週刊プレイボーイ43号から新連載をスタートした堂安 律 週刊プレイボーイ43号から新連載をスタートした堂安 律

森保ジャパンの初陣、"地元"大阪でのコスタリカ戦で日本代表デビューを果たした堂安 律(どうあん・りつ)。

昨季オランダでブレイクした勢いのまま堂々とプレーし、3-0の快勝劇の原動力となった。

チーム同様、順調な第一歩を踏み出した"日本代表の新エース候補"は代表初キャップを「吐きそうなくらい緊張した」と振り返ったが、その真意とは――。

週刊プレイボーイ43号(10月6日発売)から隔週掲載の新連載『堂安律の最深部』がスタート。日本サッカーの未来を担う若き野心家がさらけだす、思考、心情、哲学のすべて。

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■今までの人生でいちばん緊張した

日本代表に初めて選ばれて、試合にも出させてもらい、あらためてその影響力はすごいなと感じさせられました。9月11日のコスタリカ戦は、いろんな方々に「ワクワクした試合だった」と言ってもらいましたし、オレの実家の横にある畳屋のおっちゃんまで「楽しかったわ」と喜んでくれたみたいですから。

代表合宿中に起こった北海道胆振(いぶり)東部地震の影響で、本来9月7日に予定されていたチリ戦(札幌ドーム)が中止となってしまうなど大変なこともありました。でも、もし北海道で被災された方々にもそういうふうに思っていただいていたなら、これほどうれしいことはないですね。

試合後にはチームメートに「まったく緊張してなかったね」なんて言われました。ガンバ時代の先輩のヒガシくん(東口順昭/ひがしぐち・まさあき)やゲンタくん(三浦弦太)も声かけひとつなし。どうやら周囲からはオレが緊張しているようには見えなかったらしいのですが、試合前はホンマに吐きそうなくらい、今までの人生でいちばん緊張していたんです。

右MFで先発して85分までプレー。ゴールこそなかったものの、攻撃の起点として存在感を放っていた 右MFで先発して85分までプレー。ゴールこそなかったものの、攻撃の起点として存在感を放っていた

前回、日本に帰ってきて想像以上に自分のことがニュースで取り上げられていることに気づきました。そのギャップには正直驚きました。でも、自分の中ではそれがプレッシャーになったりすることはなく、「いちばん若いから取り上げられているだけ」くらいに思っていました。

スタメンで出られそうなことは練習の雰囲気でわかっていました。緊張感が高まってきたのは前日の夜あたりで、家族や友達がたくさん見に来てくれるということを考えたら少し落ち着かなくなってきたんです。

普段はスマホなどを見て時間をつぶすのですが、「堂安」という名前がたくさん出てくるので、SNSやネットニュースを見るのをやめました。だって、試合前に自分のニュースを見てもしょうがないじゃないですか。

オレ、試合前にサッカーのことを考えたら絶対に眠れないんです。だから前夜は、ホテルでひとり、『プリズン・ブレイク』を見ていました(笑)。英語の勉強にもなるし、気をそらすためにもよく海外ドラマを見るんです。まあ、それで逆に興奮しちゃって眠れなくなることもあるのですが......。

当日も、普段は試合に出発する前に友人やマネジャーに電話したりしてリラックスするのですが、その日は緊張しているからか誰にも連絡を取らないようにしていました。

でも、出発10分前に小学校高学年のときに通っていた西宮SS時代のコーチで、今も仲良くしている早野 陽(よう)コーチに「どうしよう、オレめっちゃ緊張してんやけど」って連絡したら、陽コーチはもうスタジアムに着いていて、「律、オレのほうが緊張しているから大丈夫や」って言うんです。「オレは何もできひんけど、オマエは自分でなんとかできるやろ」って(笑)。そう言われて、少しだけ楽になりました。

■意識が劇的に変わった、ということはない

試合前は緊張していましたが、始まってからはまったく緊張感はなかったです。そういう意味では、これまでとは質の違う緊張でした。例えば、高2のときにガンバで初めてスタメンで出たときには、口では「自信あります」って言っていましたけど、実際はビビリながら試合に出ていました。

当時は単に自信がなかったんです。でも、今はオランダで結果を残してきた自負がありますし、自分自身に期待もしていましたから。

会場では「堂安コール」がいちばん多かったと聞きましたが、まったく耳に入ってこなかったです。最近は集中すると、そういうことがよくあるんですが、それくらい試合に集中できていたってことですかね。

ガンバ時代には、サポーターの声が届くとやっぱりうれしかったし、それで頑張れていた部分もあったのですが、オランダに行ってからはそうした声援が聞こえへんくらい集中することがけっこう多いんです。

プロである以上、どんな試合も絶対に結果を出さないといけないという気持ちでやっていますし、北海道の地震があったからよけいにそういう気持ちになった部分もあります。森保監督も練習のたびに「日本に元気を与えるためにも絶対に勝利しよう」ということを強く話されていましたから。

コスタリカ戦は、自分で点を取れたら最高でした。でも、佐々木 翔選手(サンフレッチェ広島)のヘディングシュートが先制点につながったときはちょっとだけホッとしました。先制できれば、より自分のプレーを出していけるのはわかっていましたし、個人的に前半はチームにフォーカスしすぎた分、弱気なプレーも出てしまっていましたから。逆に後半は調子も上がって楽しかったし、あっという間に時間が過ぎました。

代表に入ったことで刺激を受けましたし、あらためて気が引き締まった部分はあります。ただ、これまで努力してきたことに対して自信はありますし、意識が劇的に変わったということはないです。

もちろん、自分のサッカー人生の中のいい思い出になったのは間違いないです。だって、いつか振り返ったときに「あのとき、めっちゃ緊張してたな」って笑い話になるじゃないですか(笑)。

●堂安 律(どうあん・りつ)
1998年6月16日生まれ、兵庫県尼崎市出身。ガンバ大阪を経て、現在はオランダ1部・FCフローニンゲンに所属。海外挑戦1年目の昨季はリーグ戦29試合に出場して9得点4アシストを記録。今年9月、満を持して日本代表デビュー

★隔週連載「堂安 律の最深部」。次回は週刊プレイボーイ45号(10月22日発売)に掲載します。