サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第67回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、いよいよ開幕した今年のチャンピオンズリーグ(以下CL)本戦について。果たして、前人未到のレアル・マドリードの4連覇はあるのか? はたまた、バルセロナが覇権奪回するのか? それ以外にも注目チームが目白押しのチャンピオンズリーグの見どころを宮澤ミシェルが解説する。
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CL本戦のグループステージが9月から始まったけど、ヨーロッパ各国のリーグを代表するクラブ同士が対戦するだけに、おもしろい展開の試合が多いね。
今年の見どころは、なんといっても王者レアル・マドリードが前人未到の4連覇を達成するかどうか。CLの前身のチャンピオンズカップが始まった1955−56から、レアル・マドリードは5連覇を成し遂げたけれど、当時と現在では大会の規模はまるで違うからね。これだけ大きな大会になっての3連覇というだけでも大偉業。4連覇なんて夢のまた夢だから、果たしてどうなるか楽しみだね。
そのレアル・マドリードは、ローマ(イタリア)、CSKAモスクワ(ロシア)、プルゼニ(チェコ)と同じグループGに振り分けられて、第1節でグループ内最大のライバルのローマを本拠地サンチャゴベルナベウで撃破(3対0)。これを見たときには簡単にグループステージは突破できるなと思ったら、第2節のアウェーでのCSKAモスクワ戦は0対1で敗戦。やっぱりひと筋縄では行かないもんだね。
なにが起きても不思議じゃないのがCLのおもしろいところだからな。ローマだって去年は準々決勝のバルセロナ戦で、アウェーでの初戦に1対4で敗れて、これは終わったなと思ったら、ホームでの第2戦に4対1で快勝して勝ち抜いていたからね。
ホームとアウェーではガラッとチーム状態や戦い方が変わるから、今シーズンの第1戦ではレアル・マドリードに敗れたローマだって、次はホームで戦えるアドバンテージを生かして勝利する可能性は十分にある。それでレアル・マドリードがもたつくようだと、このグループはもつれるかもしれないね。
CLの過去10シーズンで優勝クラブは3連覇中のレアル・マドリードが4度制覇し、それに続くのがバルセロナで3度。ラ・リーガのライバルは、CLでもやっぱり関係は変わらないってことだな。
そのバルサは、去年は準々決勝でまさかの敗戦を喫したから、今年こそはと覇権奪回に燃えていると思うよ。だけど、8グループあるなかで、もっとも厳しい組に入った。トッテナム(イングランド)、インテル(イタリア)、PSV(オランダ)と一緒のB組は「死の組」だよね。
それでも第1節でPSVを4対0で退けて、第2節でもトッテナムに4対2で勝利。グループ最大の敵であるトッテナム戦に向けては、その前にあったリーグ戦のビルバオ戦にメッシとブスケツを温存したけれど、ここから先の戦いでは、主力選手をどれだけ休ませながら、いいコンディションを維持できるかがバルサにとっての課題になるだろうな。
B組に劣らず、グループCもレベルの拮抗したクラブが揃っているよ。ナポリ(イタリア)、リヴァプール(イングランド)、パリSG(フランス)、レッドスター(セルビア)。順当にいけばパリSGとリヴァプールで、監督にカルロ・アンチェロッティが就任したナポリがどこまでやれるかだよね。レッドスターは知名度では劣るけれど、今年は久しぶりにメンツがいいらしいんだよ。グループステージのスタートこそ1分1敗とつまずいたけど、まだまだチャンスはある。この組は、どこが勝ち上がってきても不思議はないよ。
日本人選手はグループDのガラタサライで、長友佑都が2戦ともスタメン出場しているんだよ。同組のポルト(ポルトガル)、シャルケ(ドイツ)、ロコモティフ・モスクワ(ロシア)との実力も拮抗しているから、長友には決勝トーナメントまで勝ち上がってもらいたいね。
ほかにもグループGのCSKAモスクワにはこの夏に仙台から移籍した西村拓真もいるし、グループAのドルトムントには香川真司だっている。西村拓真に関しては、まだ出場できていないけれど、早くコンディションを上げてチームにフィットし、最高峰の舞台でプレーする姿を見せてくれるのを楽しみに待っているよ。
今シーズンの決勝戦の舞台は、スペインのマドリードにあるエスタディオ・メトロポリターノ。ホームスタジアムでの決勝戦にアトレティコ・マドリードが勝ち上がってきたら大いに盛り上がるだろうな。だけど、戦いはまだ始まったばかり。これからじっくりと楽しんでいきましょう!