興味ないです」
日本人右打者としては、アマチュア時代から師と仰ぐ西武の先輩・中村剛也(たけや)以来7年ぶりとなる40号を放った2日後、山川はそう言い切った。
「40本は目指していた数字だったので、本当にうれしいです。だいたい3試合に1本打てばシーズン40本。2軍ではそのペースで打つことができていたのですが、1軍で自分のバッティングが通用しているかどうかの目安だと感じていたし、近年のタイトルの目安でもある数字です。それに、やっぱり日本人の右打者で40本といえば、中村さんですから」
3年目までなかなか1軍で結果が出なかったが、昨年8月に大ブレイク。年をまたいだ今年3・4月期まで3期連続で月間MVPを獲得、今季はここまで全試合4番でスタメン出場している。
「『一試合一試合、4番を勝ち取る』と考えていた昨年とは、4番への意識も変わりましたね。今季は絶対に4番で全部出て、絶対にホームラン王を獲(と)るという目標がありました。そのために何が変わったって、やっぱり練習です」
山賊打線の始動は早いが、なかでも山川はアーリーワークが始まる前に球場に来て、全力で体を動かし、外野でダッシュを繰り返す。さらには試合後も室内練習場で打ち込むことが日課だ。
「一年間出続けるための準備と、今のパフォーマンスを何年も続けるための練習を兼ねているんです。目の前の試合のことだけ考えたら、ちょろっと打てばいい日もあるんでしょうけど、全力で振る練習をしないとスイングスピードって必ず落ちていきます。全球フルスイングで"めっちゃホームランを打つ練習"をしています。そこは負けたくないですからね。
ただ、『努力してます』とか『練習してます』とかはどうでもいいんですよ。僕はこのチームで4番を打たせてもらっている人間として、朝から晩までバッティングのことを考えなければいけない。チームの誰よりもバッティングのことを考えているのが4番だと思っているので」
入団以来、期待をされながら考えすぎて自分の長所を見失いかけたこともあったという。だが昨年8月、一本の中途半端なショートゴロを後悔し、弱い心は断ち切った。以来、「自分の長所はホームラン」の信条は絶対に揺るがない。テレビ番組に電話出演した際、「ヒットの延長がホームラン」を持論とするあの野村克也氏にも、堂々と「自分にとってはホームランの打ち損ないがヒット」だと言い切った。
「誰に何を言われようとも、僕はホームランを打つことしか考えていません。周りからは『三振ばかりしやがって』とか、『チャンスなんだからほかにも打ち方があったでしょ』とか、思われることもあるでしょう。でも、ホームランってどうしてもひとくくりにされがちですが、実際には『どこを目がけて打つ』とか、『このカウント、この球種での打ち方』とか、いろんな種類があるんです。
今年は約600打席に立っていますが、それで40本ちょっとしか打てない。550回以上は失敗しているんです。一年間ずっと体が万全で、目とバットが当たるポイントが合っていれば、半分以上ホームランを打てますよ。でも、そんなことはありえないですからね。ダメなときはダメ。割り切ろうと思ってもやっぱり悔しいので、なかなか割り切れないんですけど、その難しいことにチャレンジし続けることが重要なんです」
『週刊プレイボーイ』42号(10月1日発売)では、山川穂高の4番という打順にかける思いに加え、同じく右投げ右打ちのNPB最重量スラッガー、ロッテ・井上晴哉のインタビューも掲載している。
●山川穂高(やまかわ・ほたか)
1991年生まれ、沖縄県出身。富士大学から2013年ドラフト2位で西武に入団。今季はここまで全試合4番スタメン。憧れの打者は中村剛也。愛称は地元・沖縄名産の豚にちなんで"アグー"。身長176cm、体重108kg