日本代表のセンターバックについて語る宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第71回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、日本代表の若手センターバックについて。冨安健洋や三浦弦太など若くて体格にも恵まれたCBが揃い始めた日本代表。宮澤ミシェルは吉田麻也を巻き込んでのポジション争いに発展することを期待しているという

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10月の親善試合ではパナマ戦で槙野智章と19歳の冨安が初スタメン。ウルグアイ戦では三浦が吉田との初コンビで起用された。若くて体格も恵まれたタレントが、ようやく日本代表のセンターバックにも揃ってきたという印象を受けたし、代表センターバックのOBとしてはよろこばしい限りだ。

身長188cmの富安は、日本には少ない180cm台後半の長身が最大の魅力だけれど、秘めているポテンシャルもすごい。W杯ロシア大会のベルギー戦で空中戦からゴールを決められたヤン・フェンルトンゲンは189cm、マルアン・フェライニは194cm。世界を見渡せば180cm台では大きいとは言えないが、それでも富安のサイズは日本代表が弱点にする空中戦での活路になりうるもの。

それだけに彼が順調に成長していくことを期待しているが、現状は海外移籍で生じるギャップのなかにいる。日本では守備のスタンダードは相手の攻撃を遅らせて味方のバックアップを待って、数的優位で止めるものだが、ヨーロッパではひとりで止め切ることが求められる。

富安はベルギーリーグでは個人で守る強さを学んでいる過程にあるため、日本代表でも個の力で止めようとしていた。だけど、ここに海外移籍の難しさが潜んでいるんだ。

日本代表でも個の力で止めるれることに超したことはないが、日本代表というチーム全体の守備のやり方はそうではない。だから、CBの富安が抜かれたりすると、相手に広大なスペースを与えて失点のリスクが一気に高まってしまう。

海外では個の強さで勝負し、日本代表では組織で守る。言うのは簡単だけど、吉田でさえも海外移籍してしばらくは切り替えができずに苦戦していた。とはいえ、富安の日本代表のキャリアは始まったばかり。まずはベルギーリーグで個の強さに磨きをかけていき、それから日本代表での守り方に順応していき安定感を手にしてもらいたいね。

三浦は身長183cmと上背はそれほどでもないが、トータルバランスがいいし、安定感がある。ウルグアイ戦では失点につながるミスをしたけれど、あのプレー以外は守備でも攻撃でも、状況のなかで最適なプレーをしていたし、日本代表らしいコンビネーションでの守り方ができていたね。縦パスやビルドアップへの顔出しも、まだまだ課題もあるけれど、精力的に取り組んでいたよ。

富安と三浦が存在感を示したことは、日本代表のCB陣が高いレベルでの競争をしなければならなくなったね。現在はCBの軸に吉田麻也がいて、ベテランの槙野、三浦、富安が選ばれている。

だけど、このほかに、W杯ロシアでレギュラーを張った昌子源がいて、植田直通(サークル・ブルッヘ)や奈良竜樹(川崎F)、岩波拓也(浦和)などのリオ五輪世代もいて、東京五輪世代には189cmの立田悠悟(清水)や186cmの板倉滉(仙台)がいる。スペイン・リーガから戻ってきた鈴木大輔(柏)もいて、うかうかしていられないほど選手が揃っている。

そのなかで植田には期待しているし、彼が高校の頃から「将来は日本代表を背負う」と見守ってきただけに、いまだに1度も日本代表では結果を残していないのが歯がゆくもある。リオ五輪まではすばらしいプレーを見せていたけれど、その後はポカが目立ってしまっているね。原因は「何でもかんでもできる」と思っていることにあるのかもしれない。

ジェラール・ピケもマンチェスター・ユナイテッド時代まではポカの多い選手で、たいして活躍もできなかった。だけど、バルサに戻ってペップ(グアルディオラ)のもとで安定感が増し、バルサでもスペイン代表でも欠かせない選手へと上り詰めて行った。飛躍の理由は『自分の弱点を把握したから』。たとえば、スピードに難がある彼は、速い選手とそうでない選手の場合での応対の仕方を変えたりした。

植田もフィジカル能力が高いがために、なんでもできちゃう。だけど、相手のレベルが上がれば、すべてを完璧にはこなせるわけがない。自分が絶対的に強さを発揮できることと、そうではないプレーをしっかり把握し、相手に応じて対応を変えていく。そうすることで植田に足りていない安定感は増していくはずだよ。

ポテンシャルの高い若手CBが出てきていはいるけれど、まだまだ吉田のレベルには誰も達していない。各選手がそれぞれの課題を克服しながら成長していき、吉田を巻き込んで日本代表CBのポジションを争う日が、いちはやく来てくれることを待っているよ。

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