広島との日本シリーズを制し、2年連続の日本一に輝いたソフトバンク。だが、歓喜の翌日に衝撃の発表が待っていた。
日米通算860試合登板のリリーバー五十嵐亮太、沢村賞投手の攝津(せっつ)正をはじめ、寺原隼人、吉村裕基(ゆうき)ら功労者のベテランを含む8選手に戦力外を通告したのだ。そのうち五十嵐と寺原、城所龍磨(きどころ・りゅうま)は日本シリーズの登録メンバーで、ビールかけにも参加していた。
スポーツ紙デスクがその背景を解説する。
「一部では『10億円以上のコストカット』という報道もありましたが、今や日本一の金持ち球団であるソフトバンクにコストカットの必要はありません。ただ、外国人7選手が全員残留で、ドラフトでも新人7選手を支配下選手として指名した以上、どうしても登録枠を空ける必要があった。『苦渋の決断』と言う球団幹部のコメントは本音でしょう」
ところで、実は同じ11月4日、もうひとつ注目すべき発表があった。達川光男ヘッドコーチ、水上善雄内野守備走塁コーチの退団だ。
特に、達川ヘッドは工藤公康監督の現役時代、ダイエー(現ソフトバンク)でバッテリーコーチを務めた間柄で、わずか2年前に工藤監督が自ら招聘(しょうへい)した人物。それが日本一の直後に退団とは、いったい何があったのか?
地元テレビ局関係者が言う。
「達川氏は『任期満了に伴う円満解決じゃ』とコメントしましたが、その言葉を信じる者は誰もいません。昨季から工藤監督とはほとんど会話もなく、達川氏は1年で辞める気だった。それを球団からなだめられ、今季まで続けただけだったんです。
例えばシーズン中に1、2軍の選手を入れ替える際、本来は監督とヘッドを含めた担当コーチが相談して決めます。ところが、工藤体制では監督がすべてを決める。
その内容は1軍の担当コーチ、そして監督の側近であるはずのヘッドコーチにすら知らされず、2軍の担当コーチに直接、指令が出されたケースも多いんです。達川氏の仕事といえば、試合前に記者としゃべることくらいでした(苦笑)」
しかし、工藤監督は達川氏を信頼していたからこそ呼んだんじゃないのか?
「工藤監督は『自分が一番、野球をわかっている』という自負が非常に強い。確かに現役時代の実績や研究熱心さ、そして監督として出した結果は誰もが認めるところです。
ただ、年上のコーチに対しても上から目線で接する上、ひとたび『使えない、わかっていない』と判断したコーチは相手にしないため、どうしてもギスギスしてくる。その結果、ごく一部の信頼するコーチとしかコミュニケーションをとらなくなり、達川氏も宙に浮いた形になってしまったんです」(テレビ局関係者)
プロの世界は勝てば官軍。だが、それにしても、工藤監督の就任から4年間で合計19人のコーチが退団、あるいはフロントに異動しているというのは、日本一3回という成績を考えると尋常ではない。
「実際には工藤監督が強権でクビにしているわけでも、球団が忖度(そんたく)して辞めさせているわけでもない。居づらくなって自分から『辞めさせてくれ』というパターンがほとんどです」(テレビ局関係者)
工藤監督は来季が契約最終年。周囲では「耐用年数は過ぎた。秋山幸二前監督に戻ってきてほしい」との声が大きくなりつつあるというが......。