2マッチ連続で同じ選手が出ることは禁止されている。相手のオーダーを予想して、いかに勝利の確率を上げるかという戦略も重要だ 2マッチ連続で同じ選手が出ることは禁止されている。相手のオーダーを予想して、いかに勝利の確率を上げるかという戦略も重要だ

10月24日、25日に、日本初の卓球リーグ「Tリーグ」が開幕する。

日本初のプロ卓球選手として活躍した松下浩二チェアマンが、日本に「世界最高のリーグをつくる」ことを目的に設立されたTリーグ。その船出となるシーズンには、男女それぞれ4チームが参戦する。

【男子】木下マイスター東京(東京)、T.T彩(さい)たま(埼玉)、岡山リベッツ(岡山)、琉球アスティーダ(沖縄)

【女子】木下アビエル神奈川(神奈川)、TOP名古屋(愛知)、日本生命レッドエルフ(大阪)、日本ペイントマレッツ(大阪)

男子で優勝候補と目されているのは、木下マイスター東京だ。水谷隼(じゅん)、張本智和という「日本男子2トップ」の選手を擁し、ほかの選手も日本代表クラスの選手がズラリとそろっている。

それに続くのは、その木下と開幕戦でぶつかるT.T彩たまだろう。リオ五輪で団体銀メダル獲得に貢献した吉村真晴(まはる)はもちろんだが、韓国の鄭栄植(チョン・ヨンシク)にも注目したい。同選手は今年5月の世界選手権団体で水谷、張本を連破しており、開幕戦でもその再現を狙っている。

一方の女子は、石川佳純(かすみ)が加入を発表したことで注目を集めた木下アビエル神奈川と、日本生命レッドエルフがリーグを牽引(けんいん)しそうだ。日本生命の柱は、2017年に中国のトップ3を倒してアジア女王に輝いた平野美宇(みう)と、長身を生かしたパワーが魅力の早田(はやた)ひな。若き日本代表コンビが好調を維持すれば、戦いを優位に進められるだろう。

各チームは、来年2月までに21試合のリーグ戦(ホーム&アウェーおよびセントラル方式)を行ない、上位2チームが3月のファイナルで優勝を争う。試合はダブルス1マッチ、シングルス3マッチの「4マッチ制」で、4マッチを終えた時点でマッチカウントが2-2になった場合は延長戦に突入。11ポイント先取の1ゲームを戦うことになる。

3マッチを終えた時点でマッチカウントが3-0になれば勝敗は決するが、その場合も4マッチまで行なう。延長戦での勝利を含め、勝ったチームには勝ち点3が与えられるが、4-0のストレートで勝利した場合にはさらに1ポイントの"ボーナス"が追加。

年間順位でほかのチームを上回るためには、負けが決定しても最後まで粘ることが重要になってくるため、最後まで白熱した戦いが期待できそうだ。

記念すべき10月24日の男子開幕戦(T.T彩たまvs木下)、10月25日の女子開幕戦(TOP名古屋vs日本生命)は、共に東京・両国国技館で開催される。そのハコの大きさはもちろん、強気すぎるチケットの値段が発表された際には、ファンから驚きと戸惑いの声が上がった。

普段は相撲の土俵がある位置に卓球台が1台設置されるのだが、試合の様子を真横から観戦できる「Sプレミアムシート」の値段は、なんと10万円。距離が離れるごとに6万円、4万円、3万円と下がっていくものの、最低額も2階席の6000円(高校生以下は3000円)だ。

6000円を出せば、Jリーグやプロ野球のリーグ戦であればほぼ最上級の席が確保できる。しかし意外にも、チケット販売が始まると高額な席から予約が入り、10万円の席は早々に完売。

席数の違いはあるが、卓球台から遠い席のチケットはまだ残っている(10月15日時点)。選手の動きが速く、ボールが小さい競技なため、「一度しかない初の開幕戦を、どうせなら近くで見たい!」というファンも多いのだろう。

遅れて10月26日に行なわれるほかの4チームの開幕戦からは、主に各チームの本拠地で試合が開催される。チケットの上限は会場によって1万8000円から1万円まで幅があり、最低額が2000円(高校生以下は1000円)と、手が出しやすい値段に。

それでも、Tリーグ参戦への条件のひとつになっていた「2000人程度の観客を収容でき、興行できる施設」の客席が埋まるかどうかは、どれだけ目玉の選手が試合に出るかに左右されそうだ。

Tリーグでは、世界ランキング10位以内、または直近4シーズンの主要な国際大会で好成績を収めた「Sランク」の選手は、リーグ8試合以上に出場しなければならない。

裏を返せば、リーグの半分以上を欠場してもいいということ。五輪の代表選考基準となるポイントを得るため、ワールドリーグ出場を控えたトップ選手がごっそり休む試合が出てくる可能性も否定できない。Tリーグも、最も成績の良かった選手が世界選手権の代表候補になる規定はあるものの、五輪の選考に関わる仕組み作りを探っていく必要があるだろう。

Tリーグは、各チームが独立した"完全プロ"ではなく、「プロとアマの混成」という形になっているため、チームを持つ実業団や企業から出るプロとしての報酬額などもまだ不透明。そういった課題も含め、Tリーグの今後の成長にも注目していきたい。