10月の親善試合について語った宮澤ミシェル氏 10月の親善試合について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第69回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、10月に行なわれた日本代表の親善試合について。パナマ、ウルグアイと2戦とも勝利を飾った日本代表。その好調の要因には、森保一(はじめ)監督ならではの選手起用があると宮澤ミシェルは絶賛する。

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日本代表は10月の親善試合でパナマを3対0、ウルグアイを4対3で下した。守備と攻撃をコンパクトにというコンセプトをしっかりチームに落とし込んでいて、その戦い方ができているのが大きいね。

だけど、それ以上にこの結果は森保監督ならではの選手起用があるからこそと言える。今回招集した23選手のうち22人を2試合で起用した。ボクからすれば真っ当な選手起用だと思うけれど、実はこれまでの日本代表監督のときはあまりなかったことでもあるんだ。

パナマ戦は大迫勇也と南野拓実を使う一方で、追加招集した北川航也や川又堅碁もピッチに送り出し、ボランチに青山敏弘と三竿健斗、CBに槙野智章と冨安健洋とベテランとコンビを組ませながら若手に代表戦の舞台を経験させた。

FIFAランク5位(10月16日時点)というウルグアイ戦では、現時点のベストに近いメンバーで臨んで、どんな試合をするかを見た。

森保監督が対戦相手ごとにテーマを持って試合に臨み、選手を使い分けられるのは、やっぱり長く日本サッカーを見てきたからだね。代表という場は生き残りのサバイバルではあるけれど、日本代表の場合は新たな選手に経験を積ませることも重要で、それをしながら選手層を厚くし、全体の底上げをしようとしている。実に森保監督らしい手腕だよ。

選手の側にしても、これまでは代表に招集されても、「どうせ使われないでしょ」という気持ちがどこかにあったと思う。だけど、森保監督のように招集した選手をほとんど起用すれば、選手は意気に感じるし、出番が来ると思えれば合宿の初日から最終日まで気を抜けないよね。

パナマ戦では右サイドMFで伊東純也が先発したけれど、ボクの目には物足りなさがあった。悪くはなかったけど、柏レイソルでのプレーぶりで彼がもっとガンガン攻め込める姿を知っているから、そう感じたんだ。だけど、レイソルでの伊東を代表でまだ出せないのは、代表での経験が不足しているから。でも、森保監督もそれをわかっていて、伊東に経験を積ませているし、伊東も着実にステップアップしている。ここから先がさらに楽しみだよ。

こういう起用法は伊東だけではなく、三竿にしても、富安にしてもそう。代表戦のなかで比較的プレッシャーの小さい試合で使って、各選手の立ち位置や課題を理解させているね。

それにしてもウルグアイ戦の日本代表はすごかった。FWスアレスとDFヒメネスがいなかったとはいえ、ウルグアイがタジタジだったからね。3失点したけれど、セットプレー以外からは得点を取られそうな雰囲気はなかったし、なにより攻撃陣がすばらしかった。

それはやっぱり森保監督が南野拓実や堂安律、中島翔哉を使い切ることができているからだよ。日本選手のことをロクすっぽ知らない外国人監督を招聘していたら、彼らをスタメンで起用していたかどうかは怪しいからね。所属クラブのネームバリューだけで選手をピックアップしていた可能性は高いんじゃないかな。

中盤の南野、中島、堂安と、最前線の大迫勇也は普段から海外でプレーしているから、外国人DFの強みも弱みもわかっているのが大きい。彼らが一緒にプレーするようになってす2、3試合なのに、これだけの得点力があるのだから、ここから先でコンビネーションがもっと高まっていったら、得点力はますます向上するだろうね。

だけど、彼らが故障する可能性もあるし、調子を落とすことだってある。まだまだ代表には呼ばれていないけれど、虎視眈々と千載一遇の好機が訪れるのを待っている選手はJリーグにも海外にもいる。彼らが日本代表に招集されたときに、しっかりとアピールしてくれることで日本代表のレベルは高まっていく。森保監督はそのことを十分にわかっているだけに、11月にあるベネズエラとキルギスとの親善試合でどんな選手を招集し、どんなメンバーで試合に臨むのか、いまから楽しみでならないよ。

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