ユヴェントスに移籍したC・ロナウドについて語る宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第68回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、今シーズンのクリスティアーノ・ロナウド(以下、C・ロナウド)について。現在、セリエAで首位を走るユヴェントスが好調な理由に、レアル・マドリードから移籍してきた彼の存在があると宮澤ミシェル氏は解説する。

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開幕からの9戦で8勝1分とユヴェントスが早くも独走体制を築き始めているけれど、好調なチームを牽引しているのは、やっぱりC・ロナウドなんだよ。

開幕前にレアル・マドリードから1億1700万ユーロ(約153億円)でユヴェントスに移籍したけれど、開幕からの3試合はノーゴール。だけど、メディアからも批判が出始めた矢先の4戦目のサッスオーロ戦で2ゴールを決めると、第5節のフロジノーネ戦、第8節のウディネーゼ戦、第9節のジェノア戦でも1得点ずつをマークしている。

昨年はリーグ戦で27試合26得点の成績だったけれど、前半戦はわずか4得点しかできなかったんだよな。それを思えば、新天地では順調に滑り出したと言えるんじゃないかな。

しかも、今季のC・ロナウドでこれまでと違うのは、アシストが増えているんだ。昨年はリーグ戦を通じて5アシストしかなかったのが、今年は早くも4アシスト。優勝を狙うライバル・ナポリと対戦した第7節は、C・ロナウドはノーゴールに終わったけれど、3得点すべてに絡んでチームを勝利に導いたからね。

この変化はチームが変わったことが大きく影響しているね。昨年まではガレス・ベイルやカリム・ベンゼマなどが潰れ役をしてくれて、C・ロナウドは彼らがお膳立てしてつくってくれたチャンスでゴールを決めることに専念すればよかった。

だけど、ユヴェントスではまわりの選手だったり、チームの戦い方だったりがレアル・マドリードとは違うから、C・ロナウドはゴールを決めるだけではなく、チャンスを作ることも求められているんだ。

だから今季はアシスト数が増えているんだけど、これからもっとC・ロナウドがチームメイトとの連携が深まっていって、得点を奪うことだけに専念できるようになれば、ユヴェントスはリーグ戦だけじゃなくて、チャンピオンズリーグでも勝ち進んで行くんじゃないかな。

長い戦いのチャンピオンズ・リーグでは、大きな重圧がかかる試合になればなるほど、C・ロナウドの決定力というものは必要になってくるからね。

そのチャンピオンズリーグでは、過去3シーズンのトータル38試合で43ゴールを決めて、レアル・マドリードを3連覇に導いたC・ロナウドだけど、新天地でのグループステージ第1戦では、まさかの出来事が起きたね。バレンシア戦の前半29分に相手選手の頭をつかんだ行為に対して一発退場。目に涙を浮かべながら抗議したけれど、判定は覆らなかった。

あのレッドカードはボクの目にはちょっとかわいそうに映ったな。ロナウドと交錯したムリージョが大袈裟に倒れたから、ロナウドは相手の頭を抱えながら「つまらない演技はやめろよ!」みたいなことを言っただけだと思うんだ。だけど、指が髪の毛に絡まったことで、距離のある位置から見ていた副審には髪の毛を引っ張ったように見えてしまったんじゃないかな。

ただ、それでもユヴェントスは勝利できたし、チームの結束力は高まったと思う。C・ロナウドも「次はやってやる」と燃えるだろうしね。CL第2戦のヤング・ボーイズ戦はターンオーバーで出番がなかったけれど、次は古巣のマンチェスター・ユナイテッド戦(10/24)が控えている。どんなプレーを見せてくれるのか楽しみだよ。

ピッチ外ではレイプ疑惑報道が出て、いろいろ騒がれているけれど、それとは対照的にサッカーではいいプレーを見せ始めているからね。これからも集中力を保って、ロナウドらしいプレーを見せてくれるのを期待しているよ。

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